
年末年始が近づくと、ご家族の頭に「薬は、休みの間もつだろうか」という心配が浮かぶことがあります。病院も薬局も休みに入る前に、薬の残りの日数と、次の受診日を確かめておきたい。そう思っても、何から見ればよいのか、誰に聞けばよいのか、迷う場面があります。「年末年始の前に、薬の準備をどうしたらよいか分からない」というご相談を受けることがあります。
この記事は、精神疾患のあるご本人と同居するご家族に向けて、休診に入る前に動く段取りを整理します。国・東京都・府中市の公的な情報と、当ステーションの考えを分けて書きます。薬を飲むかどうか、いつ何を飲むかは、主治医が決め、薬剤師が相談に乗ることです。この記事は、その話し合いの前に、ご家族が確かめておけることを扱います。
ご本人が読める状態なら、一緒に読んでもらってもかまいません。ご本人のことも、ご家族のことも、責める内容ではありません。ご本人が「死にたい」と話すなど、命や安全が心配なときは、先に「死にたい」と言われたときの受け止め方と相談窓口【Vol.80】をご覧ください。
結論を先に|年末年始の前に、3つだけ済ませておきましょう
先に結論を3つお伝えします。
- 薬の残りの日数を、休診に入る前に数えます。府中市のページは、「休日・夜間や年末年始は、ほとんどの医療機関が休診になります。」と書いています。休診の間は、いつもの薬を新しく出してもらう機会が少なくなります。
- 次の受診日が、休診明けより前か後かを見ます。残りの日数が休診明けまでに足りるかどうかは、この2つを並べると分かります。
- 足りないかもしれないと思ったら、休診に入る前に、医療機関か薬局へ電話で相談します。日数や出し方を決めるのは医師で、薬剤師も相談に乗ります。ご家族が一人で決めなくてかまいません。
府中市の休日診療で出る薬は「1日分程度」とされています(次の節で説明します)。
年末年始は、ほとんどの医療機関が休診になります|府中市の休日診療で出る薬は1日分程度
府中市の「休日・夜間診療」のページは、冒頭で次のように書いています。
「休日・夜間や年末年始は、ほとんどの医療機関が休診になります。」
同じページの内容を、表にまとめます。
| 項目 | 府中市のページに書かれていること |
|---|---|
| 応急診療の主体 | 保健センターが、府中市医師会、府中市歯科医師会の協力を得て、応急診療を行っています。 |
| 休日診療の診療科目 | 内科、小児科、歯科です。外科は市内の救急病院へ、と書かれています。精神科は診療科目にありません。 |
| 府中市の休日診療で出る薬 | 「1日分程度の最小限の薬しかお渡ししておりません」と書かれています。 |
| 休日診療のあと | 「翌日等にあらためて一般の医院・診療所(かかりつけ医)で受診していただくよう、お願いします。」と書かれています。 |
つまり、休日診療は、急な体調の変化に応える窓口です。いつも飲んでいる薬の代わりを、休みの間ずっと出してもらう場所ではありません。ここが、「前に動く」理由になります。府中市の休日診療では、精神科は診療科目に含まれていません。まず通っている医療機関に相談します。
年末年始が、何日から何日までかは、確かめた範囲では、公的なページには書かれていません。医療機関や薬局の休みの期間は、それぞれに違うため、通っている医療機関と薬局に、直接確かめます。
薬の残りを、休診日から逆算して確かめる|場面と、やること
ここからは、当ステーションの考えです。国や府中市の資料には、薬の残りを数える方法を書いた文が、当ステーションが確かめた範囲ではありませんでした。出典のない部分は「当ステーションの考え」と書き、言い切らない形にします。
考え方は、休診に入る日から逆算することです。次の3つの場面に分けると、順に確かめられます。
| 場面 | 見るところ | やること |
|---|---|---|
| 残りの日数を知りたいとき | 今ある薬が、何日分あるか。朝・夕など、1日に飲む回数に合わせて数えます。 | 今の指示どおりに飲む前提で、袋や容器の数を数え、日数をメモに書きます。数えるのは日数を知るためで、飲み方や回数を決めるためではありません。飲み方や回数は、主治医・薬剤師の指示のとおりです。 |
| 休診の日と、受診日を並べたいとき | 通っている医療機関と薬局の休みの期間。次の受診日が、休診明けより前か後か。 | 医療機関と薬局の休みの期間を、電話か窓口で確かめます。受診日は、カレンダーやお薬手帳に書きます。 |
| 休診明けまでもたないかもしれないとき | 残りの日数が、休診明けの日まで足りるか。 | 休診に入る前に、医療機関へ電話で相談します。残りの日数と次の受診日を伝え、どうしたらよいかを聞きます。 |
この表の3つめは、日数を延ばしてほしいと頼むのではなく、今の状況を伝えて相談する形です。国の資料は、投薬期間について「医師が、患者の病状等を踏まえ、個別に医学的に適切と判断した期間」としています(これはリフィル処方箋の説明の中の文です)。日数や出し方を決めるのは医師です。ご家族は、「残りがこれだけで、次の受診がこの日です。年末年始をはさむので、どうしたらよいですか」と相談します。
次の受診の予定が決まっていないときや、通院そのものが途切れがちなときの考え方は、精神科の通院が続かないとき、家族はどうする?【Vol.90】で扱っています。この記事では、休診の前に動く段取りだけに絞ります。
処方日数とリフィル処方箋|長く出してもらえるかは、医師が個別に判断します
「年末年始の分を、長めに出してもらえないか」と考える方もいます。ここでは、国の資料に書かれていることだけを整理します。
まず、リフィル処方箋です。令和4年度の診療報酬改定の資料(医療機関・薬局向けの文書。制度の導入時のもの)は、仕組みの基本的な考え方を次のように書いています。
「症状が安定している患者について、医師の処方により、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方箋の仕組みを設ける。」
次に、対象外になる薬です。厚生労働省の「保険調剤の理解のために(令和8年度)」(薬局向けの文書)は、「保険医療機関及び保険医療養担当規則において、投与量に限度が定められている医薬品及び貼付剤」について、「リフィル処方箋による調剤を行うことはできない」と書いています。「貼付剤」には、一部のものを除く、という但し書きがあります。
ここまでの資料から言えるのは、次の3点です。
- 薬の種類によって、一度に出せる量に限度があるものがあります(国の決まりです)。
- リフィル処方箋の説明の中で、国の資料は、投薬期間を医師が個別に判断するものとしています。ご家族が決めるものではありません。
- 投与量に限度のある薬は、リフィル処方箋の対象になりません。
どの薬が限度の対象かは、今回確かめた国の資料からは言えません。そのため、この記事では薬の名前も、日数の数字も挙げません。ご本人の薬について知りたいときは、主治医と薬剤師に確かめてください。「年末年始をはさむので、薬の出し方を相談したい」という形で伝える方が、話が進みやすいと当ステーションは考えます。
薬局とお薬手帳に相談する|休診の前にできること
薬の残りや受診日の相談は、医療機関だけでなく、薬局にもできます。これは当ステーションの考えです。薬局が休みに入る前であれば、「年末年始の休みをはさむので、残りの日数が気になります」と伝えて、薬局が何を勧めるかを聞くことができます。薬局に頼めば処方日数が延びる、という意味ではありません。
お薬手帳は、薬の記録を持ち歩くための道具です。厚生労働省のページは、電子版について「紙で記録していたお薬手帳をスマートフォンアプリで管理できるようにしたものです。」と説明し、「自身で健康管理を行いつつ、医師・薬剤師に共有するツールとしても活用できます。」と書いています(電子版の説明です)。当ステーションの考えでは、紙の手帳でも電子版でも、薬の相談のときに見せられるようにしておくと、話が早くなります。
かかりつけ薬局の考え方について、国は、「『患者のための薬局ビジョン』~『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ~」を、平成27年10月23日に公表しています。
災害のときの薬の備えは、精神疾患のあるご家族と、災害への備え【Vol.89】で扱っています。
自立支援医療(精神通院)を使っているとき|受給者証に書かれたことを確かめる
東京都のページによると、この制度の対象者は、「通院による治療を継続的に必要とする程度の状態の精神障害(てんかんを含む。)を有する方」です。自己負担については、「医療費の原則1割の負担があります。」と書かれています。
受給者証をお持ちのときに、年末年始に別の薬局を使ってよいかどうかは、東京都のページには説明がありません。そのため、決まりとしては言い切りません。
当ステーションの考えとしては、受給者証に書かれた内容を確かめ、年末年始に別の薬局を使う前に、いつもの薬局か、お住まいの市の窓口に聞いておくことを勧めます。
申請や更新の流れは、多摩市で自立支援医療(精神通院医療)を申請するには【Vol.87】にあります(多摩市の例です)。
休みの間に困ったとき|医療機関の探し方と連絡先
それでも、休みの間に困ることはあります。公的な窓口を、その窓口の時間とあわせて整理します。番号と時間は、それぞれの公式ページの文字のままです。2026年11月7日に確かめました。
| 窓口 | その窓口の時間と内容 |
|---|---|
| 東京都の電話の医療機関案内「ひまわり」(電話:03-5272-0303) | 東京都のページは「年中無休・24時間対応」と書いています。都内の医療機関を案内する電話です。 |
| 医療情報ネット「ナビイ」(WEBの検索サイトです) | 「急いで探す」で、現在診療中の医療機関を検索できます。全国の医療機関・薬局を検索できます。 |
| 府中市 保健センター 休日診療(電話:042-368-5311) | 診療科目は内科、小児科、歯科。受付時間:日曜日、祝日、年末年始、午前9時から11時半、午後1時から4時。 |
| 府中市 保健センター 夜間診療(電話:042-368-5311) | 診療科目は内科、小児科。受付時間:毎日の午後7時半から10時。年末年始にも行うかどうかは、確かめた範囲では、ページに書かれていません。 |
かつて「ひまわり」という名前だった東京都の検索サイトは、令和6年4月に「ナビイ」に移行しています。電話の案内は引き続き利用できると、東京都のページに書かれています。
ナビイについて、東京都のページは、「診療日や診療科目といった一般的な情報に加え、対応可能な疾患・治療内容、提供しているサービスなどさまざまな情報から、全国の医療機関・薬局を検索することのできるシステムです。」と説明しています。「急いで探す」は、「現在診療中(外来受付時間内)の医療機関を検索することができます。」と書かれています。診療中の機関を探す機能です。休診中かどうかは、医療機関に電話で確かめます。
府中市の休日診療には、精神科が診療科目に含まれていません。救急病院を受診する前には、府中市のページが、電話で診療が可能かどうかを確認するよう案内しています。
当ステーションの休みの日や連絡先は、お盆や年末年始の休みと、急に困ったときの連絡先【Vol.66】に書いています。この記事では繰り返しません。
急に体調が悪くなったり、命や安全が心配なときは、「死にたい」と言われたときの受け止め方と相談窓口【Vol.80】をご覧ください。
ご本人を責めずに、一緒に確かめる|家族の役割と、相談先のひとつ
薬の残りを数えるとき、ご本人を責める形にしないことが、大切だと当ステーションは考えます。「ちゃんと飲んでいるの?」ではなく、「年末年始の前に、残りが何日分か、一緒に見てみようか」と声をかける、という形です。残りを数える作業は、ご本人を疑うためではなく、相談の材料を作るためのものです。
ご本人が「もう飲みたくない」と話しても、飲み方を変えるか、やめるかを決めるのは主治医です(薬剤師にも相談できます)。つらい症状や副作用が気になるときは、早めに主治医か薬剤師に伝えます。ご本人の気持ちを聞いたうえで、主治医・薬剤師に相談します。飲まないときの声かけは、薬を飲まないとき、家族はどうする?【Vol.78】で扱っています。
ご家族だけで抱えず、相談先をひとつ増やしておく選び方もあります。当ステーションの精神科訪問看護は、ご本人が受診につながっていない時期でも、ご家族だけの相談を受けられます。初回の相談は無料です。交通費は無料です(交通費の自己負担はありません)。「年末年始の前に、薬のことで相談先を知っておきたい」というご相談を受けることがあります。ご相談はこちら、訪問できる地域はこちらでご確認ください。
よくあるご質問
休診の直前に、薬が足りなくなりそうだと気づいたらどうしたらよいですか?
まず、通っている医療機関と薬局に、電話で相談します。残りの日数と次の受診日を伝えてください。府中市の休日診療で出る薬は「1日分程度の最小限」とされ、いつもの薬の代わりにはなりません。飲み方を変えるか、やめるかは、主治医が決めることです(薬剤師にも相談できます)。
年末年始の前に、処方日数を長くしてもらうことはできますか?
リフィル処方箋の説明の中で、国の資料は、投薬期間を、医師が患者さんの病状等を踏まえて個別に判断するものとしています。ご家族が決めるものではありません。休診の前に「年末年始をはさむので、薬の出し方を相談したい」と医療機関に電話で相談する形が考えられます。薬の種類によって限度もあるため、主治医・薬剤師に確かめてください。
リフィル処方箋にしてもらえますか?
リフィル処方箋は、症状が安定している患者さん向けに、一定期間内に処方箋を繰り返し使える仕組みです。投与量に限度が定められている医薬品と、一部を除く貼付剤は、リフィル処方箋にできないと、国の資料(令和8年度)に書かれています。ご本人の薬が対象になるかは、主治医・薬剤師に確かめてください。
自立支援医療の受給者証があるとき、年末年始の薬局はどこでもよいですか?
当ステーションの考えでは、年末年始に別の薬局を使う前に、受給者証に書かれた内容を確かめ、いつもの薬局かお住まいの市の窓口に聞くことを勧めます。薬局の扱いは東京都のページに説明がないため、ここでは言い切りません。
ご本人が「もう飲みたくない」と言うときは?
飲み方を変えるか、やめるかは、主治医が決めることです(薬剤師にも相談できます)。ご本人の気持ちを聞いたうえで、主治医・薬剤師に相談します。責めずに理由を聞くことが、相談の第一歩です。声かけの工夫はVol.78にあります。
出典(2026年11月7日に閲覧)
- 厚生労働省「令和4年度診療報酬改定について」>1.個別改定項目について(PDF):https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000905284.pdf
- 厚生労働省「保険調剤の理解のために(令和8年度)」(PDF):https://www.mhlw.go.jp/content/001713154.pdf
- 厚生労働省「電子版お薬手帳」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/e-okusuritecho.html
- 厚生労働省「薬局・薬剤師に関する情報」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakkyoku_yakuzai/index.html
- 東京都福祉局「自立支援医療(精神通院医療)について」(更新日 2026年8月6日):https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/nichijo/tsuuin/seishintsuuin
- 東京都保健医療局「インターネットでの医療機関の検索サイトが変わります」(更新日 2024年3月25日):https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/iryo_kinou/iryojyohonet
- 府中市「休日・夜間診療」(最終更新日 2026年3月17日):https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kenko/kenko/centerhokenjo/yakan.html
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