
薬の袋が、そのまま残っている。数えてみると、明らかに減っていない。聞いても「飲んでるよ」と言う。精神疾患のあるご家族と暮らしていると、こういう場面に出会うことがあります。問い詰めれば機嫌が悪くなり、黙っていれば不安が募る。どちらを選んでも落ち着かない時間が続きます。
このページでは、ご家族が薬を飲んでいないと気づいたときに、何を考え、どこに相談すればよいのかを整理しました。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と国立精神・神経医療研究センターの公開資料、厚生労働省の指針、そして薬局や相談窓口についての法令・告示の原文を手がかりにしています。個別のお薬の名前や量の話は扱いません。それは主治医と薬剤師の領域だからです。ここで扱うのは、その手前にある「ご家族がどう関わるか」の部分です。
先に、結論だけお伝えします。責めずに、見えた事実だけを伝えてみてください。飲めない理由は「体調」や「生活」の側から尋ねると答えが返ってきやすくなります。薬のことはご家庭だけで抱えず、いつもの薬局にも相談できます。次の受診には「いつから・どのくらい・本人の言い分・家での様子」をメモにして渡すと、短い診察時間でも伝わります。それぞれの進め方は、このあとの章で順に説明します。
「また飲んでいない」と気づいたとき、まず知っておいていただきたいこと
薬が減っていないと分かったとき、多くのご家族が最初に感じるのは、心配よりも先に落胆や怒りだと思います。せっかく通院しているのに。あれだけ言ったのに。その気持ちは自然なものです。ご家族が我慢して飲み込むべき感情ではありません。
ただ、そのうえで知っておいていただきたいことがあります。服薬が続かなくなることは、本人の意志の強さだけで決まるものではない、ということです。これは気休めではなく、公的な文書に要因が並べられている事柄です。次の章で具体的に見ていきます。
もうひとつ。飲めていないことに気づけたのは、ご家族が日々そばで見ているからです。診察室の中では見えないことが、家の中では見えます。その情報は、治療にとって価値のあるものです。責める材料としてではなく、主治医に届ける材料として使えます。
薬が続かなくなる背景には、いくつもの要因があります
厚生労働省が2018年5月に公表した「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」には、服薬が続かなくなる要因を並べた表があります。この指針は高齢者を対象にまとめられたものなので、そのまま精神疾患のある方に当てはめて読むことはできません。ただ、要因として何が挙げられているかを知る手がかりにはなります。表2「服薬アドヒアランス低下の要因」(アドヒアランスとは、指示どおりに薬を続けて飲むことを指します)には、次の項目が並んでいます。読みやすさのため、一部の項目には当ステーションで言い換えを添えました。
- 服用管理能力低下(認知機能の低下、難聴、視力低下、手指の機能障害、日常生活動作の低下)
- 多剤服用(飲んでいる薬の種類が多いこと)
- 処方の複雑さ
- 嚥下機能障害(飲み込みにくさ)
- うつ状態
- 主観的健康感が悪いこと(薬効を自覚できない等、患者自らが健康と感じない状況)
- 医療リテラシーが低いこと(病気や薬についての情報を理解し、使いこなす力が十分でないこと)
- 自己判断による服薬の中止(服薬後の体調の変化、有害事象の発現等)
- 独居
- 生活環境の悪化
注目していただきたいのは、この一覧に「うつ状態」「独居」「生活環境の悪化」が並んでいることです。気分が落ちていること、ひとりで暮らしていること、暮らしそのものが乱れていること。これらが服薬の継続を難しくする要因として、国の指針に書かれています。「本人がだらしないから」では説明のつかない部分がある、ということです。
もうひとつ見落とせないのが、同じ一覧の「自己判断による服薬の中止」という項目に、服薬後の体調の変化や有害事象の発現といった例が添えられている点です。飲んだあとに体調の変化が起きたことが、やめる引き金になりうるという順序が示されています。飲まないから調子が悪いのではなく、飲んだら何かがつらかったのでやめた、という順番のこともあるわけです。
ですから、「なぜ飲まないのか」を責める問いではなく、「飲むと、何か困ることが起きているのか」を尋ねる問いに変えるだけで、返ってくる答えが変わることがあります。眠気が強い、口が渇く、太った気がする、飲む時間に家にいない、粒が多くて面倒。理由が分かれば、主治医や薬剤師に相談できる形になります。
なお、精神疾患そのものに特有の要因(病気であるという実感が持ちにくい時期があること等)については、公的な資料の中に一覧の形で示されたものを見つけられませんでした。そのため、ここでは断定的な説明を控えます。疾患ごとの一般的な経過については、うつ病の人を、家でどう支える?や統合失調症の人を、家でどう支える?で扱っています。
「ちゃんと飲んで」と言うほど、うまくいかなくなることがあります
飲んでいないと分かったあと、ご家庭でよく起きるのが次のような流れです。声をかける。生返事が返る。心配なのでもう一度言う。うるさがられる。言い方を強める。本人が薬の話題を避けるようになる。飲んでいるかどうかが、いよいよ分からなくなる。
この流れの困ったところは、関わりが強くなるほど、情報が減っていく点にあります。本人にとって薬の話が「叱られる話題」になると、正直に言えなくなります。そうなると、飲めていないことも、飲んだときにつらかったことも、家の中で共有されなくなります。治療にとっていちばん必要な情報が、家庭内で流通しなくなるわけです。
ですから、うまくいかない時期に必要なのは、声をかける回数を増やすことではありません。薬の話を、責められない話題に戻すことです。そのために、次の章の言い方が役に立ちます。
気づいたとき、ご家族ができる声のかけ方
正解の台本があるわけではありませんが、方向としては次の3つが挙げられます。
1. 事実だけを、静かに置く
「飲んでないでしょう」ではなく、「今週の分、残っているみたいだけど」と、見えたことだけを言葉にします。評価をつけずに事実を置くと、返事の余地が生まれます。ここで返ってきた一言が、そのまま主治医への報告材料になります。
2. 飲めない理由を、責めずに尋ねる
「なんで飲まないの」は理由を聞いている形をしていますが、受け取る側には非難として届きます。「飲むと、何かしんどいことある?」「時間が合わない感じ?」と、体調や生活の側から尋ねると答えやすくなります。
3. 決めるのは主治医、という位置に立つ
ご家族が「飲みなさい」と迫る立場に立つと、対立の構図になります。そうではなく、「私が決めることじゃないから、次の診察で一緒に話そう」と、判断を医療に返す位置に立つほうが、関係を保ちやすくなります。減らすか続けるかを決めるのは主治医であって、ご家族でも本人単独でもありません。
それでも会話にならない時期はあります。そのときは、無理に会話で解決しようとせず、次章以降の「家族が使える窓口」に先に相談してしまってかまいません。ご家族だけで抱えたまま関係が悪くなるより、そのほうが結果的に早く進むことがあります。
自分の判断でやめると、何が起きるのか
ここは、ご家族がいちばん不安に感じるところだと思います。公的な資料が、どこまでのことを言っているかを確認しておきます。
PMDAが定めている「患者向医薬品ガイド記載の手引」(Ver.2.02)には、すべての患者向医薬品ガイドに共通して書く文として、次の一文が定められています。
この薬は、体調がよくなったと自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。指示どおりに使用し続けることが重要です。
これは特定のお薬についての注意ではなく、公的機関が、患者向けの説明文書全般に書かせている定型の一文です。つまり「この薬に限った話ではない」ということです。
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」も、統合失調症の解説の中で次のように書いています。
なかにはまったく症状が出なくなる人もいますが、症状がなくなったからといって自分だけの判断で薬をやめてしまうと、しばらくして再発してしまうことも多いので注意が必要です。
うつ病の解説では、次のように書かれています。
主治医の指示に従い、自分の判断で薬の量を増やしたり減らしたり中断したりせず、焦らずに服薬を継続してください。
ここで大切なのは、いずれの文も「絶対にやめてはいけない」とは言っていないことです。言っているのは「自分だけの判断でやめない」「主治医と相談する」です。同じ「こころの情報サイト」は、続けてこう書いています。
「副作用がつらい」「薬をやめたい、減らしたい」などの悩みがあれば、医師に相談しましょう。
やめたい気持ちは、相談してよいものとして扱われています。ご家族が本人に伝えられるのは、「やめるな」ではなく「やめたいなら、先生に言っていい」という道の示し方です。このほうが、こっそりやめて誰にも言えない状態より、はるかに安全です。
なお、中断したときの再発率について、日本の学会がまとめた診療ガイドラインには数値が示されています。ただし、その数値の元になっているのは主として海外の研究であり、また、数値を並べることがご家族やご本人を追い詰める形にもなりかねないため、このページでは具体的な割合の引用は控えます。数値の裏付けが必要な場合は、主治医にお尋ねください。
服薬が途切れたあと、調子の崩れがどう進むか、入院に至る前にどんなサインが出るかについては、精神科の入退院を繰り返すときで、再発サインの書き出し方とクライシスプランの作り方を扱っています。
ご家族から動かせることがあります|薬局に相談するという道
ここが、このページでいちばんお伝えしたい部分です。薬のことでご家族が動かせる窓口は、主治医だけではありません。
診療報酬の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)に「外来服薬支援料」という項目があり、その注1は次のように定めています。
1については、自己による服薬管理が困難な患者若しくはその家族等又は保険医療機関の求めに応じて、当該患者が服薬中の薬剤について、当該薬剤を処方した保険医に当該薬剤の治療上の必要性及び服薬管理に係る支援の必要性の了解を得た上で、患者の服薬管理を支援した場合に月1回に限り算定する。
「その家族等の求めに応じて」という文言が、条文そのものに入っています。つまり、ご家族が薬局に相談することを出発点にできる仕組みが、制度として用意されているということです。
何をしてもらえるのかは、厚生労働省の通知に具体的に書かれています。
外来服薬支援料1は、保険薬局の保険薬剤師が、自己による服薬管理が困難な外来の患者若しくはその家族等又は保険医療機関の求めに応じ、当該患者又はその家族等が持参した服薬中の薬剤について、治療上の必要性及び服薬管理に係る支援の必要性を判断し、当該薬剤を処方した保険医にその必要性につき了解を得た上で、一包化や服薬カレンダー等の活用により薬剤を整理し、日々の服薬管理が容易になるよう支援した場合に、「注1」及び「注2」を合わせて服薬支援1回につき、月1回に限り算定する。
要点を整理すると、次のようになります。
- ご家族が、家にたまっている薬を薬局に持って行って相談できる
- 一包化(1回に飲む分をまとめる)や服薬カレンダーで整理してもらえる
- 他の薬局で出た薬や、病院で直接出た薬も含めて整理するよう努めることが、通知に書かれている
- ただし、実施には処方した医師の了解を得ることが前提になっている
薬剤師が家に来て残っている薬を整理する仕組みも、同じ告示の中にあります。かかりつけ薬剤師の関わりがある場合に、患者本人またはご家族の求めに応じて訪問できるという内容ですが、こちらは6か月に1回という上限があります。「いつでも来てもらえる」わけではない点は、正確にお伝えしておきます。
一方で、薬剤師が定期的に訪問する仕組み(在宅患者訪問薬剤管理指導、介護保険の居宅療養管理指導)は、いずれも医師の指示が出発点です。医療保険の告示では医師の指示に基づくこと、介護保険の告示では医師または歯科医師の指示に基づくことが、それぞれ要件として条文に定められており、ご家族の依頼だけでは始まりません。この2つは混同しやすいので、次のように覚えていただくのが実際的です。
- 手元の薬を薬局で整理してもらう:ご家族から相談して始められる(薬剤師に単発で家へ来てもらう場合も、上に書いたとおりご家族から相談できます)
- 薬剤師に定期的に家へ来てもらう:まず主治医に相談する
どの薬局に相談すればよいか迷う場合は、いつも処方箋を出している薬局で構いません。すでに服用歴が分かっているぶん、話が早く進むことが多いためです。
主治医に、どう伝えればよいか
診察は短いことが多く、ご家族が同席できないこともあります。限られた時間で伝えるには、あらかじめ書いて渡すのが確実です。書く内容は、次の4点で足ります。
- いつから(例:2週間ほど前から)
- どのくらい飲めていないか(例:朝の分だけ残っている、袋が半分残っている)
- 本人が話していた理由(例:眠気が強いと言っていた、面倒だと言っていた)
- 家での様子の変化(例:夜眠れていない、外に出なくなった)
評価や推測は書かなくて構いません。「怠けている」「悪化している」といった判断は医療側の仕事です。ご家族にしか書けないのは、家で実際に見えたことです。
本人に隠れて伝えることに抵抗がある場合は、「先生に渡すね」と本人に見せてから渡す方法もあります。内容が事実だけであれば、見せても角が立ちにくくなります。
服薬を助ける、一般的な工夫
厚生労働省の前掲の指針(高齢者を対象としたものです)には、処方や調剤の側で行われる工夫として、服用する薬の数を減らすこと、飲む回数を減らすこと、剤形を変えること、一包化、服薬カレンダーの使用などが挙げられています。いずれも医師・薬剤師が判断して行うもので、ご家庭で決められるものではありません。相談する先があることを知っておいていただければ十分です。
ひとつ、注意書きも添えておきます。同じ指針には、次の一文があります。
一包化を行うことが必ずしも服薬アドヒアランスを向上させる方法ではないことに注意する。
一包化すれば解決する、という単純な話ではないということです。飲まない理由が、飲みにくさではなく体調の変化や気持ちの問題である場合、包み方を変えても状況は変わりません。工夫は、理由が分かってから選ぶものだとお考えください。
ご家庭の側でできることとしては、薬を置く場所を生活動線の中に決める、飲む時間を毎日の決まった行動(食事、歯みがき等)にひもづける、といった程度で構いません。うまくいかない日があっても、それ自体は珍しいことではありません。
ご家族が相談できる公的な窓口
ご家族が相談してよいことは、法律に書かれています。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第47条第1項は、次のように定めています。
都道府県、保健所を設置する市又は特別区(以下「都道府県等」という。)は、必要に応じて、次条第一項に規定する精神保健福祉相談員その他の職員又は都道府県知事若しくは保健所を設置する市若しくは特別区の長(以下「都道府県知事等」という。)が指定した医師をして、精神保健及び精神障害者の福祉に関し、精神障害者及びその家族等その他の関係者からの相談に応じさせ、及びこれらの者に対する必要な情報の提供、助言その他の援助を行わせなければならない。
条文には、相談に応じる相手として精神障害者本人だけでなく、その家族等その他の関係者が並べて書かれています。しかも文末は「行わせなければならない」です。ご家族からの相談を受けることは、自治体に課された義務として書かれています。遠慮して相談する種類のものではない、ということです。
また、精神保健福祉センターの業務については、同法第6条第2項第2号に「精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び援助のうち複雑又は困難なものを行うこと。」と定められています。込み入った事情がある場合の相談先として位置づけられているということです。
府中市周辺の窓口は次のとおりです。
- 東京都多摩府中保健所:042-362-2334(精神保健福祉相談。本人・家族・関係者からの相談を受け付けています)
- 府中市 健康推進課:042-368-6511(こころとからだの相談)
- 東京都立多摩総合精神保健福祉センター:042-371-5560(複雑または困難なケースの相談)
なお、保健所や精神保健福祉センターの職員が訪問して相談に応じる仕組みも同法に定められていますが、条文上は「置くことができる」という書き方で、体制は自治体によって異なります。訪問を希望される場合は、お住まいの窓口にご確認ください。
体調が急に悪くなったときの連絡先は、段階で分けて持っておくと迷いません。命に関わると感じたときは119番、判断に迷うときは東京消防庁救急相談センター(#7119、多摩地区からは042-521-2323)、受診先を探したいときは東京都医療機関案内サービス「ひまわり」(03-5272-0303)です。
ご家族自身が消耗してきたと感じるときは、ご家族のしんどさを、軽くすると家族が「もう限界」と思ったときもあわせてご覧ください。服薬の問題は長期戦になることが多く、支える側が先に倒れないことのほうが大切です。
訪問看護は、服薬にどう関わるのか
最後に、私たちのような訪問看護が何をする立場なのかを、制度の言葉で正確にお伝えします。
まず前提として、訪問看護は主治医の指示によって始まります。指定訪問看護の基準を定めた省令(平成12年厚生省令第80号)第16条第2項に、次のように定められています。
指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない。
ですから「明日から来てほしい」というご依頼にその場でお応えすることはできません。まず主治医、あるいは担当のケアマネジャーや相談員にご相談いただく流れになります。精神科訪問看護への紹介、いつ・どうつなぐ?では、この つなぎ方を専門職向けに整理しています。
そのうえで、訪問看護が家で行うことは、同じ省令の第15条第2号に次のように書かれています。
指定訪問看護の提供に当たっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者又はその家族に対し、療養上必要な事項について、理解しやすいように指導又は説明を行う。
「利用者又はその家族に対し」と書かれているとおり、説明する相手にはご家族も含まれています。ご家族が抱えている疑問に答えることは、訪問看護の役割の一部だということです。
また、同省令第16条第4項には、訪問看護計画書と訪問看護報告書を主治医に提出することが定められています。家で見えたことが、書面で主治医に届く経路があるということです。ご家族が診察のたびに全部を伝えきれなくても、別のルートが用意されています。
厚生労働省の前掲の指針(高齢者を対象としたものです)にも、看護師の役割としてこう書かれています。
また、例えば、看護師は、服薬支援の中で、服用状況や服用管理能力、さらに薬物有害事象が疑われるような症状、患者・家族の思いといった情報を収集し、多職種で共有することが期待される。
「患者・家族の思い」が、集めるべき情報として並んでいます。ご本人の状態だけでなく、ご家族が何に困っているかを聞き取って、医師や薬剤師に渡すところまでが役割だという整理です。
逆に、できないこともはっきりさせておきます。訪問看護は、本人の意思に反して薬を飲ませる仕組みではありません。省令が定めているのは「指導又は説明」であって、強制ではありません。訪問看護計画も、省令第17条第1項で「利用者の希望」を踏まえて作ることになっています。ご本人の意向を外して進む設計にはなっていない、ということです。
当ステーションが実際に行っているのは、暮らしの様子を見ながらお話をうかがい、飲めていない時期があればその背景を一緒に探し、主治医に情報をつなぐことです。うつ病のご家族へ|訪問看護でやっている3つのことで、実際の関わり方をご紹介しています。
費用について。精神科訪問看護は医療保険が使え、自立支援医療などの公費が適用される場合もあります。おおよその自己負担額は自己負担額の計算ツールでご確認いただけます。通常の訪問は交通費・駐車場代をいただいておりません。夜間・営業時間外の緊急訪問は実費をお願いする場合があります。
そして、これは正直に書いておきたいことですが、訪問看護に入ったからといって、薬が必ず飲めるようになるとお約束することはできません。また、事業所には得意な分野や体制の違いがあり、担当者との相性もあります。私たちが合わないこともあります。府中市とその周辺には他にも訪問看護ステーションがありますので、複数を見比べたうえでお決めいただくのがよいと思います。ご本人とご家族に合うところが見つかることが、いちばん大事です。
おわりに
薬が飲めていないと気づいた日は、いい日ではありません。ただ、気づけたということは、見ている人がいるということです。その事実は、治療にとって小さくない意味を持ちます。
ご家族がひとりで抱えなくてよいように、相談できる先が制度として用意されています。薬局に持って行って整理してもらうこと、保健所や精神保健福祉センターに相談すること、主治医に事実を届けること。どれも、ご家族から始められます。
府中よりそい訪問看護ステーションでは、初回のご相談は無料でお受けしています。ご本人がまだ受診されていない段階でも、ご家族だけでご相談いただけます。対応エリアは対応エリアのご案内でご確認いただけます。ご相談はお問い合わせフォーム、またはお電話(042-508-3434/平日9時から18時)へどうぞ。
よくあるご質問
薬を飲まないのは、本人のわがままなのでしょうか
わがままと決めつけられるものではありません。厚生労働省が高齢者を対象にまとめた指針では、服薬が続かなくなる要因として、うつ状態、独居、生活環境の悪化、処方の複雑さ、飲んだあとの体調の変化などが挙げられています。飲めない背景に事情があることは、公的な文書でも示されています。まずは理由を尋ねるところから始めてみてください。
飲んでいないことに気づいたら、無理にでも飲ませたほうがよいですか
無理に飲ませることをおすすめすることはできません。飲む・飲まない、量を変えるといった判断は主治医が行うものです。ご家族にできるのは、飲めていない事実と本人が話していた理由を主治医に伝えることです。強く迫ると薬の話題自体が避けられるようになり、かえって状況が見えにくくなることがあります。
薬をやめていたことを、主治医にどう伝えればよいですか
いつから、どのくらい飲めていないか、本人が話していた理由、家での様子の変化。この4点を短くメモにして渡すのが確実です。評価や推測は書かなくて構いません。ご家族にしか分からないのは、家で実際に見えたことです。本人に見せてから渡す方法もあります。
訪問看護に頼めば、薬を飲ませてもらえますか
訪問看護は、本人の意思に反して薬を飲ませる仕組みではありません。指定訪問看護の基準を定めた省令に書かれているのは、利用者やそのご家族に対して療養上必要な事項を分かりやすく指導・説明することです。訪問看護計画も本人の希望を踏まえて作ることになっています。実際にお手伝いできるのは、暮らしの様子をうかがい、飲めない背景を一緒に探し、主治医や薬局に情報をつなぐところまでです。
服薬のことで家族が疲れてしまいました。どこに相談できますか
精神保健福祉法は、ご本人だけでなくご家族からの相談にも応じることを自治体の義務として定めています。府中市周辺では、東京都多摩府中保健所(042-362-2334)、府中市健康推進課(042-368-6511)、東京都立多摩総合精神保健福祉センター(042-371-5560)が窓口です。薬そのものの整理については、いつも処方箋を出している薬局にご家族から相談することもできます。
参考にした資料
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「患者向医薬品ガイド記載の手引 Ver.2.02」(平成27年4月1日)
- 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」
- 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(2018年5月)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第三 調剤報酬点数表
- 令和8年3月5日 保医発0305第6号 別添3「調剤報酬点数表に関する事項」
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)
- 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)



