【Vol.50】統合失調症の人を、家でどう支える?|「見えている世界」を否定しない関わりと、本人・家族にできること|府中よりそい訪問看護


統合失調症の人を、家でどう支える? 疾患シリーズ④

「あやしい人」ではなく、誰にでも起こりうる病気です

統合失調症と聞くと、こわい、何を考えているかわからない、といったイメージを持つ方がいるかもしれません。けれど実際には、統合失調症はおよそ100人に1人がかかるといわれる、決して珍しくない病気です。多くは思春期から30代ごろに発症し、適切な治療と支えがあれば、症状とつき合いながら自分らしい生活を取り戻していく方がたくさんいます。

このシリーズでは、ご家庭で過ごす方を「どう支えればいいのか」を、疾患ごとにお伝えしています。これまでうつ病、双極性障害、不安障害・パニック障害を取り上げてきました。第4回となる今回は、統合失調症です。

ご本人にとっては「見えている世界・聞こえている声」がとてもリアルで、つらいもの。ご家族にとっては「どう声をかけたらいいのか」が一番の悩みどころだと思います。今日は、そのヒントを一緒に整理していきます。

統合失調症とは、どんな病気?

統合失調症は、脳の情報処理のバランスが一時的にうまくいかなくなることで、考えや気持ち、行動にまとまりがつきにくくなる病気だと考えられています。症状は大きく3つのタイプに分けられます。

陽性症状は、本来ないものが「ある」ように感じられる症状です。代表的なものが幻聴(実際には聞こえない声が聞こえる)や妄想(事実とは違うことを強く確信する)です。「悪口を言われている」「見張られている」と感じることもあります。

陰性症状は、本来あるはずの気力や感情が「乏しくなる」症状です。意欲がわかない、感情の表れが少なくなる、人と関わるのがおっくうになって部屋にこもりがちになる、といった形で表れます。これは「なまけ」ではなく、病気による変化です。

認知機能の変化として、集中が続きにくい、物事を段取りよく進めにくい、といったことも起こりやすいといわれます。

経過には波があり、症状が強く出る急性期、その後に心身を休める消耗期(休息期)、少しずつ力を取り戻していく回復期、という流れをたどることが多いとされています。

家で起きやすいこと

ご家庭では、こんな場面に戸惑うことが多いかもしれません。

  • 「監視されている」「悪口が聞こえる」と訴える ── 本人にとっては本当に体験していることなので、頭ごなしに「そんなはずない」と言われると、孤立感を深めてしまいます。
  • 昼夜が逆転する・お風呂や着替えがおっくうになる ── 陰性症状や消耗期の休息のサインであることが多く、「だらけている」わけではありません。
  • 外出や人づきあいが減る ── エネルギーを消耗させないための、本人なりの守り方でもあります。
  • 家族が振り回されてクタクタになる ── 不安からくる確認や訴えに、ご家族が一日中つき合って疲れ果ててしまうことも少なくありません。

どれも、ご本人もご家族も「困っている」状態です。まずは「病気がそうさせている」と知ることが、最初の一歩になります。

ご本人へ ── 服薬と休息が、回復の土台です

つらい症状のなかで、いちばん大切な土台のひとつがお薬と休息です。統合失調症の治療では、脳の興奮を整えるお薬を続けることで、症状を和らげ、再発を防いでいきます。「調子がいいから」と自己判断でやめてしまうと、症状がぶり返しやすくなることが知られています。気になることがあれば、まず主治医に相談してみてください。

そして、回復は段階的に進みます。急性期のあとには、しっかり休むことが必要な時期があります。「早く元どおりにならなきゃ」とあせらず、眠る・休む・少しずつ動く、というペースを大切にして大丈夫です。今日できなかったことは、明日のあなたを責める理由にはなりません。

ご家族へ ── 「全部背負わなくて大丈夫」です

ご家族にいちばんお伝えしたいのは、あなたが一人で抱え込まなくていいということです。

研究では、ご家族が批判的になりすぎたり、心配のあまり過度に関わりすぎたりすると、ご本人の再発につながりやすいことが指摘されています。逆にいえば、おだやかな距離を保つだけで、ご本人の回復を支える力になるということです。これは「家族のせいで病気になった」という話ではまったくありません。むしろ、肩の力を抜いていい、という心強いヒントです。

  • 幻聴や妄想の内容を否定も肯定もせず、「そう感じてつらいんだね」と気持ちのほうに耳を傾ける
  • ムリな励まし(「がんばれ」「しっかりして」)も、強い叱責も、どちらもいりません
  • できないことが増えても、「病気の時期だから」と受け止めて大丈夫です
  • そして何より、ご家族自身が休む時間を持ってください

すべてを受け止めようとしなくて大丈夫です。疲れたときは、専門職を頼ってください。

服薬と通院を続けることが、再発予防のカギ

統合失調症は、お薬を続けることで安定した生活を保ちやすくなる病気です。最大の注意点は、自己判断での中断です。症状が落ち着くと「もう治った」と感じやすいのですが、「良くなった」と「治った(やめてよい)」は別です。やめる・減らすの判断は、必ず主治医と一緒に行ってください。

毎日の服薬が負担な場合には、2週間から1か月に1回の注射でお薬を保てる持続性の注射剤という選択肢もあります。飲み忘れの心配が減る方もいますので、こうした選択肢も含めて主治医に相談してみるとよいでしょう。

訪問看護でできること

精神科の訪問看護は、主治医の指示書にもとづいて、ご自宅にうかがい、生活のなかで回復を支える仕事です。統合失調症の方には、たとえばこんな関わりをしています。

  • 服薬を続けるためのお手伝い ── 飲み心地や副作用の様子を一緒に確認し、主治医に橋渡しします
  • 生活リズムを整える伴走 ── 睡眠や食事、外出のペースを、本人のペースに合わせて一緒に考えます
  • 幻聴や不安とのつき合い方 ── 「声」に振り回されにくくする工夫を、対話のなかで見つけていきます
  • ご家族の相談相手 ── 接し方の悩みや、疲れたときの気持ちを受け止めます

「指示書ってどうすればいいの?」という段階でも大丈夫です。主治医への指示書のご依頼をお手伝いしながら、利用開始まで一緒に進めていきます。

おわりに ── 一人で、ご家族だけで抱えないで

統合失調症は、適切な治療と支えのなかで、症状とつき合いながら自分らしく暮らしていける病気です。ご本人にとっても、ご家族にとっても、「家でどう過ごすか」はとても大きなテーマです。だからこそ、専門職という第三者を、どうか早めに頼ってください。

まだ受診につながっていない場合は、お住まいの地域の保健所・保健センターや、精神保健福祉センターが相談の入り口になります。すでに通院されている場合は、主治医に「訪問看護を使いたい」とお伝えいただくとスムーズです。

府中よりそい訪問看護ステーションでは、精神科に特化した看護師・作業療法士が、ご本人とご家族のペースに合わせて訪問しています。「こんなことで相談していいのかな」ということでも構いません。まずはお気軽にお電話ください。

お問い合わせ:042-508-3434(受付 9:00-18:00/土日祝を除く)

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