【Vol.51】発達障害(おとなのASD・ADHD)の人を、家でどう支える?|「特性」とのつき合い方と、本人・家族にできること|府中よりそい訪問看護


発達障害(おとなのASD・ADHD)の人を、家でどう支える? 疾患シリーズ⑤

はじめに ── それは、怠けでも、親のしつけのせいでもありません

「片付けられない」「約束をうっかり忘れてしまう」「人づきあいで、いつもどこかすれ違う」。そんな困りごとが続くと、ご本人は「自分はだらしないのだ」と自分を責め、ご家族は「育て方が悪かったのだろうか」と悩んでしまいがちです。でも、どうか先にお伝えさせてください。発達障害は、本人の怠けや気合い不足のせいでも、性格の問題でも、親のしつけのせいでもありません

発達障害(神経発達症)は、生まれつきの脳の働き方の違いによる特性と考えられています。そして、知的な遅れがなく言葉の発達が良好な場合には、就職してからの働きづらさや対人関係のつまずきをきっかけに、大人になって初めて気づかれることも少なくありません

この記事は、府中よりそい訪問看護ステーションがお届けする「こころの病気を、家でどう支える?」疾患シリーズの第5回です。これまで、うつ病・双極性障害・不安障害(パニック障害)・統合失調症を取り上げてきました。今回は、おとなのASD・ADHDについて、ご本人と、支えるご家族の両方に向けてお話しします。

発達障害(ASD・ADHD)とは ── 「治す」より「特性とつき合う」

発達障害にはいくつかのタイプがありますが、大人で話題になりやすいのがASDとADHDです。

  • ASD(自閉スペクトラム症) ── 対人コミュニケーションや対人関係の難しさと、興味の偏り・自分のやり方やこだわりの強さ・反復的な行動を中核とする特性です。決まったやり方や見通しが立つことに安心を感じやすい一方で、音・光・肌触り・においなどへの感覚の過敏さ(逆に感じにくさ)を伴うことがあります。
  • ADHD(注意欠如・多動症) ── 不注意・多動性・衝動性を中核とする特性です。大人になると、落ち着きのなさ(多動)は目立ちにくくなる一方で、うっかりミスや忘れ物、段取りの苦手さ、先延ばしといった形であらわれやすくなります。

ASDとADHDは、両方の特性が重なってあらわれることもあり、きれいに線引きできるものではありません。診断の基準を完全には満たさないものの、特性による困りごとがある状態を、一般に「グレーゾーン」と呼ぶことがあります。ただしこれは正式な診断名ではなく、困りごとが軽いという意味でもありません。

そして大切なのは、発達障害は「治す病気」ではなく、「特性とつき合っていく」ものだということです。特性のあらわれ方や程度には個人差が大きく、一人ひとり違います。生活や仕事の仕方を工夫し、周囲の理解と環境を整えることで、その人の持っている力を活かしやすくなり、日常の困りごとを軽くしていくことができます。

家で起きやすいこと ── 困りごとが積み重なると

発達障害の特性は、毎日の暮らしの中でこんな形であらわれることがあります。

  • 片付け・段取り・時間管理が苦手 ── 部屋が片付かない、いくつかの作業を同時に進めること(マルチタスク)や締切の管理に苦労する。これは「実行機能」と呼ばれる、計画を立てて順序よく進める力に苦手さがあるためで、あらわれ方や程度には個人差があります。
  • 感覚過敏で、気づかぬうちに疲れてしまう ── まわりの音や光、人の多さなどに反応しやすく、本人も理由がわからないまま心身がすり減っていることがあります。
  • 約束やうっかりで、人間関係がすれ違う ── 悪気はないのに予定を忘れてしまったり、言葉の受け取り方の違いから誤解が生まれたりします。

こうした生きづらさが日々積み重なっていくと、気分の落ち込みや不安、外に出るのがつらくなるといった「二次的な不調(二次障害)」が生じることがあります。これには、日常生活での不適応感や自尊心の傷つきから生じる不調も含まれるとされています。そして、この二次的な不調をきっかけに、医療機関や相談機関につながることもあります。「気づいたら、もとの特性ではなく、こころの疲れのほうが大きくなっていた」 ── そんな順番をたどる方も、めずらしくありません。

ご本人へ ── 「できない自分」ではなく「合うやり方が、まだ見つかっていないだけ」

まず、これだけは覚えていてください。うまくいかないことが続いても、自分を責める必要はありません。それは脳の働き方の特性によるもので、長いあいだ「なんで自分はできないんだろう」と問い続けてきた方ほど、その問いから少し離れてみてほしいのです。

苦手なことは、「気合い」ではなく、仕組み・道具・リマインダーでカバーするのが基本です。スマホのアラームやメモ、やることを目に見える形にする工夫など、自分を助けてくれる道具を増やしていきましょう。これは甘えではなく、特性に合った合理的なやり方です。

そして、もし今、気分の落ち込みや強い不安、眠れなさなどがあるなら、まずは二次的な不調のケアと、休息を優先してください。疲れ切った状態では、どんな工夫もうまく回りません。あなたは「できない自分」なのではなく、「合うやり方が、まだ見つかっていないだけ」です。一緒に探していける道具や支えは、ちゃんとあります。

ご家族へ ── 全部、背負わなくていいのです

毎日そばで支えてこられたご家族へ。発達障害の特性は、叱って、励まして直るものではありません。「何度言ったらわかるの」と感じてしまうこともあるかもしれませんが、それは関わり方が悪いからでも、ご本人がわざとサボっているからでもないのです。

「何度言っても伝わらない」「空回りしてしまう」 ── そう感じてしまう瞬間があっても、それはあなたの関わり方が足りないからではありません。ご本人の見えている世界や感じ方は、ご家族にも理解しきれなくて当然です。うまく伝わらない、すれ違う。そう感じること自体が、これまで真剣に向き合ってこられた証です。何かを「正しくやろう」と、これ以上気を張る必要はありません。

それから、いちばん大切なことを。これは、あなたのしつけや育て方のせいではありません。そして、ご家族だけで全部を背負う必要もありません。正しい声かけを完璧にこなさなければ、と気を張り続ける必要はないのです。専門職を頼っていいし、ご家族自身が休むことも、支えの一部です。あなたが倒れてしまわないことが、何より大切です。

診断・支援につながる ── 診断は「レッテル」ではなく、自分の取扱説明書

「診断を受けたら、レッテルを貼られるのでは」と不安に思う方もいます。でも診断は、レッテルではなく「自分の取扱説明書」のようなものです。自分の得意・不得意がわかると、合うやり方を選びやすくなり、まわりにも理解と協力を求めやすくなります。特性は、見方を変えれば強みにつながることもあります。

お薬について。ADHDには、不注意や衝動性をやわらげるお薬の選択肢があり、大人に使えるものもあります(使うかどうかは医師と相談して判断します)。一方、ASDの中核となる特性そのものを治すお薬は確立されておらず、お薬はつらい二次的な不調(うつや不安、睡眠の問題など)に対して補助的に用いられるのが基本です。いずれの場合も、薬だけに頼るのではなく、環境を整えたり道具を活用したりといった工夫(心理社会的な支援)が土台になります。

暮らしを支える社会資源もあります。

  • 自立支援医療(精神通院医療) ── 精神科への通院にかかる医療費の自己負担が原則1割に軽減され、所得に応じて1か月あたりの上限が設けられます。
  • 精神障害者保健福祉手帳 ── 発達障害もその対象に含まれ、さまざまな支援を受けやすくなります。
  • 就労移行支援などの就労支援 ── 一般企業への就職を希望する人に、就労に必要な知識や能力を高めるための訓練・支援を行うサービスです。

訪問看護でできること ── 自宅で、暮らしごと支える

精神科訪問看護は、主治医(精神科を担当する医師)から交付される精神科訪問看護指示書にもとづいて、ご自宅での生活を支えるサービスです。私たちが大切にしているのは、特性を「直す」ことではなく、その人の暮らしが少しでもラクに回るように、一緒に工夫していくことです。

  • 生活リズム・服薬の伴走 ── 起きる・休む・食べるのリズムや、二次的な不調に対するお薬を続けやすいよう、そばで一緒に整えていきます。
  • 環境調整や段取りの工夫を一緒に考える ── 片付けや時間管理など、苦手な部分を「仕組み」で支える方法を、その方に合わせて探します。
  • 気持ちの整理に伴走する ── 不安や落ち込みを一人で抱え込まずにすむよう、話を聴き、整理をお手伝いします。
  • ご家族の相談相手になる ── ご本人だけでなく、支えるご家族の困りごとや疲れにも、一緒に向き合います。

「訪問看護を使うには指示書が必要と聞いたけれど、どうすれば……」 ── そんな入口の段階でも、ご相談ください。主治医への指示書のご依頼も、私たちがお手伝いします(訪問看護のご利用には主治医の指示書が必要ですが、まだ受診前の方も、どこに相談すればよいかからお手伝いします)。当ステーションには、精神科に特化した看護師・作業療法士が在籍しています。

おわりに ── 一人で、ご家族だけで抱えないで

発達障害の困りごとは、目に見えにくく、まわりに理解されづらいぶん、ご本人もご家族も孤立しやすいものです。でも、抱え込まなくて大丈夫です。相談できる場所は、ちゃんとあります。

まだ受診していない段階なら、公的な相談の入口として、発達障害者支援センター・保健所/保健センター・精神保健福祉センターがあります。発達障害者支援センターは、本人・家族・関係機関からの相談に応じ、相談支援や就労支援などを行う窓口です。すでに通院中の方は、主治医に「訪問看護を使いたい」と伝えてみてください。そこから、私たちにつながることができます。

府中よりそい訪問看護ステーションは、東京都府中市で、精神科に特化した訪問看護をお届けしています。ご本人にも、支えるご家族にも、よりそいながら、暮らしを一緒に支えていきます。どんなことから話せばいいかわからなくても、かまいません。まずはお気軽にお電話ください。

お問い合わせ:042-508-3434(受付 9:00-18:00/土日祝を除く)

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