
精神科の治療を続けていると、主治医から「デイケアに通ってみませんか」と勧められることがあります。一方で、訪問看護を提案されることもあります。このとき「どちらを選べばいいのか」「片方を選んだら、もう片方は使えなくなるのか」と迷われる方は少なくありません。
結論から書くと、この2つはどちらかを選ぶ性質のものではありません。役割が違うからです。そして制度の原文を確認したかぎり、同じ日に両方を利用することを禁じる規定は見当たりません。
この記事では、精神科デイケアと精神科訪問看護の違い、併用の考え方、回数の上限、費用のしくみを、厚生労働省の告示の原文にあたって整理します。前回の記事(精神科訪問看護は20代・30代でも使える?)で簡単に触れた「デイケアとの使い分け」を、あらためて詳しく書いたものです。
結論:デイケアと訪問看護は、役割が違います
ごく単純化すると、次のように整理できます。
- 精神科デイケア:医療機関に通って、他の利用者やスタッフと一緒に過ごす。生活のリズムをつくる、人と過ごす練習をする、活動の場を持つ
- 精神科訪問看護:看護師などが自宅に来る。暮らしの場で、体調・服薬・生活・ご家族との関係を一緒に整える
「外に出ていく力を育てる場」と「暮らしの土台を支える場」と言い換えてもいいかもしれません。どちらか一方があれば足りる、というものではなく、その人が今どちらを必要としているかで決まります。両方が必要な時期もあります。
いちばんの違いは「通う」か「来てもらう」か
違いを3つの軸で並べると、性格の差が見えやすくなります。
| 精神科デイケア | 精神科訪問看護 | |
|---|---|---|
| 場所 | 医療機関(通う) | 自宅(来てもらう) |
| 人数 | 集団で過ごすことが中心 | 基本的に1対1 |
| 時間 | まとまった時間を過ごす | 1回あたりは短時間 |
この差から、得意なことも変わってきます。デイケアは「家の外に出る」「人と関わる」ことそのものが練習になります。訪問看護は、実際に暮らしている部屋で話すため、薬の残り具合、食事や睡眠の様子、部屋の状態といった生活の実際が見えるところが強みです。訪問で具体的に何をしているかは、精神科訪問看護師の1日にまとめています。
逆に言えば、外に出るのがつらい時期にデイケアだけを勧められても続きにくく、人と関わる機会を増やしたい時期に訪問看護だけでは物足りない、ということが起こります。
精神科デイケアには4つの種類があります
「デイケア」とひとまとめに呼ばれがちですが、診療報酬の告示(診療報酬の算定方法・平成20年厚生労働省告示第59号)では、次の4つが別々の区分として定められています。
| 種類 | 区分番号 | 点数(1日につき) |
|---|---|---|
| 精神科ショート・ケア | I008-2 | 小規模 275点/大規模 330点 |
| 精神科デイ・ケア | I009 | 小規模 590点/大規模 700点 |
| 精神科ナイト・ケア | I010 | 540点 |
| 精神科デイ・ナイト・ケア | I010-2 | 1,000点 |
名前のとおり、ショート・ケアは短い時間、デイ・ケアは日中、ナイト・ケアは夕方から夜にかけて、デイ・ナイト・ケアは日中から夜までを過ごすものです。過ごす時間の長さが異なり、点数もそれぞれ別に定められています。
ただし、実際の開始時刻・終了時刻・実施する曜日は医療機関ごとに違います。「デイケアに行く」と決める前に、通う予定の医療機関でその日の流れを確認しておくと、想像とのずれが起きにくくなります。
なお、これら4つはお互いに重ねて算定できません。たとえばI009(精神科デイ・ケア)の注7は、デイ・ケアを算定した場合はショート・ケア、ナイト・ケア、デイ・ナイト・ケア、重度認知症患者デイ・ケア料は算定しない、と定めています。「デイケアとナイトケアを同じ日に両方」ではなく、その場合はデイ・ナイト・ケアとして扱う、という組み立てです。
同じ日に、デイケアと訪問看護の両方を使えますか
ここがいちばん多いご質問です。制度の原文を、両方向から確認しました。
- 訪問看護ステーションの費用を定めた告示(訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法)と、その実施上の留意事項の通知には、デイ・ケアに関する記載がありません
- デイケア側のI009の注が「算定しない」と定めている相手は、ショート・ケア、ナイト・ケア、デイ・ナイト・ケア、重度認知症患者デイ・ケア料です。訪問看護はここに入っていません
- 医療機関が行う訪問看護(精神科訪問看護・指導料)の注にも、デイケア等を算定した日は算定しないという定めは見当たりません
つまり、告示の本文に「同じ日にデイケアと訪問看護の両方を使ってはいけない」と読める規定は見当たらない、というのが確認できたことです。前の記事で「細かい取扱いは確認を」と書いた点を、今回あらためて原文で確かめました。
ただし、次の2点は分けて考えてください。
- 物理的な無理はあります。デイケアはまとまった時間を医療機関で過ごすものなので、その時間に自宅で訪問を受けることはできません。組み合わせるとすれば「日中はデイケア、夕方に訪問」といった形になります
- 細部の取扱いは、確認したほうが確実です。請求の細かな運用は通知や地域の解釈にもよります。実際に組み合わせるときは、主治医、デイケアの医療機関、訪問看護ステーションの3者に確認してください
「制度上ダメだと思って諦めていた」という理由で選択肢を狭める必要はない、というのがこの章の要点です。
回数の上限は、それぞれ別々に決まっています
併用できるとしても、それぞれに回数の考え方があります。
デイケア側は、ショート・ケア、デイ・ケア、ナイト・ケア、デイ・ナイト・ケアのいずれかを最初に算定した日から起算して1年を超える期間に行われる場合、週5日を限度とされています。さらに週3日を超えて算定するのは「患者の意向を踏まえ、必要性が特に認められる場合に限る」とされています。加えて、最初の算定から3年を超えて週3日を超える日については、長期の入院歴がある方を除き、点数が100分の90になる仕組みも設けられています。
これは「たくさん通えば通うほどよい」という設計にはなっていない、ということでもあります。長く通い続けている方については、そのままでよいのかを定期的に見直す前提の作りになっています。
訪問看護側は、精神科訪問看護基本療養費が原則として週3日を限度とされ、退院直後の一定期間や、主治医が特別訪問看護指示書を出した場合には回数を増やせる仕組みがあります。詳しくは精神科訪問看護は週何回来てくれる?にまとめています。
大事なのは、この2つの上限は別々にカウントされるという点です。デイケアに通っているからといって、訪問看護の回数が減らされるという仕組みにはなっていません。
お金の話:どちらも自立支援医療の対象です
費用の心配から、片方を諦めようと考える方もいらっしゃいます。ここは知っておくと選択肢が変わるところです。
厚生労働省の資料では、自立支援医療(精神通院医療)の対象となる医療の範囲について、「病院又は診療所に入院しないで行われる医療(外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等が含まれます)」と説明されています。つまりデイケアも訪問看護も、どちらも自立支援医療の対象です。
自立支援医療を受けている場合、自己負担は原則1割になり、さらに所得等に応じた月ごとの自己負担上限額が設定されます。この上限は医療の種類ごとではなく、対象となる医療全体にかかります。したがって「デイケアを増やすと、その分だけ負担が青天井に増えていく」という形にはなりません。制度の詳細は自立支援医療とは?で解説しています。
ひとつ注意点があります。自立支援医療による軽減を受けられるのは、都道府県または指定都市から指定を受けた指定自立支援医療機関に限られます。この指定の対象には、病院・診療所・薬局とともに訪問看護ステーションが含まれます。利用を検討している事業所が指定を受けているかどうかは、問い合わせのときに確認しておくとよい項目です。
あわせて、自立支援医療の「世帯」は住民票上の世帯ではなく、同じ公的医療保険に加入している方の単位で捉えることとされています。ご家族の扶養に入っている方は、上限額の判定がご自身の収入だけでは決まりません。この点は20代・30代の利用について書いた記事で詳しく整理しています。
こういうときはデイケア、こういうときは訪問看護
制度の話が続いたので、実際の場面に引き寄せて整理します。あくまで考え方の目安で、最終的には主治医の判断になります。
- 家から出るのがつらい・外出の回数が減っている → まず訪問看護。来てもらうかたちなら始めやすく、外に出る力が戻ってきた段階でデイケアを検討する順序が現実的です
- 日中の予定がなく、生活リズムが崩れている → デイケアが向きます。決まった時間に出かける先があること自体が、リズムの支えになります
- 薬の飲み忘れ・体調の波が気になる → 訪問看護。暮らしの場で薬や睡眠、食事の実際を一緒に確認できます
- 人と関わる機会をつくりたい・働くことを考えたい → デイケアや就労支援の領域です。訪問看護は、その挑戦を家の側から支える役割になります
実際には「デイケアに通いはじめたけれど、家に帰ってからが整わない」「訪問看護で落ち着いてきたので、そろそろ外に出る機会がほしい」といった形で、必要なものが移っていくことがよくあります。いま何が足りないかで考えるのが、いちばん実際に即した選び方です。
府中市で利用できる相談先や医療機関の種類は、府中市の精神科医療マップにカテゴリ別にまとめています。
20代・30代の方に関係する制度があります
あまり知られていませんが、精神科ショート・ケアには40歳未満の方を対象とした加算が設けられています。
告示のI008-2の注7では、40歳未満の患者に対して、似た精神症状のある複数の患者と共通の計画を作成し、その計画を文書で提供して同意を得たうえで、複数の患者と同時にショート・ケアを実施した場合に、疾患別等専門プログラム加算として200点を加算するとされています。治療開始日から5か月を限度に週1回、医師が特に必要性を認めた場合は2年を限度に、さらに週1回かつ計20回まで算定できる仕組みです。
これは「同じような困りごとを抱えた同世代が集まって、疾患に応じたプログラムに取り組む」ことが制度として想定されている、ということです。年齢が近い人が集まる場を探している方には、実施している医療機関があるか主治医に尋ねてみる価値があります。
ただし、これはすべての医療機関で行われているわけではありません。届出をしている医療機関で、条件を満たすプログラムを実施している場合に限られます。
迷ったときの、決め方の順序
どちらにするか決めきれないとき、次の順序で考えると整理しやすくなります。
- いま、いちばん困っていることは何かを1つ挙げる(外に出られない、薬が飲めていない、話し相手がいない、日中やることがない など)
- それが家の中の困りごとか、家の外の困りごとかで分ける
- 主治医に、その困りごとをそのまま伝える。「デイケアと訪問看護、どちらがいいですか」ではなく「こういうことに困っています」と伝えるほうが、判断の材料になります
- どちらを始めるにしても、主治医の指示が出発点です。訪問看護は主治医が交付する訪問看護指示書がなければ始まりません
また、片方を始めてみて合わなかった場合に、もう片方に切り替えることもできます。最初の選択で全部が決まるわけではありません。
まとめ:「どちらか」ではなく「いま何が足りないか」
- デイケアは「通う」、訪問看護は「来てもらう」。役割が違うので、対立するものではありません
- 告示の本文に、同じ日に両方を使うことを禁じる規定は見当たりません。ただし時間帯は重ねられないため、組み合わせ方は事前に相談してください
- 回数の上限はそれぞれ別に決まっており、デイケアに通っても訪問看護の回数は減りません
- デイケアも訪問看護も、どちらも自立支援医療の対象です。月の自己負担上限は医療全体にかかります
- 決め方の出発点は「いま何に困っているか」。それを主治医にそのまま伝えることが近道です
府中よりそい訪問看護ステーションは、精神科・認知症のケアを中心に、府中市とその周辺で訪問看護を行っています。デイケアに通いながら訪問看護を併せて利用することもできます。「自分の場合はどう組み合わせるのがよいか」という段階のご相談でも構いません。ご本人からでも、ご家族からでもお受けしています。
対応エリアは対応エリアのページでご確認いただけます。ご相談はお問い合わせページ、またはお電話(042-508-3434/平日9:00-18:00)へどうぞ。
よくあるご質問
デイケアに通っていると、訪問看護は使えませんか?
そのようなことはありません。訪問看護ステーションの費用を定めた告示とその留意事項の通知には、デイ・ケアに関する記載自体がありません。またデイケア側の告示(I009 精神科デイ・ケア)の注が重ねて算定しないと定めている相手は、精神科ショート・ケア、精神科ナイト・ケア、精神科デイ・ナイト・ケア、重度認知症患者デイ・ケア料であり、訪問看護は含まれていません。ただし請求の細かな運用については、主治医と各事業所にご確認ください。
デイケアと訪問看護、費用は二重にかかりますか?
それぞれに費用は発生しますが、自立支援医療(精神通院医療)を利用している場合、月ごとの自己負担上限額は対象となる医療全体にかかります。厚生労働省の資料では、自立支援医療の対象となる医療の範囲に外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等が含まれると説明されています。したがって、上限額に達したあとは、その月の自己負担がそれ以上増えない仕組みになっています。
デイケアは週に何回まで通えますか?
精神科ショート・ケア、精神科デイ・ケア、精神科ナイト・ケア、精神科デイ・ナイト・ケアのいずれかを最初に算定した日から起算して1年を超える期間については、週5日が限度とされています。さらに週3日を超えて算定する場合は、患者の意向を踏まえ、必要性が特に認められる場合に限るとされています。1年以内の期間についてはこの限度の定めがなく、実際の通所回数は主治医の判断と医療機関の受け入れ状況によります。
ショート・ケアとデイ・ケアは何が違いますか?
告示上は別々の区分で、点数も異なります。精神科ショート・ケアは1日につき小規模なもの275点、大規模なもの330点、精神科デイ・ケアは小規模なもの590点、大規模なもの700点です。名称のとおりショート・ケアのほうが短い時間で行われるものです。ただし実際の開始時刻や曜日は医療機関ごとに異なるため、通う予定の医療機関にご確認ください。
訪問看護を始めるには、何から相談すればよいですか?
精神科訪問看護は、主治医が交付する精神科訪問看護指示書に基づいて行われます。したがって出発点は主治医への相談です。訪問看護ステーションが指示書を出すことはできませんが、ご依頼の手続きについてはお手伝いしています。どこに相談すればよいか分からない段階でも、訪問看護ステーションにお問い合わせいただければ、状況をうかがって流れをご説明できます。ご家族からのご相談も受け付けています。



