薬を飲み始めてから体重が増えたとき、家族はどうする?|精神科の薬による体重変化と、家族にできる関わり方【Vol.88】


「薬を飲み始めてから、体重が増えてきた気がする」「本人も気にしているようだけれど、どう声をかけたらいいのか分からない」。精神疾患のあるご本人を支えているご家族から、こうしたご相談をいただくことがあります。

体重の変化は、目に見えるぶん、ご家族が最初に気づきやすい変化です。同時に、いちばん言葉にしにくい変化でもあります。この記事では、公的な資料に何がどこまで書かれているのかを確かめたうえで、ご家族が気づいたときにできること、主治医への伝え方、そして避けたほうがよい関わり方を整理しました。

「薬を飲み始めてから、少し太ったみたい」と感じたとき、まず知っておいていただきたいこと

先にこの記事の結論をお伝えします。三つあります。

  • 体重が増えることがあるのは、公的な資料にも書かれていることで、ご本人の努力不足ではありません
  • 体重が増え始めたときにすることは、記録して主治医に伝えることです。ご家族やご本人の判断で薬を減らしたりやめたりすることではありません
  • 薬を変えるかどうかを決めるのは、ご本人と主治医です

この三つが伝われば、この記事の役割はほぼ果たせています。以下は、その根拠と、実際にどう動くかの話です。

公的な資料には、どの薬について、どこまで書かれているのか

ここは正確にお伝えしたいところです。「精神科の薬はどれも太る」という書き方は、公的な資料の記述を超えています。私たちが確認できた範囲で、体重の増えやすさがはっきり書かれているのは、第二世代抗精神病薬と呼ばれるグループについてです。

厚生労働省の『重篤副作用疾患別対応マニュアル 高血糖』には、次のように書かれています。

第二世代抗精神病薬であるオランザピン、クエチアピンに催糖尿病作用があることが報告されている。これらの薬剤の副作用の一部は、体重増加作用に基づく二次的なものである。

同じ資料には、体重の増え方についての記述もあります。

第二世代抗精神病薬を統合失調症患者に使用した場合には、投与後最初の数ヶ月で急激に体重が増加し、1 年後にも体重はプラトーに達しないケースがあることが知られており、体重増加に伴うインスリン抵抗性の亢進が高血糖発現に関与すると考えられている。

「投与後最初の数ヶ月で急激に」という記述は、ご家族の実感と重なるのではないかと思います。飲み始めて間もない時期にこそ変化が出やすい、という順番が、資料の側にも書かれているということです。

一方で、書かれていないこともあります。どのくらいの割合の人に起きるのかについて、私たちが確認できた患者向けの資料には数字がありませんでした。また、抗うつ薬や気分安定薬について同じような記述は、今回私たちが確認した公的な資料の中には見当たりませんでした。ですので、この記事でも「精神科の薬を飲んでいれば必ず太る」とは書きません。お飲みの薬について具体的なことは、主治医か薬剤師にお尋ねください。

「太った」という言葉を、ご本人にそのまま伝えることの難しさ

体重の話が難しいのは、それが体の話であると同時に、その人の見た目や自己評価に直接ふれる話だからです。「太ったね」という一言が、ご本人には「だらしない」「自己管理ができていない」と言われたように届いてしまうことがあります。

ご家族としては心配から出た言葉でも、ご本人が黙ってしまえば、その後の体調の変化も見えにくくなります。ここで大切なのは、評価の言葉ではなく、事実の言葉で伝えることだと考えています。

  • 「太ったね」ではなく「服がきつそうに見えるけれど、しんどくない?」
  • 「食べすぎじゃない?」ではなく「最近、おなかがすきやすい感じはある?」
  • 「痩せないと」ではなく「次の受診のとき、先生に体重のことを聞いてみようか」

言い換えの目的は、やわらかく言うことではありません。体重を「本人の落ち度」ではなく「主治医に相談する材料」の位置に置き直すことです。位置が変われば、ご本人も話しやすくなります。

数字より先に目に入るところ|ベルトの穴、上着のボタン、間食の量

毎日そばにいると、かえって変化に気づきにくいことがあります。手がかりになりやすいのは次のようなところです。

  • ベルトの穴の位置、ズボンやスカートのウエスト、上着のボタン
  • 食事の量や回数、間食の増え方、飲みものの種類
  • 動くのがおっくうそうか、階段や坂で息が上がるようになっていないか
  • 睡眠の時間帯が変わっていないか

睡眠については、体重とは別の理由で変わることもあります。眠れない状態が続いているときの考え方は、不眠が続く家族へ|精神疾患と眠れない夜の向き合い方【Vol.76】にまとめています。

見逃してほしくないサイン|のどの渇き、水を多く飲む、尿が増える、体重が減る

ここは、この記事でいちばんお伝えしたいところです。体重が増えることそのものより先に知っておいていただきたい症状があります。

先ほどの厚生労働省のマニュアルには、患者さんとご家族に向けた抜粋版があり、高血糖について次のように書かれています。

「口渇(のどがかわく)」、「多飲」、「多尿」、「体重減少」などがみられ、これらの症状が急に出現したり、持続したりする。

同じ資料は、高血糖は医薬品によっても起こるとしたうえで、代表的なものとして「副腎皮質ステロイド薬、高カロリー輸液、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、向精神薬などでみられることがあります」と書いています。

読み違えやすいところなので、はっきり書きます。「体重が増える」ことと「体重が減る」ことは、逆の方向ですが、どちらも気に留めておく値打ちがあります。同じ資料は、これらを「高血糖が進んだ場合の症状」と位置づけ、気づいた場合はすぐに医師を受診するよう求めています。体重が増えていた方が、ある時期から急に減り始め、そこにのどの渇きや尿の回数の増加が重なっているときは、様子を見ないでください。この記事の他のどの内容よりも、ここが優先します。

なお、食事そのものがとれなくなって体重が落ちている場合は、また別の話になります。そちらは食事がとれないとき、家族はどうする?|精神疾患のある家族の食欲不振と、声のかけ方【Vol.85】をご覧ください。

自己判断で薬を減らしたり、やめたりしないでください

体重が増えてくると、「この薬のせいなら、やめれば戻るのでは」という考えが浮かびやすくなります。気持ちとしては自然なことだと思います。ただ、ここは踏みとどまっていただきたいところです。

国立精神・神経医療研究センターの『こころの情報サイト』には、統合失調症の薬物療法について次のように書かれています。

再発を繰り返すことが多い疾患なので、しばらく症状が安定しているからといって自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、再発を誘発して重症化の危険を高めます。「副作用がつらい」「薬をやめたい、減らしたい」などの悩みがあれば、医師に相談しましょう。

この文章のよいところは、我慢しろとは書いていないことだと思います。つらさは相談してよい、ただし相談先は主治医である、という組み立てになっています。

ご本人が薬を飲みたがらない、勝手に減らしてしまうという状況が続いているときの関わり方は、薬を飲まないとき、家族はどうする?|精神疾患のある家族への声かけと主治医への伝え方【Vol.78】で詳しく扱っています。

体重の変化を、受診のときにどう切り出すか

「いつ相談すればよいか」については、公的な資料が答えを出しています。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開している『患者向医薬品ガイド』には、オランザピンについて次のように書かれています。

体重が増加することがあります。体重が増加し始めた場合には、医師に相談し食事内容を改善したり、運動をするなどしてください。

クエチアピンの同じガイドにも「体重が増加することがあるので、肥満に注意してください。体重が増加し始めた場合には、医師に相談してください。食事療法や運動療法などが行われます」とあります。

どちらの記述も、増加し始めた場合には、という時点を指しています。ずいぶん増えてからではなく、増え始めた時点で相談することが想定されているということです。

ここから先は、公的な資料に書かれていることではなく、私たちが訪問の現場で使っているやり方です。増え始めた時点に気づくには、家庭で体重を控えておく方法があります。毎日でなくてかまいません。週に1回、同じ曜日の、同じような時間に測る。それだけでも、増え始めた時期が見えやすくなります。

受診のときは、次の三つを一緒に伝えると話が早く進みます。

  • いつごろから、どのくらい増えたか(「3か月で5キロ」のように期間つきで)
  • 食事や間食、飲みものに変化があったかどうか
  • のどの渇き、尿の回数、だるさなど、体調で気になっていること

ご本人が診察で言い出しにくいときは、メモを渡す形でもかまいません。主治医以外に、府中市内で相談できる窓口を探したいときは、府中市の精神科医療マップ|こころの相談・通院・在宅ケア・緊急時まで5カテゴリで網羅【Vol.37】に一覧があります。

薬を変えるかどうかは、主治医の判断です

体重の増加を主治医に伝えたあと、どうなるかはその方によって違います。薬の量や種類を見直すこともあれば、今の薬を続けながら生活面で工夫していく方針になることもあります。

薬を選ぶときには、体重への影響だけでなく、症状の安定、これまでの経過、他の副作用の出方など、いくつもの事情が同時に考えられています。その全体を見て決められるのは、ご本人を診ている主治医だけです。私たち訪問看護も、ご家族も、そこに材料を渡す役割にとどめるようにしています。

だからこそ、伝えることに意味があります。伝えなければ、判断の材料が主治医のところに届かないためです。

ご家族にできる生活面の関わり方|食事や運動を無理強いしない

先ほどの患者向医薬品ガイドは「体重が増加することがあります。体重が増加し始めた場合には、医師に相談し食事内容を改善したり、運動をするなどしてください。」と書いていました。読み飛ばされやすいのですが、これはまず医師に相談し、そのうえで、と読める順番の文章です。ご家族が主導して食事制限や運動を課すことが勧められているわけではありません。

精神疾患のあるご本人にとって、食べることが数少ない楽しみになっている時期があります。そこを取り上げられると、体重は減っても、気持ちのほうが落ちてしまうことがあります。ご家族が管理役になると、関係そのものが緊張しやすくなるという難しさもあります。

これも医師に相談したうえでの話になりますが、実際のご家庭では、減らす方向よりも、置き換える方向・一緒にやる方向で工夫されていることがあります。

  • 「間食をやめよう」ではなく、飲みものを甘くないものに替えてみる
  • 「運動して」ではなく、買い物や散歩に一緒に出てみる
  • 家族の食事も同じものにする(ご本人だけ別メニューにしない)

どのやり方を選ぶかは、ご本人とご家族が決めることです。ここに書いたのはご参考までの例で、うまくいかない日があっても、それで振り出しに戻るわけではありません。ご家族が支えるときの考え方全般は、精神科訪問看護で家族ができること|介護疲れを減らす5つのヒント【府中市】にまとめています。

体重の変化だけで、治療がうまくいっていないと判断しないでください

体重は数字で出るので、どうしても治療の成績のように見えてしまうことがあります。けれども、体重が増えたことは、治療が失敗したという意味ではありません。

眠れるようになった、幻聴や不安が落ち着いてきた、家の外に出られるようになった。そうした変化のほうが、治療がどう働いているかをよく表しています。体重は、そのなかで一緒に見ていく項目のひとつです。体重の数字だけを見て、良くなっている・悪くなっていると決めないようにしています

訪問看護は、体重や生活の変化にどう関わるのか

精神科訪問看護では、看護師が定期的にご自宅にうかがい、体調や生活の様子を確認して記録に残しています。体重や食事の変化、のどの渇きやだるさといった体の症状も、そのなかで見ていく項目です。

ご家族が「気になるけれど、本人に言いにくい」と感じていることを、訪問看護に預けていただくこともできます。私たちが訪問のなかで体調としてうかがい、必要に応じて主治医に情報をお伝えします。ご家族が言いにくいことを、第三者が体の話として扱えるのは、訪問看護が家に入っていることの利点だと考えています。

ご本人と主治医のあいだ、ご本人とご家族のあいだに立って、材料を渡す役割です。判断そのものは、ご本人と主治医のあいだにあります。

府中よりそい訪問看護ステーションにご相談いただけること

府中よりそい訪問看護ステーションは、東京都府中市を中心に、精神疾患や認知症のある方のご自宅にうかがっている訪問看護ステーションです。

「薬を飲み始めてから体重が増えていて心配だが、本人にどう伝えたらいいか分からない」「主治医にどう相談したらいいか整理したい」といったご相談も承っています。初回のご相談は無料です。ご本人がまだ訪問看護を使っていない段階で、ご家族だけでご相談いただくこともできます。

通常の訪問は交通費・駐車場代をいただいておりません。夜間・営業時間外の緊急訪問は実費をお願いする場合があります。対応している地域は対応エリアのご案内でご確認いただけます。ご相談はお問い合わせページから、または042-508-3434へお電話ください。

訪問看護は、いくつもある選択肢のひとつです。他のステーションもご覧になったうえで、合うところを選んでいただければと思います。

よくあるご質問

薬を飲み始めてから体重が増えました。薬をやめたほうがいいですか

自己判断でやめず、必ず主治医にご相談ください。国立精神・神経医療研究センターの統合失調症のページでは、しばらく症状が安定しているからといって自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは再発を誘発して重症化の危険を高めるとされており、「副作用がつらい」「薬をやめたい、減らしたい」といった悩みは医師に相談するよう案内されています。つらさを我慢するのではなく、相談先を主治医にする、という考え方です。

どのくらい体重が増えたら、主治医に相談したほうがいいですか

「何キロから」という基準は、私たちが確認できた資料には見当たりませんでした。PMDAの患者向医薬品ガイドには「体重が増加することがあります。体重が増加し始めた場合には、医師に相談し食事内容を改善したり、運動をするなどしてください。」と書かれており、増え始めた時点での相談が想定されています。数字の基準を待つよりも、次の受診のときに体重の変化を伝えていただくのが確実です。

本人に「太った」と伝えると機嫌が悪くなります。どう声をかければいいですか

見た目を評価する言葉ではなく、体の状態をたずねる言葉に置き換えてみてください。「太ったね」ではなく「服がきつそうだけれど、しんどくない?」といった形です。目的は、体重を本人の落ち度ではなく主治医に相談する材料の位置に置き直すことにあります。それでも話しづらいときは、訪問看護の看護師から体調としてうかがうこともできます。

食事制限やダイエットを勧めてもいいですか

PMDAの患者向医薬品ガイドは「体重が増加し始めた場合には、医師に相談し食事内容を改善したり、運動をするなどしてください。」としており、まず医師に相談する順番だと読めます。ご家族が主導して制限を課すことは、そこでは想定されていません。実際のご家庭では、減らす方向より、飲みものを甘くないものに替える、買い物や散歩に一緒に出るといった置き換えと同行のほうが続いているようです。どうされるかは、主治医とご相談のうえでお決めください。

体重が増えたあと、急に減り始めました。様子を見ていいですか

早めに医療機関にご相談ください。厚生労働省の資料では、高血糖の症状として「口渇(のどがかわく)」「多飲」「多尿」「体重減少」などが挙げられ、これらが急に出現したり持続したりする場合が注意すべき状態として示されています。同じ資料は、気づいた場合はすぐに医師を受診するよう求めています。

参考にした資料

  • 厚生労働省『重篤副作用疾患別対応マニュアル 高血糖』(令和5年12月改定)
  • 厚生労働省『重篤副作用疾患別対応マニュアル 高血糖』患者・一般の方向け
  • 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)『患者向医薬品ガイド』オランザピンOD錠「タカタ」(2026年8月更新)/クエチアピン錠「DSEP」(2023年12月更新)
  • 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター『こころの情報サイト』統合失調症

いずれも2026年9月3日に原文を確認しました。制度や記載内容は改定されることがあります。お飲みの薬について具体的なことは、主治医または薬剤師にお尋ねください。

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