「働きたい」と言い出したとき、家族はどうする?|精神疾患のある家族の就労の選択肢と相談先【Vol.91】


「そろそろ働きたい、と言い出した」「ずっと家にいたのに、急に求人を見はじめた」。精神疾患のあるご本人を支えているご家族から、こうしたご相談をいただくことがあります。

うれしい気持ちと、心配な気持ちが同時に来る場面だと思います。まだ早いのではないか、失敗したら前より落ち込むのではないか、でも止めたら意欲をつぶしてしまうのではないか。この記事では、ご本人が「働きたい」と言ったときに、ご家族がまず何を考えればよいのか、働き方にはどんな選択肢があるのか、そして府中市ではどこに相談できるのかを、公的な資料で確かめられる範囲の事実にそって整理しました。あわせて、訪問看護がこの場面で何ができて何ができないのかもお伝えします。

「働きたい」と言われたとき、まず家族が考えたいこと

先にこの記事の要点をお伝えします。三つあります。

  • 働けるかどうかを判断するのは、ご家族ではありません。体調の見立ては主治医、仕事の探し方は就労の専門の窓口が担います。ご家族がひとりで抱えこむ必要はありません
  • 「働く」には、いきなり就職する以外の道が用意されています。訓練から始める、雇用契約を結ばずに通うところから始めるなど、段階を選べます
  • 選ぶことそのものを支えるサービスが、2025年10月に始まりました。どれを選べばよいか分からない、という状態のまま相談してかまいません

ご本人が「働きたい」と言うとき、その言葉には、収入を得たいという意味だけでなく、生活に張りがほしい、家族に申し訳ない、同世代と自分を比べてしまう、といった気持ちが混ざっていることがあります。まず何に困って働きたいと思ったのかを聞いてみると、進め方が変わることがあります。

焦って止めない、焦って後押ししない

ご家族の反応は、だいたい二つに分かれます。「まだ無理だからやめておきなさい」と止める方向では、ご本人が「自分は家族からも働けないと思われている」と受け取ってしまうことがあります。「いいことだ、すぐ探そう」と一気に進める方向では、準備が整わないまま応募や面接が続き、うまくいかなかったときの落ち込みが大きくなることがあります。どちらもご本人を思ってのことなのが、難しいところです。

間に置けるのが「調べてみる」という段階です。働くと決めるのでも、やめると決めるのでもなく、どんな選択肢があるのかを一緒に見てみる。この記事でご紹介する制度は、いずれも「働くと決めた人」だけのものではなく、迷っている段階から相談してよいものです。

働けるかどうかを決めるのは、ご家族ではありません

体調が働ける状態にあるかどうかは、日々の様子を見ているご家族には、かえって判断がつきにくいものです。家では調子がよく見えても外では違うことがありますし、その逆もあります。ここは主治医に相談する場面です。

診察の時間は短いことが多いので、聞きたいことを決めておくと話が進みます。働きたいと本人が言っていること、いま考えている働き方(週に何日くらい、どんな内容か)、ご家族から見て気になっていること。この三つをメモにして持っていくだけでも、主治医は状況をつかみやすくなります。ご本人が「家族から主治医に言われるのは嫌だ」と感じることもありますので、伝えたい内容は事前にご本人と確認しておくと、あとで気まずくなりにくくなります。

働き方の選択肢の全体像

「働く」と一口に言っても、実際にはいくつかの入口があります。大きく分けると次のようになります。

  • 一般雇用。障害があることを特に伝えずに、通常の求人に応募する形です
  • 障害者雇用。障害があることを前提に採用される形です。障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)第43条は、事業主に対して、雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じた数以上の対象障害者を雇用するよう定めています
  • 就労系の障害福祉サービス。就職の前に訓練をする、あるいは働く場に通うところから始める形です。障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第5条に位置づけられています

なお、障害者雇用促進法第36条の2と第36条の3は、事業主に対して、募集や採用のとき、また雇い入れた後に「障害の特性に配慮した必要な措置」を講じることを義務づけています(ただし過重な負担となるときを除く、という条件がついています)。厚生労働省はこの措置を、指針などで「合理的配慮の提供義務」と呼んでいます。障害者雇用で働く場合、配慮を求めることは特別なお願いではなく、法律に根拠のあるものだとお考えください。

ここから先は、三つめの「就労系の障害福祉サービス」を順に見ていきます。名前が似ていて分かりにくいのですが、訓練するところ、働く場に通うところ、就職したあとを支えるところ、そして選ぶことを支えるところの四つだと思って読み進めてください。

就労移行支援とは(訓練から始めたいとき)

就職を目指して準備するための通所サービスです。厚生労働省「障害福祉サービスの内容」によると、対象は「就労を希望する65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者」とされています。

同じ資料では、内容は「生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援を行います」と説明されています。訓練だけでなく、職場を探す段階や就職したあとの相談までが含まれているのが特徴です。

利用できる期間について、厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」は「利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定」としたうえで、「市町村審査会の個別審査を経て、必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新可能」と記しています。「2年で必ず終わり」と決まっているわけではありません。目的によって期間が変わる場合もあり、厚生労働省の事務処理要領では、休職からの復職のために一時的に利用する場合は「企業が定める休職期間の終了までの期間(最大2年間)」とされています。

就労継続支援A型・B型の違い(雇用契約を結ぶかどうか)

就職するのはまだ難しいけれど、働く場には通いたい。そういうときの選択肢が就労継続支援です。A型とB型があり、いちばん大きな違いは雇用契約を結ぶかどうかです。

A型は、厚生労働省「障害福祉サービスの内容」で「就労継続支援A型(雇用型)」と呼ばれ、対象は「企業等に就労することが困難な者であって、雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な者」とされています。厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」は、A型について「雇用契約に基づく就労の機会を提供」「最低賃金含め、労働関係法令の適用あり」「利用期間の制限なし」と記載しています。

B型は、同じ資料で「通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)」「利用期間の制限なし」と説明されています。対象については、企業やA型での就労経験があり年齢や体力の面で雇用されることが困難となった方、50歳に達している方または障害基礎年金1級を受けている方、そしてこれらに当たらない場合は後述する就労選択支援などによるアセスメントを受けた方、と整理されています。

ご家族からよくいただくのが「B型は工賃がいくらもらえるのか」というご質問です。金額は事業所ごとに異なり、ここで目安をお示しすることはできません。見学のときに直接おたずねになるのが確実です。

就労定着支援とは(働き始めてからのフォロー)

就職はゴールではなく、そこから続けることのほうが難しい場面もあります。就労定着支援は、働き始めたあとを支えるサービスです。

厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」によると、対象は「就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練の利用を経て一般就労へ移行した障害者で、就労に伴う環境変化により日常生活又は社会生活上の課題が生じている者であって、一般就労後6月を経過した者」とされています。就職してすぐではなく、半年たってから使えるサービスだという点は知っておいてよいと思います。

期間は同資料で「利用期間は3年間」とされ、厚生労働省の事務処理要領にも「就労定着支援については3年間の標準利用期間を超えて更新することはできない」と記されています。厚生労働省「障害福祉サービスの内容」では、休職して就労移行支援などを利用したあとに復職し、就労を継続している期間が6か月を経過した方も対象に含まれるとされています。

「まず選ぶこと」を支えるサービスが2025年10月に始まりました

ここまで読んで、「結局どれを選べばいいのか分からない」と思われたかもしれません。実はその迷いそのものを支えるサービスが、比較的新しく始まっています。就労選択支援です。

厚生労働省と文部科学省の連名通知(令和7年5月15日)は「就労選択支援は、令和7年10月1日より開始する新たな障害福祉サービスであり、障害者本人が就労先や働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援することを趣旨とするものである」と説明しています。障害者総合支援法第5条第13項に定義が置かれています。

厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」によると、短期間の生産活動などを通じて就労に関する適性や意向を整理し、そのうえで「利用者及び関係機関の担当者等を招集して多機関連携会議を開催し、利用者の就労に関する意向確認を行うとともに担当者等に意見を求める」という進め方をします。ご本人ひとりで決めるのでも、ご家族が決めるのでもなく、関係者が集まって一緒に考える場があるということです。

期間は、厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」で「支給決定期間は原則1ヶ月とする」とされ、厚生労働省の事務処理要領では「原則1か月(最長2か月)」と記されています。短期間で見立てをするサービスだとお考えください。

もうひとつ、知っておくとよいことがあります。同じ資料には「令和7年10月から、就労継続支援B型は、従来の就労アセスメントに代わり、就労選択支援により就労面に係る課題等の把握が行われている者が対象となる」と書かれています。つまり、B型を考えている場合、就労選択支援が入口になることがあります。数年前の情報をご覧になっていると、この点が変わっている可能性があります。

府中市で相談できるところ

制度の名前が分かっても、最初の一本の電話をどこにかけるかで迷うと思います。府中市の場合、主に次の三つです。

  • 府中市 福祉保健部 障害者福祉課 サービス支援担当(精神・発達) 042-335-4022。障害福祉サービスの申請の窓口です。府中市の案内では、精神・発達・高次脳機能障害のある方はこちらの担当が受付とされています。府中市役所「おもや」(府中市宮西町2丁目24番地)にあります
  • 府中市障害者就労支援センター み~な 042-360-1312。府中市立心身障害者福祉センター内(府中市南町5-38)にあります。府中市は「市の事業としては、府中市立心身障害者福祉センター内の障害者就労支援センターみ~な(みいな)にて、ご相談をお受けしております」と案内しています
  • ハローワーク府中(府中公共職業安定所) 042-336-8652。窓口のご案内に「13 障害のある方のお仕事の相談・紹介」として載っている番号です。府中市美好町1-3-1にあり、受付は月曜から金曜(土曜、日曜、祝日、年末年始以外)の8時30分から17時15分です。管轄は府中市・稲城市・多摩市・調布市・狛江市とされています

どこから始めてもかまいませんが、迷われたら、就労の相談は み~な、サービスの申請は障害者福祉課、求人の相談はハローワーク府中、という分け方が目安になります。

なお、このほかに「障害者就業・生活支援センター」という、就業面と生活面の両方を支える相談機関が都内に6か所あります。どのセンターが府中市を担当するかは公開されている一覧からは確認できなかったため、必要な場合は上記の窓口でおたずねください。

府中市には、ほかにも医療や生活の相談窓口があります。全体をご覧になりたい方は府中市の精神科医療マップ(Vol.37)にまとめていますので、あわせてご覧ください。

「手帳がないと使えない」と思われていることがあります

ご家族から多いご質問のひとつが「障害者手帳を持っていないから、こういうサービスは使えないのではないか」というものです。

厚生労働省の事務処理要領(介護給付費等に係る支給決定事務等について)には「身体障害者を除き、支給決定又は地域相談支援給付決定を行うに際し、障害者手帳を有することは必須要件ではない」と記されています。同じ資料では、精神障害のある方の確認方法として、精神障害者保健福祉手帳のほかに、精神障害を事由とする年金証書等、自立支援医療受給者証(精神通院医療に限る)、医師の診断書などが挙げられています。

ただし、府中市のページには、精神障害のある方が手帳をお持ちでない場合にどの書類で申請できるかまでは書かれていません。手帳がないから無理だとあきらめる前に、どの書類で確認してもらえるかを障害者福祉課(042-335-4022)に相談してみてください。また、サービスの利用には市による支給決定の手続きが必要で、府中市は申請から利用まで2か月程度の時間がかかる場合があると案内しています。早めに相談を始めておくと、動きたくなったときに間に合いやすくなります。

働くことを考える時期に、訪問看護ができること

訪問看護は就労支援の事業所ではありませんので、仕事をご紹介したり、働けるかどうかを判断したりすることはしていません。その部分は主治医とハローワーク、就労の支援機関の役割です。そのうえで、この時期に訪問看護がお手伝いできることもあります。

  • 生活リズムを整えること。働き始めると、起きる時間と寝る時間が生活を左右します。訪問のたびに睡眠や食事の様子をうかがい、崩れかけていれば早めに気づけるようにしています
  • 服薬を続けられるようにすること。環境が変わる時期は、飲み忘れや自己判断での中断が起きやすくなります
  • 調子の波を主治医に伝えること。ご本人が診察で「大丈夫です」としか言えないことがあります。訪問で見えている様子を、ご本人の同意を得たうえで主治医にお伝えすることができます
  • 働き始めてからも訪問を続けられること。就職したら訪問看護をやめなければいけない、ということはありません。生活が変わる時期こそ、支えが要ることがあります

訪問看護をお使いになるには主治医の指示書が必要です。年齢の条件はありません。働きながら使えるのかという点については精神科訪問看護は20代・30代でも使える?(Vol.68)に、デイケアとの使い分けについては精神科デイケアと訪問看護の違い(Vol.69)に詳しく書いています。

ご家族としてできること、できないこと

この場面でご家族ができることは、思っているより限られていて、そして思っているより大切です。できることは、話を聞くこと、一緒に調べること、見学に付き添うこと、主治医に伝える内容を一緒に整理すること、そしてうまくいかなかったときに「戻ってきていい」と示しておくことです。

できないことは、働けるかどうかを決めること、本人に代わって続ける意思を持つこと、そして結果を保証することです。ここを背負おうとすると、うまくいかなかったときにご家族のほうが先に消耗してしまいます。

すでに休職中の方が復職を考えている場合は、進め方が少し違います。適応障害で休職中の家族が疲れたとき(Vol.75)うつ病で休職中の家族へ(Vol.74)で、復職の決め方とご家族自身の消耗について書いていますので、そちらをご覧ください。発達障害の特性を踏まえた関わり方については発達障害(おとなのASD・ADHD)の人を、家でどう支える?(Vol.51)にまとめています。

おわりに|小さく試す、一度で決めない

お伝えしたいのは、一度の選択で決まってしまうわけではないということです。見学して合わなければ別のところを見ることができますし、B型から始めて様子を見ることも、就労移行支援で訓練してから考えることもできます。合わなかったことは失敗ではなく、次を選ぶための材料になります。

進み方の速さもそれぞれです。「働きたい」という言葉は、多くの場合、調子が少し上向いてきたときに出てきます。止めるか進めるかで悩む前に、まずは主治医に伝えて、窓口に相談してみてください。制度は、決めた人のためだけにあるのではなく、迷っている人のためにも用意されています。

府中よりそい訪問看護ステーションでは、精神科訪問看護を通じて、ご本人の生活の土台を整えるお手伝いをしています。初回のご相談は無料です。ご本人がまだ受診されていない段階でも、ご家族だけでご相談いただけます。交通費はいただいておりません。お電話(042-508-3434)またはお問い合わせフォームからご連絡ください。当ステーションについては会社紹介のページをご覧ください。

よくあるご質問

本人が「働きたい」と言い出したら、すぐ就職活動を始めてよいのでしょうか

まず主治医にお伝えになることをおすすめします。体調が働ける状態かどうかの見立ては、ご家族には判断が難しい部分です。あわせて、いきなり求人に応募する以外にも、訓練から始める就労移行支援や、雇用契約を結ばずに通う就労継続支援B型といった段階的な選択肢があります。どれを選ぶか迷う段階で相談してかまいません。

就労移行支援と就労継続支援B型は、どちらを選べばよいですか

厚生労働省の資料では、就労移行支援は「就労を希望する65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者」が対象とされ、就労継続支援B型は雇用契約を結ばずに就労や生産活動の機会を提供するものとされています。どちらが合うかはご本人の状態や希望によって変わるため、ここで一般的な答えをお示しすることはできません。2025年10月に始まった就労選択支援は、まさにこの選択を支えるためのサービスですので、府中市障害者福祉課(042-335-4022)や府中市障害者就労支援センター み~な(042-360-1312)にご相談ください。

障害者雇用と一般雇用は、どちらで探すべきですか

どちらがよいかは、働き方の希望や、職場で配慮を受けたいかどうかによって変わります。障害者雇用促進法第36条の2と第36条の3は、事業主に対し、募集や採用のときと雇い入れた後に、障害の特性に配慮した必要な措置を講じることを義務づけています(過重な負担となるときを除きます)。配慮を求めながら働きたい場合は、ハローワーク府中の「障害のある方のお仕事の相談・紹介」窓口(042-336-8652)でご相談いただけます。

障害者手帳がないと、就労系のサービスは使えませんか

厚生労働省の事務処理要領には「身体障害者を除き、支給決定又は地域相談支援給付決定を行うに際し、障害者手帳を有することは必須要件ではない」と記されており、精神障害のある方の確認方法として、年金証書等、自立支援医療受給者証(精神通院医療に限る)、医師の診断書なども挙げられています。ただし、府中市のページには手帳をお持ちでない場合の書類までは記載がありませんので、どの書類で確認してもらえるかを障害者福祉課(042-335-4022)におたずねください。

訪問看護は、就労の相談にも乗ってもらえますか

訪問看護は就労支援の事業所ではありませんので、お仕事のご紹介や、働けるかどうかの判断はしておりません。お手伝いできるのは、生活リズムや服薬を整えること、調子の変化をご本人の同意を得たうえで主治医にお伝えすること、そして就労の相談先をご案内することまでです。働き始めてからも訪問を続けることはできますので、生活が変わる時期の支えとしてお使いいただけます。

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