
うつ病で家族が休職してから、しばらく経ちました。診断が出たときは「休めばよくなる」と思っていたのに、思ったほど回復のきざしが見えない。家では横になっている時間が長く、こちらから声をかけても返事が短い。仕事のこと、お金のこと、これからのことを考えると、夜になっても眠れない。そんな日が続いていませんか。
この記事は、うつ病で休職している方を支えているご家族に向けて書いています。本人にどう接するかではなく、支えている側が倒れないために何ができるかを中心に整理しました。あわせて、ご家族だけで相談できる公的な窓口を、府中市と多摩地域のものを中心に、それぞれの公式情報を確認したうえでご紹介します。
先にお伝えしておきます。この記事は「訪問看護を使ってください」というご案内ではありません。ご家族が今いちばん必要としているのは、看護の契約ではなく、休む時間や話せる相手であることも多いからです。公的な相談窓口のほうが合う場合もありますし、私たちが合わないこともあります。その前提で、選ぶための材料をお伝えします。
なお、うつ病そのものの特徴や、ご本人への声のかけ方については、うつ病の人を、家でどう支える?|知っておきたい基礎知識と、本人・家族にできること【Vol.44】で扱っています。基礎の部分はそちらにゆずり、この記事では休職期のご家族に絞ってお話しします。
休職中のご家族に、疲れを感じていませんか
「疲れた」と思ってしまう自分に、うしろめたさを感じている方もいらっしゃいます。病気なのは本人なのだから、自分が弱音を吐くのは筋違いだ。そう思って、口に出さずにいる方もいます。
けれど、休職期のご家族が消耗するのには理由があります。がんばりが足りないからでも、愛情が足りないからでもありません。うつ病の療養は、入院して誰かが代わりに見てくれる形ではなく、家という生活の場で、日常と地続きのまま続いていくものです。看護でいえば二十四時間の見守りに近い状態が、交代要員のいないまま何か月も続くことになります。疲れが出るのは、むしろ自然なことです。
まず、「疲れている」と自分で認めるところから始めてください。それは本人を見放すことでも、支える気持ちがなくなったことでもありません。
うつ病の休職期、ご家族が消耗しやすい理由
休職期のご家族の状況を整理すると、いくつか共通する消耗のかたちが見えてきます。
- 回復に波があり、その落差に振り回される。調子のよい日があると期待が生まれ、翌日また動けなくなると落胆する。この上下が何度も繰り返されます
- いつまで続くのかが見えない。骨折のように「あと何週間」と示されるものではないため、見通しの立たなさが不安を長引かせます
- 役割に区切りがない。勤務のように終業時刻がなく、家にいる限りずっと気を配る状態が続きます
- 収入や将来の不安が同時にのしかかる。看護の負担と生活設計の心配が、同じ人に重なります
- 弱音を言う相手がいない。本人には言えず、職場では話しづらく、親族には心配をかけたくない。結果として、ひとりで抱えることになります
ここに挙げたもののうち、いくつ当てはまるでしょうか。当てはまる数が多いほど、あなたの疲れは「気の持ちよう」ではなく、置かれている状況からくるものだと考えたほうが実際に近いはずです。
「休職中なのに何もしていない」ように見えるとき
ご家族がいちばん揺れるのが、この場面ではないでしょうか。日中は寝ていて、起きてきても動画を見ているだけ。散歩に誘っても断られる。それなのに夜は眠れないと言う。「このまま何もしないでいて、本当に戻れるのだろうか」と焦る気持ちが出てきます。
ここで一度、立ち止まっていただきたいことがあります。主治医から休職のための診断書が出ているということは、いま休むことが治療の方針に含まれていると考えられます。動けていないように見える時期が、方針から外れているとは限りません。
とはいえ、ご家族が「これは休養なのか、悪化なのか」を判断するのは簡単ではありませんし、その判断をご家族が引き受ける必要もありません。気になる変化があるときは、次の受診でそのまま主治医に伝えてください。伝えるときは、評価をつけずに事実だけを並べると届きやすくなります。
- 「先週は昼に起きていましたが、今週は夕方まで起きてきません」
- 「食事の量が、以前の半分くらいになっています」
- 「お風呂に入る回数が、週に一回程度に減っています」
「怠けているように見える」ではなく、「起きる時間が変わった」と伝える。この置き換えだけで、伝えるほうの気持ちの負担も少し軽くなります。
がんばってきたご家族へ、自分を責めなくてよい理由
「あのとき無理をさせたから」「もっと早く気づいていれば」。そう振り返る方もいらっしゃいます。けれど、うつ病になった原因を家族の関わりだけで説明できることは、ほとんどありません。仕事の状況、体の状態、その時期に重なった出来事など、いくつもの要素が関わります。
そしてもうひとつ。ご家族が回復の速度を上げる責任を負っているわけではありません。よい声かけをすれば早く治り、失敗すれば長引く、という単純なものではないのです。ご家族の役割は、治療の担い手になることではなく、生活が続く場を保ちながら、必要なときに専門職につなぐことです。
疾患を問わず、支える側が限界に近づいたときの考え方については、家族が「もう限界」と思ったとき|共倒れしないために知っておきたい”選択肢”【Vol.53】でも整理しています。
共倒れしないために大切な5つのこと
大きな決断ではなく、今日から動かせるところから挙げます。
1. 本人のことを考えない時間を、一日のなかに置く
十分でも十五分でもかまいません。散歩でも、コーヒーを飲むだけでも構いません。大事なのは長さではなく、その時間は考えなくてよいと決めておくことです。ずっと気を張っている状態には、体力の面からも終わりが必要です。
2. 家事や声かけの水準を、下げてよいと決めておく
療養中だからこそ栄養のあるものを、と考えて毎食作り続けると、先に倒れるのは作る側です。惣菜や冷凍食品を使う日を最初から予定に入れてください。掃除の回数も、この時期は減らして構いません。長く続けることのほうが、水準を保つことより優先されます。
3. 回復の判定役を、家族が引き受けない
よくなっているのか、悪くなっているのか。この判断を毎日ご家族が背負うと、消耗はとても大きくなります。判断は主治医や支援者に渡し、ご家族は気づいたことを事実のまま伝える役に絞る。役割を減らすことが、そのまま負担を減らすことにつながります。
4. ご家族自身の相談先を、本人とは別に持つ
本人の主治医は、あくまで本人の治療にあたる医師です。ご家族の疲れを継続的に受けとめる立場ではありません。ご家族には、ご家族の相談先が別に必要です。次の章で、公的な窓口をご紹介します。
5. 支える人をひとりに集中させない
同居のご家族ひとりに全部が乗っている状態は、長く続きません。離れて暮らすきょうだいに買い物だけ頼む、通院の付き添いだけ交代してもらうなど、小さく分けて渡すことから始めてください。全部を任せる相手を探そうとすると、たいてい見つかりません。
ご家族だけで話せる場所は、府中市にもあります
ご本人が一緒でなくても、ご家族だけで相談できる公的な窓口があります。いずれも公式の案内を確認したうえで掲載しています。受付時間や進め方は変わることがありますので、利用の前にご確認ください。
東京都多摩府中保健所(精神保健福祉相談)
東京都の案内には「ご本人、ご家族、関係者の方からのご相談をお受けしています」と明記されています。電話は042-362-2334です。専門医による相談は予約制で、事前に地区担当の保健師に相談する流れが案内されています。受付時間は保健所にご確認ください。
府中市 保健センター(健康推進課 成人保健係)
こころやからだの相談窓口として、電話042-368-6511が案内されています。受付は平日8時30分から17時(正午から13時は当番職員の対応)です。
東京都立多摩総合精神保健福祉センター
多摩地域全域(23区、島しょ以外)を担当する都の機関です。相談電話は042-371-5560、受付は土曜日、日曜日、祝日を除く午前9時から午後5時と案内されています。
働く人の「こころの耳電話相談」(厚生労働省)
働く方の心の健康に関する相談窓口で、対象として「全国の働く方やその家族、企業の人事労務担当者の方々」と明記されています。休職という文脈では相談しやすい窓口です。電話は0120-565-455、受付は平日17時から22時、土日は10時から16時(祝日、振替休日、年末年始を除く)。メールとSNSでの相談も案内されています。
なお、ご本人がまだ受診にいたっていない段階でのご家族の動き方については、精神科訪問看護は家族だけで相談できる?本人が受診していないときの進め方【Vol.61】で詳しく扱っています。
傷病手当金や職場との調整は、誰に相談すればよいか
休職が続くと、収入の不安が出てきます。健康保険には傷病手当金という給付があり、全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内では、支給される条件として次の4つが挙げられています。
- 業務外の病気やケガで療養中であること
- 療養のための労務不能であること
- 4日以上仕事を休んでいること
- 給与の支払いがないこと
支給期間については「同一の傷病について、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月」と案内されています。
ただし、加入している健康保険が協会けんぽなのか、勤務先の健康保険組合なのかによって、手続きの窓口も案内も変わります。金額や個別の可否については、加入している健康保険と勤務先に直接ご確認ください。職場の休職規程や産業医との面談の要否も、勤務先ごとに定めが異なります。
訪問看護ステーションは看護を提供する事業所であり、傷病手当金の手続きや職場との調整そのものを扱う立場ではありません。この点は、あいまいにせずお伝えしておきます。
訪問看護は、休職中のご家族にも関われますか
精神科の訪問看護は、主治医の指示書にもとづいて看護師などがご自宅にうかがう仕組みです。関わりの中心はご本人ですが、その場にご家族が同席されることも多く、ご家族からのご相談を看護のなかで受けとめるよう努めています。
ご家族にとっては、週に一度、家のなかに事情を知っている人が来るという点が、負担の分散につながることがあります。様子の変化を一緒に確認できるため、「これは主治医に伝えたほうがよいのか」を家族だけで抱え込まずに済む場面も出てきます。訪問看護で実際に行っている内容は、うつ病のご家族へ|訪問看護でやっている3つのことにまとめています。
一方で、訪問看護がいつでも最適とは限りません。ご本人が他人の来訪を負担に感じる時期もありますし、ご家族が必要としているのが看護ではなく休息であることもあります。その場合は、前の章の公的な窓口のほうが合うこともあります。
利用を考え始めたときの流れや費用の目安は、うつ病で訪問看護を受けるには|内容・料金・始め方を看護師が解説(府中市)をご覧ください。また、府中市とその周辺には訪問看護ステーションが複数あります。事業所によって得意とする領域や訪問できる曜日は異なりますので、当ステーションだけでなく、ほかの事業所もあわせてご検討ください。
なお、診断名が適応障害の場合に特有の悩み(家では元気そうに見える、復職の時期をどう考えるか)については、適応障害で休職中の家族が疲れたとき|関わり方と復職の決め方【Vol.75】で扱っています。
おわりに|ひとりで背負わなくて大丈夫です
休職期は、ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、先が見えにくい時間です。その時間を、家族の努力だけで短くしようとしなくて大丈夫です。判断は専門職に渡し、手は分け合い、ご家族はご家族の時間を少しずつ取り戻してください。
今日の一歩としておすすめしたいのは、この記事でご紹介した窓口のうちひとつだけ、電話番号を控えておくことです。かけるのは今日でなくて構いません。「ここに相談できる」と分かっているだけで、抱えている重さは少し変わります。
なお、ご本人の安全が心配な状況(自分を傷つけるおそれがある、意識の状態がふだんと明らかに違うなど)では、迷わず主治医の医療機関にご連絡ください。夜間や休日で連絡がつかず、救急車を呼ぶか迷うときは救急相談センター(#7119)があります。命に関わると感じたときは119番へご連絡ください。
府中よりそい訪問看護ステーションでも、ご家族だけでのご相談を承ります。ご相談の時点で契約や利用を決めていただく必要はありません。お電話は042-508-3434、お問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくあるご質問
休職中の家族に「早く動いたほうがいい」と言ってはいけませんか
言ってはいけない言葉として一律に決まっているわけではありません。ただ、休職の診断書が出ている時期は、休むことが治療の方針に含まれていると考えられます。動く時期の見立ては主治医と相談する事柄ですので、ご家族が急がせる役を引き受けなくて大丈夫です。気になる変化があるときは、次の受診で事実のまま主治医にお伝えください。
家族が疲れていることを、本人に伝えてもよいのでしょうか
伝え方によります。「あなたのせいで疲れた」という形は、ご本人の自責を強めることがあります。一方で「今日は私も休ませてほしい」と、自分を主語にして具体的な範囲で伝える形であれば、生活の調整として共有しやすくなります。伝えることそのものを避け続けると、かえって限界まで我慢することになりやすいため、言い方を選んで少しずつ共有していくことをおすすめします。
共倒れしそうなとき、どこに相談すればよいですか
ご家族だけで相談できる公的な窓口があります。東京都多摩府中保健所の精神保健福祉相談は「ご本人、ご家族、関係者の方からのご相談をお受けしています」と案内されており、電話は042-362-2334です。働く方とその家族を対象とした厚生労働省のこころの耳電話相談(0120-565-455)もあります。府中市の保健センター(042-368-6511)でも、こころやからだの相談を受け付けています。
休職が長引いていますが、訪問看護は関係がありますか
精神科の訪問看護は、主治医が必要と判断して指示書を出した場合に利用できます。休職期間の長さだけで決まるものではありません。生活のリズムが崩れている、服薬や通院が続けにくい、ご家族の負担が大きいといった状況があるときは、次の受診で主治医にご相談ください。訪問看護が合うかどうかも含めて検討することになります。
傷病手当金の手続きは、訪問看護ステーションに聞けますか
傷病手当金の手続きは健康保険の給付に関する事務であり、訪問看護ステーションが扱う業務ではありません。申請の可否や金額、必要な書類については、加入している健康保険(全国健康保険協会または勤務先の健康保険組合)と勤務先にご確認ください。協会けんぽの案内では、支給の条件として業務外の病気やケガでの療養、療養のための労務不能、4日以上の休業、給与の支払いがないことの4つが挙げられ、支給期間は支給を開始した日から通算して1年6ヵ月と示されています。



