
訪問看護ベースアップ評価料を算定している事業所には、毎年8月に「賃金改善の報告」を出す手続きがあります。令和8年(2026年)8月は、令和8年度の診療報酬改定をはさんだ最初の報告時期にあたるため、出すものが2通になる事業所が出てきます。
さらに、令和8年7月30日に厚生労働省から「疑義解釈資料の送付について(その11)」が出され、報告書の様式が訂正されたことや、どの月の実績を書くのかが改めて示されました。この記事では、令和8年8月に提出する報告書について、対象月・様式・提出先を、厚生労働省と地方厚生局の公表資料をもとに整理します。
令和8年8月、訪問看護ステーションが出す報告書は「2通」あります
令和8年8月に提出が求められているのは、次の2つです。
- 令和7年度 賃金改善実績報告書(令和7年度に算定した分の、事後の報告)
- 令和8年度 賃金改善中間報告書(令和8年度に算定している分の、年度途中の報告)
疑義解釈その11の別添2 問6では、令和8年度診療報酬改定より前からベースアップ評価料等を届け出ていた事業所は、この2つを提出する必要があると示されました。あわせて、2通を1通のメールに添付して提出して差し支えないことも明記されています。別々に送らなければならない、という運用ではありません。
使う様式が2通で異なる点には注意が要ります。令和7年度の実績報告書は令和8年度改定「前」の様式、令和8年度の中間報告書は令和8年度改定「後」の様式を使うこととされています。同じ「賃金改善報告書」という名前でも、年度によって様式が別物です。
そもそも「賃金改善の報告」とは何をする手続きか
ベースアップ評価料は、看護職員をはじめとする職員の賃上げに使うことを前提に設けられた報酬です。そのため、届け出て算定するだけでなく、受け取った分がきちんと賃金の改善に回ったことを、あとから示す仕組みがセットになっています。
流れとしては、届出のときに賃金改善の計画を示し、年度の途中で中間報告書を出し、年度が終わったあとに実績報告書を出す、という3段構えになります。8月はこのうち中間報告と、前年度分の実績報告が重なる月にあたります。
評価料そのものの点数や区分については、訪問看護ベースアップ評価料2026の解説記事で整理しています。介護保険側の処遇改善加算とあわせた全体像は、医療保険と介護保険の「賃上げ二刀流」の記事もご覧ください。
どちらを出すのか、まず該当を確認する
2通とも必要な事業所もあれば、1通で足りる事業所もあります。ご自身の事業所がどれにあたるか、次の観点で確認してみてください。
- 令和7年度にベースアップ評価料を算定していた場合、令和7年度の賃金改善実績報告書が必要になります
- 令和8年6月以降にベースアップ評価料を算定している場合、令和8年度の賃金改善中間報告書が必要になります
- 令和8年度改定より前から届け出ていて、いまも算定している場合は、結果として2通になります
なお、疑義解釈その11が回答しているのは「令和8年度改定より前から届け出ていた事業所は何を出すか」という問いです。令和8年6月から新たに算定を始めた事業所の扱いはこの問答では触れられていません。まずは届出の控えで「いつから算定しているか」を確認したうえで、管轄の地方厚生局の事務所に、自分の事業所が何通出すのかを確認するのが確実です。
中間報告書が見るのは「令和8年6月分と7月分」
ここが最も間違えやすいところです。令和8年度の中間報告書で報告する賃金改善の実績期間は、令和8年6月分と7月分です。
疑義解釈その5(令和8年5月8日事務連絡)の別添2 問6では、令和8年6月から賃上げを行う場合は6月・7月分を報告し、同年4月から賃上げを行っていた場合であっても、4月・5月分ではなく6月・7月分の実績を報告すると明記されています。
「4月から賃上げしたのだから4月から書くのだろう」と考えると、報告期間がずれます。改定後の評価料に対応する報告である、と押さえておくと迷いにくくなります。
比べる2つの数字(令和8年7月30日の事務連絡で明確になった点)
報告書では、賃金が実際に改善したことを「2つの数字の差」で示します。令和8年度改定後のベースアップ評価料による収入を使って令和8年4月から賃金改善を実施した事業所について、疑義解釈その11の別添2 問7は、次の2つを比べるよう示しています。
- 賃金改善前の令和8年3月時点の給与体系を、同年6月に勤務している職員の賃金に当てはめた場合の、対象職員の基本給等総額
- 令和8年6月時点の、対象職員の基本給等総額
ポイントは、比較の基準になる給与体系が「3月時点」であること、そして当てはめる職員が「6月に勤務している職員」であることです。基準となる時点と、数える職員の時点が違います。ここを取り違えると差額が実態と合わなくなります。
なお、報告書に書く「ベースアップ評価料等による収入の実績額」には、継続的な賃上げの取組の実施に係る評価分は含めません(疑義解釈その5 別添2 問7)。本体点数のみを算定した場合に置き換えて計算することとされています。
様式が7月30日に訂正されました
令和8年7月30日付の「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」により、令和8年度の賃金改善中間報告書の様式が訂正されました。
すでに訂正前の様式で作業を進めていた場合はどうなるのか。疑義解釈その11の別添2 問8は、訂正前の様式により報告を行うことは可能と回答しています。ただし条件があり、訂正前の様式のうち「令和8年5月時点の給与体系を…当てはめた場合の対象職員の基本給等総額」とある欄を、「令和8年3月時点の給与体系を…当てはめた場合の対象職員の基本給等総額」と読み替えて取り扱う必要があります。
実務としては、これから作成に着手するのであれば、最新の様式をダウンロードして訂正後のもので作るほうが安全です。読み替えを前提にした記入は、担当者が替わったときや、あとから見返したときに誤りのもとになりやすいためです。
提出先・提出方法・期限
提出先は、事業所の所在地を管轄する地方厚生(支)局の都道府県事務所です。事務所ごとに専用のメールアドレスが設定されており、Excelファイルをメールで送る方法が案内されています。メールアドレスを持たないなどの事情がある場合は、書面での提出も可能とされています。
期限は管轄の局によって案内が異なる場合があります。たとえば関東信越厚生局の案内では、令和8年8月31日(月曜日)が提出期限とされています。東京都内の事業所であれば、担当は東京事務所です。
様式は、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」のページと、各厚生局のページで公開されています。訪問看護ステーション用の様式が、令和7年度算定分と令和8・9年度算定分のそれぞれに用意されていますので、年度と種別の取り違えにご注意ください。
提出期限や送付先メールアドレスは変更されることがあります。作業に入る前に、必ず管轄局の最新ページをご確認ください。
報告書を書くときに迷いやすい4つの場面
疑義解釈の各回で、実務上の迷いどころが個別に示されています。訪問看護ステーションに関係しやすいものを挙げます。
年度の途中で入職・退職した職員がいる場合。疑義解釈その3(令和8年4月20日事務連絡)別添2 問4では、雇用した月以降、または退職した月までは対象職員として取り扱って差し支えないとされています。報告書への記載は、対象職員として賃金改善を行った期間における基本給等の総額を、ベースアップ評価料の総算定月数で除した値を、1月当たりの基本給等総額に計上する扱いです。
対象職員の数が変わった場合。同じく問4では、対象職員の数に1割以上の変動があり、かつ改めて区分を算出した結果として区分が変わる場合には、算出を行った月内に地方厚生局長へ届出を行い、翌月から変更後の区分で算定することとされています。報告の前に、届出区分そのものの見直しが要らないかを確認しておくと安心です。
施設基準を満たさなくなった場合。疑義解釈その11の別添2 問1では、対象職員数が0人となるなどでベースアップ評価料の施設基準を満たさなくなった場合、速やかに地方厚生局長へ届出の変更を行う必要があり、変更の届出を行った日の属する月の翌月から算定を行わないこととされています。
法人本部所属の職員や、在籍型出向の職員がいる場合。疑義解釈その5の別添2 問8では、法人本部に所属する職員であっても、主として当該事業所における業務を行っている場合は対象職員に含まれるとされています。また問9では、在籍型出向について、出向先の対象職員として区分計算および報告書の作成を行い、収入は合議で適切に精算する扱いが示されています。
制度の全体像のなかでの位置づけ
令和8年度の改定では、賃上げ関係のほかにも、事業所側の事務に影響する見直しが入っています。書面掲示のウェブ掲載については訪問看護ステーションの掲示義務の記事で、訪問看護物価対応料の区分については物価対応料1と2の違いの記事で扱っています。改定時点での賃上げ対応の全体像は、賃上げ対応の解説記事もあわせてご覧ください。
当ステーションが届け出ている施設基準等については、施設基準等のご案内のページに掲示しています。
賃上げの手続きは、在宅を続けるための手続きでもあります
報告書の作成は、正直なところ手間のかかる作業です。数字を拾い、様式を確認し、期限に間に合わせる。現場を回しながらの事務は、どこの事業所でも軽くはないと思います。
それでもこの仕組みが置かれているのは、賃上げが実際に職員に届いたかどうかを確かめるためです。在宅の看護は、続けられる人がいて初めて続きます。処遇が整うことは、利用者さんやご家族にとっても、来週も再来週も同じ人が来てくれるという安心につながります。手続きそのものは事務でも、その先にあるのは在宅の継続性です。
なお、この記事は公表されている事務連絡と厚生局の案内をもとに整理したものです。個別の事業所でどの様式をどう記入するかの最終的な判断は、管轄の地方厚生局の事務所にご確認ください。
よくあるご質問
令和8年8月に出す報告書は1通ですか、2通ですか?
令和8年度診療報酬改定より前からベースアップ評価料等を届け出ていた事業所は、令和7年度の賃金改善実績報告書と令和8年度の賃金改善中間報告書の2通が必要とされています(疑義解釈その11 別添2 問6)。2通を1通のメールに添付して提出して差し支えない、とされています。令和8年6月から新たに算定を開始した場合の扱いはこの問答では触れられていないため、管轄の地方厚生局の事務所にご確認ください。
中間報告書は4月・5月分の実績を書くのですか?
いいえ。令和8年度の賃金改善中間報告書で報告するのは、令和8年6月分と7月分の賃上げ実績です。4月から賃上げを行っていた場合であっても、4月・5月分ではなく6月・7月分を報告する必要があるとされています(疑義解釈その5 別添2 問6)。
訂正前の様式で作ってしまいましたが、出し直しでしょうか?
疑義解釈その11 別添2 問8では、訂正前の様式により報告を行うことは可能とされています。ただし、令和8年度改定後のベースアップ評価料による収入を用いて令和8年4月から賃金改善を実施した場合は、訂正前様式の「令和8年5月時点の給与体系」の欄を「令和8年3月時点の給与体系」と読み替えて取り扱う必要があります。これから作成する場合は、最新の様式で作るほうが誤記を避けやすいと考えられます。
提出先はどこですか。メールでないと受け付けてもらえませんか?
提出先は事業所の所在地を管轄する地方厚生(支)局の都道府県事務所で、事務所ごとの専用メールアドレスにExcelファイルを送る方法が案内されています。メールアドレスを持たないなどの事情がある場合は、書面での提出も可能とされています。具体的な宛先と期限は管轄局のページでご確認ください。
対象職員が年度の途中で入れ替わった場合はどう書きますか?
疑義解釈その3 別添2 問4では、雇用した月以降または退職した月までは対象職員として取り扱って差し支えないとされています。報告書への記載は、対象職員として取り扱って賃金改善を行った期間における基本給等の総額を、ベースアップ評価料の総算定月数で除した値を、1月当たりの基本給等総額に計上する扱いです。あわせて、対象職員数に1割以上の変動があり区分が変わる場合は、届出区分の変更が必要になります。
お問い合わせ
府中よりそい訪問看護ステーションは、東京都府中市を中心に精神科訪問看護を行っています。訪問看護のご利用や連携についてのご相談は、お問い合わせページまたは電話(042-508-3434)で承っています。対応エリアは対応エリアのページでご確認いただけます。
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出典(すべて公的機関)
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その11)」令和8年7月30日事務連絡
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その5)」令和8年5月8日事務連絡
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その3)」令和8年4月20日事務連絡
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」
- 関東信越厚生局「ベースアップ評価料に係る『賃金改善実績報告書』及び『賃金改善中間報告書』について」



