【Vol.52】認知症の人を、家でどう支える?|「できること」を奪わない関わりと、本人・家族にできること|府中よりそい訪問看護


認知症の人を家でどう支える 府中よりそい訪問看護

「何度も同じことを聞く」その不安は、ひとりで抱えなくて大丈夫です

「さっき話したことを、また聞いてくる」

「財布をどこに置いたか、いつも探している」

「料理の手順が、前よりあやしくなってきた」

年齢のせいかな、と思いながらも、どこか落ち着かない。そんなご家族からのご相談が、府中よりそい訪問看護ステーションにも届きます。

はじめにお伝えしたいことがあります。認知症は、「何もわからなくなってしまう病気」ではありません。記憶や段取りが苦手になっても、その人の感情は最後まで生きています。うれしい、かなしい、恥ずかしい、安心したい。その気持ちは、認知症になっても変わりません。

この記事は、精神科・認知症ケアに取り組む訪問看護師が、認知症の方を「家でどう支えるか」を、ご本人とご家族の両方の目線でまとめた 疾患シリーズの第6回 です(うつ病・双極性障害・不安障害・統合失調症・発達障害に続きます)。

府中よりそい訪問看護ステーションは、認知症ケアに力を入れる医療顧問の青栁先生と連携しながら、ご本人の暮らしとご家族の毎日を支えています。

認知症とは、どんな状態でしょうか

認知症の症状は、大きく2つに分けて考えるとわかりやすくなります。

ひとつは、脳の働きが低下することで直接起こる 中核症状。もうひとつは、その中核症状に、ご本人の性格や置かれた環境、不安が影響して現れる 行動・心理症状(BPSD。以前は「周辺症状」と呼ばれました) です。

主な中核症状 には、次のようなものがあります。

  • もの忘れ(記憶障害):新しいことを覚えておくのが難しくなる
  • 見当識障害:日付や時間、今いる場所、人との関係がわかりにくくなる
  • 実行機能障害:料理や買い物など、段取りを立てて進めることが難しくなる
  • 理解・判断力の低下 など(あらわれ方は人によってさまざまです)

行動・心理症状(BPSD) には、物盗られ妄想、外に出て戻れなくなる「ひとり歩き(徘徊)」、昼夜の逆転、興奮・怒りっぽさ、不安や気分の落ち込み、幻視などがあります。

ここが大切なところです。中核症状とちがって、行動・心理症状は、周りの関わり方や生活環境、ご本人の安心感によって、強まったり、やわらいだりします。つまり、対応の工夫でらくになる部分があるということです。

認知症には、いくつかのタイプがあります

認知症には、主に4つのタイプがあるといわれます。

  • アルツハイマー型:認知症の中で最も多いタイプ。もの忘れから始まることが多い
  • レビー小体型:実際にないものが見える「幻視」、手の震えや動きにくさ(パーキンソン症状)、調子に良い時・悪い時の波(ムラ)がみられる
  • 血管性:脳梗塞や脳出血が背景にあり、できること・できないことが入りまじる「まだら」の特徴が出やすい
  • 前頭側頭型:性格や行動の変化(人柄が変わったように見える、感情の抑えがききにくくなる、社会的なふるまいが難しくなる)が目立つことがある

国の最新の推計(2022年)では、65歳以上の高齢者のうち、認知症のある方は約12%。およそ8人に1人にあたります。その前の段階である軽度認知障害(MCI)も合わせると、高齢者の約3人に1人が、認知機能に関わる状態にあるとされています。けっして、特別なことではありません。

家で起きやすいこと

ご家族がいちばん戸惑い、疲れてしまうのが、毎日の暮らしの中で起こる出来事です。

  • 同じ話や質問を、何度も繰り返す
  • 「財布を盗られた」と、いちばん身近な家族を疑ってしまう(物盗られ妄想)
  • 出かけたまま、帰り道がわからなくなる
  • 夜眠れず、昼夜が逆転する
  • ささいなことで怒り出す、興奮する

なかでもつらいのが、いちばん一生懸命に介護している家族が、疑われたり、強い言葉をぶつけられたりすることです。「あんなにやってあげているのに」と、悲しくなって当然です。

でも、これらは「困らせよう」としてやっていることではありません。ご本人もまた、自分の中で起きている変化に、いちばん不安を感じています。

ご本人へ ── できることを、奪わないで

認知症のある方は、できないことが増えていく不安と、混乱の中にいます。

そんなとき、いちばんつらいのは、間違いをいちいち正されること です。「ちがうでしょ」「さっきも言ったでしょ」と言われるたびに、自信を失い、気持ちが沈んでいきます。

ご本人を支えるうえで大切なのは、「できること」を奪わないこと。多少時間がかかっても、うまくいかなくても、ご本人ができることはご本人にまかせ、さりげなく後ろから支える。それだけで、その人らしい時間は守られます。

ご家族へ ── 全部を、ひとりで背負わなくて大丈夫です

ここは、いちばんお伝えしたいところです。

  • 間違いを、いちいち訂正しなくて大丈夫です。 「そうだったね」と受け流すほうが、おたがいに穏やかでいられます。
  • 「またか」とイライラしてしまう自分を、責めないでください。 それは、あなたが毎日向き合っている証拠です。
  • 介護を、ひとりで抱え込まないでください。 家族の誰か、サービス、地域の窓口。頼れる先は、必ずあります。
  • 休むことは、逃げではありません。 ショートステイやデイサービスを使ってご家族が休む「レスパイト」は、介護を続けていくために必要な、正しい選択です。
  • そして、認知症は、ご家族の関わり方が原因で起こる病気ではありません。 「自分のせいかも」と思う必要は、まったくありません。

完璧な介護を目指さなくて大丈夫です。あなたが倒れてしまっては、いちばん困るのはご本人です。あなたが少し休めることが、結局はご本人のためにもなります。

薬と通院を、続けていくこと

認知症の薬は、病気そのものを治す薬ではなく、症状の進行をゆるやかにしたり、症状をやわらげたりすること を目的としています。

どの薬を使うかは、認知症のタイプや進み具合に応じて医師が判断します。同じ薬が、すべての方に合うわけではありません。薬は効果や体への影響を見ながら量を調整していくので、自己判断でやめたり、量を増やしたり減らしたりせず、必ず主治医にご相談ください

近年では、ごく早期の段階の一部の方を対象に、病気の進行を抑えることを目指す新しい薬も登場しています。ただし、すべての方や、進行した段階の方が使えるわけではなく、専門の医療機関で診断を受けたうえで判断されます。

不安や興奮、ひとり歩きといった行動・心理症状(BPSD)には、まず薬よりも、生活環境を整えることや、関わり方の工夫(安心できる声かけ・落ち着ける環境づくり)から取り組むのが基本 とされています。環境を整えても難しいときに、医師の判断で薬を使うこともありますが、その場合も環境の工夫は続けていくことが大切です。

訪問看護で、できること

精神科訪問看護は、ご本人の暮らしの場に看護師がうかがい、健康と生活の両方を支える仕事です。認知症の方には、たとえばこんなことができます。

  • 血圧や体調、食事・睡眠など、暮らしの中の変化を見守る
  • 薬を続けられるよう、飲み方の工夫をいっしょに考える
  • ご本人が安心して過ごせるよう、関わり方や声かけをいっしょに整える
  • ご家族の相談相手になる ── 困りごとや不安を、ひとりで抱えなくていいように
  • 主治医や、医療顧問の青栁先生と連携しながら、状態の変化に対応する

訪問看護は、ご本人だけでなく、支えるご家族も含めて支える ことを大切にしています。

なお、精神科訪問看護を始めるには、主治医の指示書(訪問看護指示書)が必要です。府中よりそい訪問看護ステーションでは、指示書のご依頼から、かかりつけの先生とのやりとりのお手伝いまで、いっしょに進めます。

おわりに ── 気になったら、まず相談を

「これって認知症かな」と思ったとき、いちばん身近な相談先が 地域包括支援センター です。高齢者の介護・福祉・健康の総合相談窓口で、認知症の相談にも応じてくれます。府中市内には11か所あり、お住まいの地区ごとに窓口が分かれています(くわしくは府中市の公式ページをご覧ください)。

このほかにも、

  • 認知症初期集中支援チーム:認知症が疑われる方やご家族のお宅を訪問し、はじめの半年ほど集中的に支援してくれます
  • 認知症疾患医療センター:診断や専門的な相談を行う、指定された医療機関です
  • 認知症カフェ(オレンジカフェ):ご本人・ご家族・地域の人が、気軽に集まって交流できる場です

認知症は、介護保険サービスの対象です。要介護認定を受けると、訪問介護やデイサービスなどが利用できます。

認知症は、ゆっくりと、長くつき合っていく病気です。だからこそ、ご家族だけで抱え込まず、早めに、いろいろな手を借りてください。私たちも、その「いろいろな手」のひとつです。

府中市で認知症の方の在宅ケアにお悩みの方、訪問看護をご検討中の方は、お気軽にお電話ください。

府中よりそい訪問看護ステーション

TEL:042-508-3434(受付 9:00-18:00)

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