昼夜逆転が続くとき、家族はどうする?|精神疾患のある家族の生活リズムと戻し方の考え方【Vol.82】


昼夜逆転が続くとき家族はどうするか。背景・起こすかどうか・戻し方の3つの視点をまとめた図

「昼間はずっと寝ていて、夜中に起きて動いている」「朝、何度声をかけても起きない」。精神疾患のあるご家族と暮らしていて、昼夜が逆転してしまったというご相談をいただくことがあります。

生活の時間帯がずれると、食事も会話も通院もかみ合わなくなります。起こしたほうがいいのか、そっとしておいたほうがいいのか。判断がつかないまま、ご家族のほうが先に消耗してしまうことも少なくありません。この記事では、昼夜逆転がなぜ起きるのか、家族が何をして何をしないほうがよいのか、どこから専門職に相談してよいのかを、厚生労働省の資料をもとに整理しました。

昼夜逆転は、怠けているから起きているわけではありません

まず前提として、昼夜逆転は「気持ちの問題」や「だらしなさ」だけで説明できるものではありません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、寝起きのタイミングがずれる状態を概日リズム睡眠・覚醒障害として取り上げ、社会的に望ましい寝起きのタイミングと実際の寝起きのタイミングがずれることで社会生活に支障をきたす睡眠障害だと説明しています。

同ガイドは、この状態のひとつである睡眠・覚醒相後退障害について「睡眠・覚醒相後退障害は思春期や若年成人に多くみられ、極端な遅寝・遅起きを特徴とします」と述べ、続けて「眠るべき時刻になっても寝つけず、さらに起きるべき時刻に起きられないため、定刻に登校・出勤ができなくなります」と説明しています。起きられないことが、意思の強さではなく体の仕組みの問題として記述されています。

ご家族が「甘えさせているのではないか」とご自身を責めてしまう場面をよく見ます。まず、その前提を一度置いてから読んでいただければと思います。

「眠れない」と「時間帯がずれている」は、別のこと

ここは混同されやすいところです。夜に眠れずに苦しいのが不眠、眠れてはいるが寝起きの時間帯が世の中とずれているのが昼夜逆転です。前掲のガイドも「睡眠・覚醒相後退障害は入眠困難のため、睡眠・覚醒相前進障害は早朝覚醒のため、しばしば不眠症と見誤られることがあります」と注意を促しています。

この2つは、家族の関わり方も相談の入り口も変わります。ご本人が眠れないつらさを訴えている場合は、不眠が続く家族へのほうが近い内容です。一方で、本人は眠れてはいて、困っているのは主に周囲との時間のずれ、という場合はこの記事の内容が当てはまります。両方が混ざっていることもあります。

なぜ、昼夜が逆転するのか

体内時計は、光や食事のタイミングで日々調整されています。同ガイドは、光の環境について「起床後に朝日の強い光を浴びることで体内時計はリセットされ睡眠・覚醒リズムが整い、脳の覚醒度は上昇します」と説明し、朝に光を浴びると体内時計は前進(早寝・早起きの方向)し、夕方以降に光を浴びると後退(遅寝・遅起きの方向)すると整理しています。朝食を抜くことも、体内時計を後退させる方向に働くと同ガイドは述べています。

ここに病気の影響が重なります。精神疾患では発症の初期から睡眠の問題が出やすく、症状の再燃・再発のリスクにも関わることが同ガイドの冒頭で指摘されています。日中の活動が減れば浴びる光の量が減り、夜に眠くならず、朝は起きられない。その結果さらに日中の活動が減る、という循環が起きやすくなります。

高齢のご家族の場合は、また事情が異なります。同ガイドは「認知症になると、体内時計の機能変化がさらに進む傾向にあり、昼夜のメリハリがさらに弱まり、活動パターンが完全に昼夜逆転してしまう人もいます」と述べています。認知症が疑われる段階での受診の進め方は、認知症かも、でも病院を嫌がる親にで別に整理しています。

「起こすべきか、寝かせておくべきか」の分かれ道

ご家族から最も多いのがこのご質問です。一律の正解はありませんが、判断の材料は分けて考えられます。

起こす方向に寄せてよいのは、ご本人が戻したいと思っているとき、通院や仕事など動かせない予定があるとき、そして起こしたあとに日中の活動が用意できるときです。前掲のガイドは、睡眠・覚醒相後退障害への対応として「朝に日光を浴びることが重要です。朝起きられないケースでは、家族が朝にカーテンを開けるなどして、できるだけ太陽の光を浴びられるようにしましょう」と、家族ができることをはっきり書いています。カーテンを開けるところまでは、ご家族の手で届く範囲です。

逆に、いったん置いたほうがよいのは、ご本人が戻すことを望んでいないとき、体調が明らかに悪いとき、起こしても日中にやることがなく結局また眠ってしまうときです。同ガイドは、無理に起きた場合について「無理に起きても、強い眠気や倦怠感など、心身の不調が生じます」と述べています。起こすこと自体が目的になると、ご本人にもご家族にも消耗だけが残ります。

迷ったときは、今日中に全部戻すのではなく、診察日の朝だけは起きられるようにするというように、範囲を小さく決めておくほうが続きます。

やってしまいがちな3つのこと

よかれと思ってしたことが、かえって時間帯を固定してしまうことがあります。

1. 一気に戻そうとする。同ガイドは、1日あたりに修正できる体内時計の幅は数分から数時間程度だと述べています。「明日から朝7時」と決めても、体のほうが追いつきません。30分ずつ動かすくらいの見込みで構えるほうが、結果として早いことがあります。

2. 明け方の光を浴びせてしまう。これは注意が要る点です。同ガイドは「重症例では明け方に眠りにつき、夕方近くに起床する場合があります」としたうえで、そのようなケースでは寝つく前の明け方の光でさらに寝入るのが遅れる可能性があるため、この時間帯の光を浴びないよう注意するべきだと述べています。夜通し起きている人にとっての明け方の光は、朝の光としては働かないことがあります。今がご本人にとっての何時なのかを見てから、カーテンを開ける時間を決めてください。

3. 家族が生活を全部合わせてしまう。夜中に起きているご本人に付き合って、ご家族まで昼夜逆転していく例があります。心配だからこその行動ですが、家庭内に「起きている時間の基準」がなくなると、戻すときの手がかりも消えます。ご家族の側の生活時間は、できる範囲で保っていただくほうがよいと考えています。

戻すなら、「寝る時刻」ではなく「起きたあと」から

寝る時刻を早めようとしても、眠くならないものは眠くなりません。動かしやすいのは、起きたあとの過ごし方のほうです。

順番としては、起床後にカーテンを開けて光を入れる、朝食を食べる(少量でも構いません)、日中に外に出る用事を1つ作る、夜は照明とスマートフォンの明るさを落とす、という流れになります。いずれも前掲のガイドが挙げている考え方です。日中の光と朝食は体内時計を前に動かす方向に、夜遅い時間の強い光や夜食は後ろに動かす方向に働きます。

すべてを一度に始める必要はありません。ご家庭で無理なく続けられるものを1つか2つ選ぶところからで十分だと考えています。なお、これらは生活の工夫であって、治療の代わりになるものではありません。同ガイドも、対処しても改善しない場合について「症状が改善しない場合は、医師に相談してください」と述べています。

昼夜逆転が続くと、生活のどこに影響が出るか

時間帯のずれは、それ自体よりも、連鎖して起きることのほうが困りごとになります。

通院の予約に間に合わなくなると、処方が切れ、服薬が途切れます。食事の時間がずれると、家族と同じ食卓を囲む機会が減り、様子の変化に気づきにくくなります。日中に人と会わない状態が続くと、外出そのものの負担が上がっていきます。訪問看護やデイケアなど、日中に組んだ支援も入りにくくなります。

ですので、ご家族がまず優先して守るとよいのは、生活全体の時間割ではなく、通院と服薬が途切れないことです。ここが崩れると、立て直しに時間がかかります。入退院を繰り返している場合の備え方は、精神科の入退院を繰り返すときにまとめています。

お薬のことが気になるとき|主治医への伝え方

睡眠薬を増やしてもらえば戻るのではないか、というご相談もいただきます。薬の内容は主治医の判断になりますが、判断の材料になる情報をご家族が持っていることは少なくありません。

診察のときは、次の4点をメモにして渡すと伝わりやすくなります。何時に寝て何時に起きているか(この1週間の実際の時刻)、日中に眠っている時間の長さ、いつごろからずれ始めたか、通院や食事にどんな支障が出ているか。時刻を並べるだけで十分です。解釈や判断を添えていただく必要はありません。

なお前掲のガイドは、「不眠症は、うつ病や不安症をはじめとした様々な精神疾患の初期症状、もしくは併存症として現れることが多くあります」としたうえで、「精神疾患が併存する場合には、不眠症のみを焦点とした治療では十分に改善しない場合も多く、精神疾患の悪化を防ぐためにも医師の助言を求めることをお勧めします」と述べています。睡眠だけを切り離して考えないほうがよい、ということだと受け止めています。服薬そのものが難しくなっているときは、薬を飲まないとき、家族はどうする?もあわせてご覧ください。

睡眠と生活リズムは、精神科訪問看護が毎回見ている項目です

昼夜逆転を訪問看護に相談してよいのか、というご質問をいただくことがあります。相談していただける内容です。

厚生労働省の通知「訪問看護計画書等の記載要領等について」(令和8年3月27日・保医発0327第10号)は、精神科訪問看護の記録書に記入する事項として、食生活、清潔、排泄、睡眠、生活リズム、部屋の整頓などを挙げています。睡眠と生活リズムは、その日の様子として毎回記録している項目そのものです。特別な相談ではなく、日常的に扱っている領域だとお考えください。

実際の訪問では、何時に寝て何時に起きたかをご本人と一緒に確認し、日中に何ができそうかを相談し、その内容を主治医に報告します。朝の時間帯に訪問を組めるかどうかは、ご本人の状態と枠の空き状況によります。生活の立て直しを一緒に考える相手が家の中にもう1人いる、という形になります。

身のまわりのことに手がつかなくなっているときの関わり方は、お風呂に入りたがらないとき、家族はどうする?でも整理しています。日中の活動が減ったまま長く続いている場合も、同じように相談していただけます。

ご家族自身の眠りが、削られていませんか

夜中の物音で目が覚める、朝は自分の仕事に出る、帰ってきたらまだ寝ている。この生活が続くと、ご家族の睡眠のほうが先に足りなくなります。

前掲のガイドは、睡眠不足が続くことによる健康への影響を広く挙げています。ご家族が倒れてしまうと、支える人がいなくなります。夜間の物音が気になる場合は寝室を分ける、耳栓を使う、夜中の対応は毎回ではなく決めた時間だけにするなど、ご自身の睡眠を守る工夫も同じくらい大切だと考えています。

働きながら支えているご家族の消耗については、うつ病で休職中の家族へでも触れています。

府中市で相談できる窓口

相談先は当ステーションに限りません。以下は各機関の案内に記載されている内容です。ご利用の際は、最新の受付時間を各機関にご確認ください。

府中市 健康推進課成人保健係(保健センター)|こころとからだの相談を受け付けています。電話042-368-6511(平日8時30分から17時)。

東京都多摩府中保健所 保健対策課 地域保健担当|電話042-362-2334(代表)。同保健所の案内では、精神保健福祉相談について、保健師がこころの健康や精神保健に関することについて本人・家族・関係者からの相談を受けると説明されています。予約制で専門医による相談も行われています。

地域生活支援センタープラザ|電話042-358-2288。精神障害のある方とそのご家族を対象に、生活相談などを行っています。

あわせて、急を要するときの窓口も控えておいてください。命にかかわる切迫した状況や意識がはっきりしないときは119番、救急車を呼ぶほどかどうか判断に迷うときは#7119(東京消防庁救急相談センター・多摩地区の一部の電話からつながらない場合は042-521-2323)、夜間や休日に精神科の受診先を探したいときは東京都精神科救急医療情報センター「ひまわり」(03-5272-0303)です。

よくある質問

昼夜逆転している家族を、無理にでも起こしたほうがよいですか

一律の正解はありません。ご本人が戻したいと思っているか、その日に動かせない予定があるか、起こしたあとに日中の活動が用意できるかで変わります。厚生労働省の睡眠ガイドは、無理に起きても強い眠気や倦怠感など心身の不調が生じるとしています。まずは、診察日の朝だけは起きられるようにするなど、範囲を小さく決める方法をご案内しています。

朝、カーテンを開けるだけでも意味はありますか

意味のある方法として挙げられています。同ガイドは、朝起きられないケースについて、家族が朝にカーテンを開けるなどしてできるだけ太陽の光を浴びられるようにしましょうと記載しています。ただし、明け方に寝入るほど大きくずれている場合は、その時間帯の光がかえって遅らせる方向に働くことがあるため、今がご本人にとっての何時にあたるかを見てから決めてください。

どのくらいで元に戻りますか

期間をお約束することはできません。同ガイドは、1日あたりに修正できる体内時計の幅は数分から数時間程度だと述べています。一度に大きく動かすことは難しいため、少しずつ動かす前提で考えていただくほうが現実的です。改善しない場合は主治医にご相談ください。

睡眠薬で昼夜逆転は治りますか

薬の内容や増減は主治医が判断します。同ガイドは、精神疾患が併存する場合、不眠症のみを焦点とした治療では十分に改善しない場合も多いとしています。ご家族からは、何時に寝て何時に起きているか、日中どのくらい寝ているか、いつからずれ始めたかといった事実を主治医にお伝えいただくのがよいと考えています。

精神科訪問看護は、昼夜逆転のことも相談できますか

相談していただけます。厚生労働省の通知では、精神科訪問看護の記録項目に睡眠と生活リズムが含まれています。訪問では、就寝と起床の時刻をご本人と確認し、日中の過ごし方を一緒に考え、主治医に報告します。訪問看護の利用は主治医が必要と判断することが出発点になるため、まずは主治医、または市の窓口にご相談ください。

お問い合わせ

府中よりそい訪問看護ステーションでは、府中市を中心に精神科の訪問看護を行っています。対応している地域は対応エリアでご確認いただけます。

初回のご相談は無料です。訪問の交通費はいただいていません。お問い合わせフォーム、またはお電話(042-508-3434・平日9時から18時)で承ります。ご本人がまだ受診していない段階で、ご家族だけでご相談いただくこともできます。

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