「死にたい」と言われたとき、家族はどうする?|受け止め方と相談窓口の使い分け【Vol.80】


「死にたい」と言われたときに家族ができること・緊急性の見わけ方・夜間休日の相談窓口をまとめた図

精神疾患のあるご本人から「死にたい」と言われたとき、ご家族はどう受け止めればよいのでしょうか。頭が真っ白になった、なんと返せばよいか分からなかった、というお声をうかがうことがあります。

この記事では、その言葉を聞いたときにご家族ができることと、避けたほうがよい対応、緊急性の見わけ方、そして夜間や休日にどこへ相談できるのかを整理しました。府中市で使える窓口と、公的な資料にもとづく考え方をまとめています。

9月10日から16日は、相談窓口が広く案内される期間です

この1週間は、自殺対策基本法という法律で定められた週間にあたります。同法第7条第2項は「自殺予防週間は九月十日から九月十六日までとし、自殺対策強化月間は三月とする」と定めており、第3項では、この期間に国と地方公共団体が啓発活動を広く展開するものとされています。

この時期は、市区町村や相談機関の窓口が広く案内される期間でもあります。ふだんは調べる余裕がない相談先を、落ち着いているうちに確認しておくのに向いた時期だと考えています。

まず、その場でできる3つのこと

「死にたい」という言葉を聞いたとき、正しい返し方を探そうとすると、かえって言葉が出なくなります。まずは次の3つで十分だと考えています。

1. 話をさえぎらずに、最後まで聞く。「そんなことを言わないで」と止めたくなるのは自然な反応ですが、いったん受け止めて聞くほうが、その後の話が続きやすくなります。「そう感じるくらい、しんどかったんだね」と、聞こえたままを言葉にして返すだけでも構いません。

2. その場を離れない。気の利いた言葉が見つからなくても、そばにいることそのものが対応になります。何も言わずに一緒にいる時間があってよいと考えています。

3. 「いつから」「どんなときに」を、責めない形で聞く。眠れているか、食べられているか、いつごろからその気持ちが強いか。事情を問い詰めるのではなく、体の状態を尋ねる形にすると、ご本人も答えやすくなります。

世界保健機関(WHO)がまとめ、厚生労働大臣指定法人である一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターが翻訳した「自殺予防を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識 2023年版」では、「するべきこと」として、どこにどのようにして助けを求めればよいかという正しい情報を提供すること、助けを求めることの大切さを伝えることが挙げられています。これは報道機関に向けた手引きですが、ご家族が身近な人に向き合うときにも通じる考え方だと受け止めています。

避けたほうがよい対応

よかれと思って出た言葉が、ご本人を黙らせてしまうことがあります。次のような対応は、いったん脇に置いてみてください。

説得しようとする。「そんなこと言うものじゃない」「あなたには家族がいるでしょう」という言葉は、ご本人にとっては「この話はしてはいけない」という合図に聞こえることがあります。話せなくなることのほうが、ご家族にとっては見えにくいぶん困ります。

原因を一つに決めつける。「仕事のせいだ」「あの人と別れたからだ」と理由を確定させると、そこが解決しないかぎり出口がないことになってしまいます。前掲のWHOの手引きでも、「自殺の原因を単純化したり、一つの要因に決めつけたりしない」ことが挙げられています。実際には、いくつもの事情が重なっていることのほうが多いと考えています。

約束を取りつけて終わりにする。「もう言わないと約束して」と求めると、その場は収まっても、次に苦しくなったときに言えなくなります。約束よりも、「またつらくなったら教えてほしい」と伝えるほうが続きます。

一人で抱える。ご家族だけで支えきろうとすると、支える側が先に持ちません。後半で相談先を整理しています。

「今すぐ」か「時間をかけて」か、緊急性の見わけ方

同じ「死にたい」でも、対応の急ぎ方は変わります。医療の判断はご本人を診ている主治医が行うものですが、ご家族が窓口を選ぶときの目安として、次の点があるかどうかを見てみてください。

意識がはっきりしない、けがをしている、行動が切迫していると感じる、といった状況があるときは、判断を待たずに救急の窓口が対象になります。一方で、気持ちのつらさは強いものの、会話ができて、日常の行動が保たれている場合は、翌日の受診や相談につなぐ形で間に合うことが多くあります。

迷ったときに「様子を見る」という選択をしなくてよいように、次の章の窓口を先に控えておくことをおすすめします。判断そのものを、ご家族が一人で背負う必要はありません。

夜間・休日は、この3つの窓口を使い分けます

電話をかける先は、状況によって分かれます。

119番(救急車)。命にかかわる切迫した状況、意識がはっきりしないとき、行動が差し迫っていると感じるときは、迷わず119番にお電話ください。精神科の対応が必要な場合も、消防が搬送先を調整します。

#7119(東京消防庁救急相談センター)。「救急車を呼ぶほどかどうか分からない」ときの相談窓口です。24時間対応で、救急車が必要かどうかの判断、応急処置の案内、医療機関の案内を受けられます。多摩地区の一部の電話からつながらない場合は、042-521-2323におかけください。

東京都精神科救急医療情報センター「ひまわり」(03-5272-0303)。夜間や休日に、精神科で受診できる医療機関を探したいときの案内窓口です。受付は平日17時から翌朝9時まで、土日祝は24時間です。医療相談ではなく、受診先の案内が中心の役割になります。

このほか、24時間・無料・匿名で話を聞く電話相談として、よりそいホットライン(0120-279-338)があります。府中市の窓口も含めた一覧は、府中市の精神科医療マップ|こころの相談・通院・在宅ケア・緊急時まで5カテゴリで網羅【Vol.37】にまとめています。冷蔵庫や電話の近くに貼っておけるよう、落ち着いているうちに書き出しておくと、いざというときに探さずにすみます。

ご家族自身も、ひとりで抱えないために

「死にたい」という言葉を聞いた側にも、消耗が残ります。眠れない、その言葉が頭から離れない、次に同じことを言われるのが怖い。これはご家族が弱いからではなく、それだけ重い言葉を受け止めたからだと考えています。

ご家族自身の相談先を持っておくことも、支え方の一つです。保健所や市の相談窓口は、ご本人だけでなくご家族からの相談も受けています。ご家族の消耗をやわらげる考え方は、ご家族のしんどさを、軽くする|認知の転換・セルフケア・SOSの出し先【Vol.36】で整理しています。

その後、どこへつなぐか

その場をしのいだあとに残るのが、「これからどうするか」です。

まず、主治医がいる場合は、次の受診を待たずに状況を伝えてよいと考えています。伝え方に迷うときは、いつ・どんなときに・どのくらいの頻度でその言葉が出たかを、短くメモにして持っていく形が現実的です。診察の場でご本人が話しにくいことも、メモであれば伝わります。お薬に関するご相談の伝え方は、薬を飲まないとき、家族はどうする?|精神疾患のある家族への声かけと主治医への伝え方【Vol.78】でも扱っています。

受診先がまだ決まっていない場合は、市の保健センターや保健所が入口になります。ご本人が受診をためらっている段階でも、ご家族だけで相談できます。

訪問看護は、こうした状態が続くときの選択肢の一つです。生活の場に定期的に人が入ることで、変化に気づける機会が増えます。ただし、訪問看護を使えばつらい気持ちがなくなる、とお約束できるものではありません。できるのは、様子を一緒に見ていくことと、必要なときに主治医や関係機関へつなぐことまでです。うつ病の方の訪問看護の内容や始め方は、うつ病で訪問看護を受けるには|内容・料金・始め方を看護師が解説(府中市)にまとめています。

あわせてお伝えしたいのは、事業所には得意な分野や体制の違いがあり、私たちが合わないこともある、ということです。合うかどうかは事業所の良し悪しよりも先に、人と人の間に起きることだと考えています。ほかの事業所の探し方は、訪問看護が合わないと感じたら|担当の変更と、事業所の変え方【Vol.73】で整理していますので、あわせてご覧ください。

よくある質問

家族から「死にたい」と言われたら、まず何をすればいいですか

話をさえぎらずに最後まで聞き、その場を離れないことから始めてください。気の利いた言葉は必要ありません。そのうえで、眠れているか、食べられているか、いつごろからその気持ちが強いかを、責めない形で尋ねてみてください。

「死にたい」と言われたとき、避けたほうがよい対応はありますか

説得して黙らせること、原因を一つに決めつけること、「もう言わない」と約束を取りつけて終わりにすることは、いったん脇に置くことをおすすめします。話せなくなることのほうが、あとから困る場面が増えます。

どのようなときに119番を検討すればよいですか

意識がはっきりしない、けがをしている、行動が切迫していると感じるときは、判断を待たずに119番にお電話ください。呼ぶかどうか迷う段階では、#7119(多摩地区の一部は042-521-2323)で相談できます。

夜間や休日に精神科の受診先が分からないときは、どこに相談できますか

東京都精神科救急医療情報センター「ひまわり」(03-5272-0303)が、受診先の案内窓口です。受付は平日17時から翌朝9時まで、土日祝は24時間です。話を聞いてほしいときは、よりそいホットライン(0120-279-338)が24時間・無料・匿名で対応しています。

「死にたい」という言葉が繰り返されるとき、訪問看護は相談先になりますか

選択肢の一つになります。訪問看護の利用は主治医が必要と判断することが出発点になるため、まずは主治医、または市の窓口にご相談ください。ご本人がまだ受診していない段階でのご相談も承っています。

お問い合わせ

府中よりそい訪問看護ステーションでは、府中市を中心に精神科の訪問看護を行っています。対応している地域は対応エリアでご確認いただけます。

初回のご相談は無料です。訪問の交通費はいただいていません。お問い合わせフォーム、またはお電話(042-508-3434・平日9時から18時)で承ります。

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