【Vol.26】大人の発達障害(ASD・ADHD)の訪問看護でやっていること|看護師が大切にしている3つのこと|府中市


大人の発達障害(ASD・ADHD)と訪問看護|窓辺の白磁器の花瓶とユーカリ・ノート・マグカップの水彩画アイキャッチ

「片付けられない、忘れてしまう、約束が守れない――そんな自分が嫌になることがある」
「人との会話で、何を言っていいかわからなくなる」
「がんばってきたけれど、ある日からだが動かなくなった」

府中市で精神科の訪問看護をしている私たちのもとには、大人になってから発達障害(ASD・ADHD)の診断を受けた方や、そのご家族から、こうしたご相談が寄せられます。

発達障害は「特性」であって、なくなるものではありません。
だからこそ、特性とどう付き合っていくか、暮らしのなかで一つずつ整えていくことが、安心して過ごせる毎日につながります。

このページでは、府中よりそい訪問看護ステーションが、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)のあるご本人に対して、毎回の訪問で大切にしていることを、3つのポイントにまとめてお伝えします。

大人の発達障害の訪問看護って、実際に何をしてくれるの?

「訪問看護」と聞くと、点滴や採血のような医療処置をイメージされる方が多いかもしれません。
でも、精神科の訪問看護がご本人と一緒にしていることは、もっと暮らしに寄り添ったものです。

大人の発達障害のある方への訪問看護では、たとえば次のようなことをご本人と一緒に取り組んでいきます。

  • その日の調子や困りごとを、いっしょに言葉にして整理する
  • 服薬を続けるための工夫を、ご本人のやり方に合わせて考える
  • 生活リズム(睡眠・食事・休息)を、無理のない範囲で整える
  • 仕事・家事・人付き合いで「がんばりすぎているサイン」に気づく
  • うつや不安など、二次障害が出てきていないかを一緒に確認する
  • 主治医・ご家族・支援機関との連絡を、本人に代わって・あるいは一緒に行う

「治す」ためではなく、「特性とつきあいながら、自分のペースで暮らしを続けていく」ためのお手伝いです。

訪問看護が毎回大切にしている3つのこと

発達障害のある方の暮らしを支えるうえで、府中よりそい訪問看護ステーションが特に大切にしているのは、次の3つです。

①「困りごと」を、一緒に整理する

発達障害のある方からよく聞くのは、「困っていることが多すぎて、自分でもどこから手をつけたらいいかわからない」というお話です。

たとえば――

  • 仕事のミスが続いて、上司との関係が苦しい
  • 家事が回らず、部屋が散らかっていく
  • 人付き合いで疲れて、誰にも会いたくなくなる
  • 夜眠れず、朝起きられない
  • 気がつくと衝動的な買い物をしてしまう

こうした困りごとは、一見ばらばらに見えても、特性(不注意・過集中・感覚の偏り・対人関係の苦手さなど)からつながっていることが少なくありません。

訪問看護では、ご本人の話をていねいに聞きながら、「いま、いちばん困っていることはどれか」「どこから手をつけると楽になりそうか」を、一緒に整理していきます。
特性を「直す」のではなく、「特性があるなかで、どう暮らしを組み立てるか」を一緒に考える時間です。

②生活のリズムを、ご本人の「やり方」で組み立てる

「規則正しい生活をしましょう」と言われても、それができたら苦労はしません。
発達障害のある方にとって、「一般的な生活リズム」がそのまま当てはまらないことは、よくあります。

大事なのは、教科書どおりに整えることではなく、ご本人にとって続けられるリズムを一緒に見つけていくことです。

  • 朝が極端に苦手なら、「起きる時間」より「最初に何をするか」を決める
  • 料理が負担なら、レトルトや惣菜を使って栄養を確保する選択肢も話す
  • 服薬の飲み忘れが多いなら、置く場所・タイミング・声かけの方法を一緒に試す
  • 過集中で休めないなら、タイマーや訪問看護の時間を「休憩のきっかけ」にする

「ちゃんとできていない自分」ではなく、「自分なりに工夫できている自分」に目を向けられるよう、私たち看護師がそっと並走します。

③二次障害(うつ・不安)のサインに、早く気づく

大人になってから発達障害の診断を受けた方の多くが、それまでの人生で「自分はなぜできないのか」「がんばっているのに伝わらない」と、長く自分を責めてきておられます。

そのため、うつ・不安・適応障害といった二次障害が出てくることが少なくありません。

訪問看護では、毎回お会いするなかで、次のようなサインに早めに気づくようにしています。

  • 表情・声のトーンが普段より沈んでいる
  • 眠れない/眠りすぎる日が続いている
  • 食欲が落ちている、またはやけに食べ過ぎている
  • 「消えてしまいたい」「もう疲れた」という言葉が増える
  • 外出や人との約束を、急に避けるようになる

こうしたサインに気づいたときは、ご本人にお伝えしたうえで、必要であれば主治医・ご家族・関係機関と連絡を取り、早めに支援の輪を広げます。
「ひとりで抱え込まない仕組み」を、訪問看護がご本人と一緒につくっていきます。

30分の訪問で、実際にしていること

1回の訪問はおよそ30分です。短い時間ですが、ご本人の暮らしに合わせて、できるだけていねいに過ごします。

たとえば、ある日の訪問の流れはこんな感じです。

  1. あいさつ・体調確認(5分)
    「最近、眠れていますか?」「ごはんは食べられていますか?」
    ご本人が話しやすいテンポで、一週間の様子を聞いていきます。
  2. 困りごとの整理(10分)
    今週うまくいかなかったこと、しんどかったこと、よかったこと。
    頭のなかでぐるぐるしている思いを、いっしょに言葉にして整理します。
  3. 暮らしの工夫を一緒に考える(10分)
    服薬の続け方、家事のハードルの下げ方、休む時間のつくり方。
    ご本人が「これならできそう」と思える小さな一歩を、一緒に探します。
  4. 体調のチェックと、次回の確認(5分)
    血圧などの体調を確認し、次回の訪問で取り組みたいことを共有します。
    必要があれば、主治医・ご家族・支援者への連絡も行います。

もちろん、しんどくて話したくない日は、ただそばに座っているだけの30分でもかまいません。
「がんばらない時間」も、立派なケアです。

ご本人の「ペース」と「特性」を、いちばん大切にしています

発達障害のある方への支援で、いちばん大切にしているのは、ご本人のペースと特性を尊重することです。

世の中には「こうあるべき」というやり方がたくさんあります。
朝はちゃんと起きる、部屋はきれいにする、人付き合いは大切にする――。

でも、それが苦しさの原因になっているなら、いったん置いてみてもいいのです。
特性を「なくそう」とするのではなく、特性とつきあえる暮らし方を、ご本人と一緒に組み立てていく。それが、私たちの考える発達障害の訪問看護です。

ご家族にも、「ご本人を変えようとしない関わり方」をお伝えしています。
特性を否定されない関係のなかで、ご本人が安心して過ごせる時間が増えることが、回復への大きな力になります。

利用までの流れと費用

大人の発達障害の訪問看護は、医療保険でご利用いただけます(精神科訪問看護指示書が必要です)。

主治医の先生に「訪問看護をお願いしたい」とご相談いただくと、指示書を作成してくださいます。
指示書をいただいた段階で、私たちが訪問の頻度や時間帯をご相談しながら決めていきます。

費用については、自立支援医療(精神通院医療)をご利用の方であれば、自己負担が原則1割になり、所得に応じた月額上限も設定されます。
障害者手帳をお持ちの方は、お住まいの自治体の医療費助成制度の対象になる場合があり、負担がさらに軽減されることがあります。生活保護を受給されている方の場合も、自己負担なしでご利用いただけます。

「自分は対象になるのかな」「費用がいくらかかるのか不安」という方は、お電話・お問い合わせフォームのどちらでも、ご本人にとって楽な方法でお気軽にご連絡ください。
制度の使い方や利用までの流れも、ていねいにお伝えします。

府中よりそい訪問看護ステーションの特徴

府中よりそい訪問看護ステーションは、精神科・認知症ケアに特化した訪問看護チームです。
府中市・調布市・国分寺市を対応エリアとして、精神科訪問看護の経験を重ねてきた看護師・作業療法士が、ご本人とご家族の暮らしに寄り添っています。

大人の発達障害のある方への訪問看護では、次のような体制を整えています。

  • 認知症専門医・青栁先生(精神科領域でも連携)との体制:精神科・認知症の臨床現場と日々情報共有しながら、ケアの質を保っています
  • 主治医・ご家族・支援機関(必要に応じてケアマネジャーや就労支援事業所)との連携を最重視:ご本人を中心に、関係者がチームになって支える体制を大切にしています

「自分のことを話すのが苦手」「初対面の人は緊張する」という方も、最初の訪問はご家族同席でも、短時間でもかまいません。
ご本人にとって安心できる関わり方を、一緒につくっていきます。

まとめ

大人の発達障害(ASD・ADHD)のある方への訪問看護で、府中よりそい訪問看護ステーションが大切にしているのは、次の3つです。

  1. 「困りごと」を、一緒に整理する
  2. 生活のリズムを、ご本人の「やり方」で組み立てる
  3. 二次障害(うつ・不安)のサインに、早く気づく

特性を「直す」のではなく、特性とつきあいながら、ご本人にとって心地よい暮らしを組み立てていく。
そのための時間を、毎回30分の訪問のなかで、ご本人と一緒に積み重ねています。

「自分でもどうしたらいいかわからない」「家族としてどう関わればいいか迷っている」――そんなときこそ、訪問看護をぜひ思い出してください。

よくある質問

Q1. 発達障害の診断がはっきりしていなくても利用できますか?
A. 精神科の主治医から「精神科訪問看護指示書」を出していただければ、ご利用いただけます。診断名そのものよりも、「暮らしのなかで困っていること」があり、主治医の先生が訪問看護を必要だと判断してくださることがポイントです。診断について迷っておられる場合は、まずは主治医の先生にご相談ください。

Q2. ご家族(親・パートナー)からの相談だけでも大丈夫ですか?
A. はい、ご家族からのご相談だけでも大丈夫です。「本人がなかなか動けない」「どう接していいかわからない」というご家族からのお声もたくさんいただきます。ご本人の状況をうかがいながら、利用までの進め方を一緒に考えますので、ご家族のお気持ちもどうぞお聞かせください。

Q3. 仕事や就労支援との両立はできますか?
A. はい、お仕事をされながら、または就労移行支援・就労継続支援などをご利用しながら訪問看護を受けておられる方も多くいらっしゃいます。訪問の曜日・時間帯はご本人のご都合に合わせて調整します。お仕事や支援機関での様子を共有しながら、暮らし全体を整えていくお手伝いをします。

Q4. 主治医の先生とは、どのように連携していますか?
A. 主治医の先生からの「精神科訪問看護指示書」にもとづいて訪問看護を行い、毎月の訪問内容や様子を「訪問看護報告書」としてお戻ししています。気になる変化があったときには、ご本人の同意のうえで、随時主治医の先生にご報告・ご相談しています。ご本人を中心に、医療と暮らしの両面から支える体制を大切にしています。

気持ちが少しでも楽になるきっかけをお探しの方、ご家族としての関わり方に迷っておられる方は、府中よりそい訪問看護ステーションまでお気軽にお問い合わせください。
お電話でもお問い合わせフォームからでも、看護師がていねいにお話をうかがいます。

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