【Vol.25】双極性障害の訪問看護でやっていること|看護師が毎回大切にしている3つのこと|府中市


双極性障害の訪問看護|窓辺のユーカリと木のテーブルとマグカップの水彩画イラスト

「気分の波が大きくて、自分でもコントロールできない」
「調子がいいときに動きすぎてしまって、あとからどっと落ちる」
「家族には『またハイになってる』と言われるけれど、自分ではわからない」

府中市で精神科の訪問看護をしている私たちのもとには、双極性障害(躁うつ病)のあるご本人やご家族から、こうしたご相談が日常的に寄せられます。

双極性障害は、薬と通院だけで「波が消える」わけではありません。
気分の波と、薬と、生活リズムと、人との関係を、暮らしのなかで一つずつ整えていくことが、回復と再発予防につながります。

この記事では、双極性障害の訪問看護で看護師が毎回大切にしている3つのことと、実際の訪問で何をしているのかを、現場の視点でお伝えします。

「訪問看護って、こんな状態でも使えるのかな?」と迷っているご本人・ご家族に、読んでいただけたら嬉しいです。

双極性障害の訪問看護って、実際に何をしてくれるの?

双極性障害の訪問看護は、看護師がご自宅に伺って、気分の波とのつき合い方や、薬を続けるリズムを一緒に整えるケアです。

診察の時間だけで、ご本人がここ最近どこまで眠れているか、どれくらい動いているかを伝えきるのはむずかしいものです。
「今週、何時に寝て、何時に起きていたか」「お金の使い方は普段と変わりないか」「人との約束を入れすぎていないか」──こうした暮らしの細部を、訪問看護師が一緒に見ていきます。

具体的には、1回30分くらいの訪問のなかで、

  • 体調・気分の確認、バイタル測定(脈・血圧)
  • 過去1週間の睡眠時間・活動量の振り返り
  • お薬を続けられているかの確認と、副作用の相談
  • 食事・水分・カフェイン・お酒の様子の観察
  • 気分の上向き・下向きのサインの言語化
  • 外出・予定・人付き合いの量の確認
  • ご家族からのご相談、関わり方のアドバイス

大切なのは、「波をなくす」ことを目標にしないことです。

双極性障害の方の多くは、「また調子を崩したらどうしよう」という波への不安と、「またあのときみたいに迷惑をかけたら」という過去への自責に苦しんでいます。
ですから、波の有無だけを見ていると、ご本人はますます自分を責めてしまいます。
私たちは「気分の波があっても、自分のサインに気づけた」「今週はちゃんと眠れた」という、小さな手応えを一緒に積み重ねていきます。

双極性障害の訪問看護が、毎回大切にしている3つのこと

毎回の訪問で、私たち看護師がいちばん大切にしているのは次の3つです。

①躁状態の「サイン」を、本人と一緒に見つける

双極性障害でいちばんむずかしいのは、躁状態(気分が上がりすぎている状態)に、本人がなかなか気づけないことです。

調子がいいと感じているとき、本人にとっては「やっと元気になった」「今がいちばん本当の自分」と思えるものです。
でも周りから見ると、しゃべりが速い、夜あまり眠っていない、普段より大きな買い物が増える、約束を入れすぎる──といった変化が出ていることがあります。

大切なのは、「ご本人だけが分かる、自分の躁のサイン」を、調子がいいうちに一緒に書き出しておくことです。

たとえば、

  • 夜中の3時頃に目が冴えて眠れなくなる
  • SNSの投稿数が普段の3倍になる
  • お金の使い方が普段と違ってくる
  • 新しい計画を一日に何個も思いつく
  • イライラしやすくなる

こうしたサインを、ご本人の言葉で書き出して、ご家族とも共有しておく。
そうすると、波が大きくなる前に「あれ、最近サインが出てるかも」と、ご本人自身が気づけるようになっていきます。

訪問のときは、この「自分のサインリスト」をふたりで見直す時間を、毎回少しだけ取ります。

②服薬を、生活のリズムに溶け込ませる

双極性障害の治療では、気分安定薬を長く続けることがとても大切だとされています。主治医の先生方も、再発予防のために服薬を続けることをすすめておられます。
ただ、調子が良くなるとつい「もう要らないんじゃないか」と感じてしまうのも、双極性障害の方によくあることです。

訪問看護師は、お薬を「飲ませる」のではなく、「生活のリズムのなかに、無理なく溶け込むかたち」を一緒に考える役割をしています。

たとえば、

  • 朝食のあとと、寝る前の歯みがきのあとに置き場所を決める
  • 飲んだか分からなくなる方には、お薬カレンダーを使う
  • 副作用がつらいときは、無理せず主治医にどう伝えるかを一緒に整理する
  • 「やめたい」気持ちが出てきたときは、責めずにそのまま聞く

服薬を「義務」にしてしまうと、本人もしんどくなります。
「飲み続けることで、こういう自分でいられる」という本人なりの理由が見つかると、続けやすくなることが多いです。

③波の中の自分を「責めない関係」をつくる

双極性障害の方の多くが、過去の躁状態のときの行動を、ずっと自分で責め続けていることがあります。
「あのとき家族に迷惑をかけた」「お金を使いすぎてしまった」「人を傷つけたかもしれない」──こうした自責は、うつの波のときにとくに重くのしかかります。

訪問看護のなかで私たちが大切にしているのは、波のときの自分も、波のあいだの自分も、どちらもその人自身であるという前提で関わることです。

波があったことを「なかったこと」にせず、けれど「あなたがダメな人だから」とも思わない。
「あのときは、波のなかでそうするしかなかったよね」と、責めずに振り返れる場所を、訪問の30分のなかでつくっていきます。

家族のなかでは、過去の躁状態のことを話題にしづらいことも多いです。
だからこそ、家族でも医師でもない第三者の看護師が、「責めずに聞く役」として関わる意味があると、私たちは思っています。

30分の訪問で、実際にしていること

「30分で、何ができるの?」とよく聞かれます。
府中よりそい訪問看護ステーションでは、双極性障害の方への訪問を、ざっくりこんな流れで進めています。

  1. 最初の5分:挨拶と、この1週間の様子を聞く(睡眠・食事・気分の波)
  2. 次の5分:バイタル測定(脈・血圧)と、体調の確認
  3. 真ん中の15分:その方がいちばん話したいことを、じっくり聴く時間。お薬の話、家族の話、調子のサインの話、過去の波の話──毎回テーマは違います
  4. 最後の5分:次の主治医の予約までに気をつけることを一緒に整理。ご家族にもお伝えする

「30分の中で、何かを完璧に解決する」のではなく、「次の1週間、なんとか乗り切れる手応えを持って帰っていただく」ことを、私たちは目標にしています。

ご本人の「ペース」を、いちばん大切にしています

双極性障害の訪問看護で、いちばん気をつけているのは、「治そう」と急がないことです。

波が大きく出ているときに、「もっと頑張りましょう」「次はこれをしましょう」と看護師が背中を押すと、ご本人はますますしんどくなってしまいます。
逆に、波が落ち着いているときは、「これくらいなら、できそう」という小さな目標を一緒に決めて、ゆっくり世界を広げていきます。

「動ける日もあれば、動けない日もある」
「先週できたことが、今週はできなくてもいい」

そんな、波の中で揺れる暮らしに伴走するのが、私たち訪問看護師の仕事です。

利用までの流れと費用

双極性障害の訪問看護を利用するには、主治医からの「精神科訪問看護指示書」が必要になります。

大まかな流れは次のとおりです。

  1. 当ステーションにお電話・お問い合わせ(ご本人・ご家族どちらからでもOK)
  2. 主治医の先生に「訪問看護を使いたい」と相談していただく
  3. 主治医から「精神科訪問看護指示書」を出してもらう
  4. 当ステーションの看護師がご自宅へ。初回は1時間ほど、ご状況を伺います
  5. 2回目以降は、1回30分くらいの訪問を、週1〜3回のペースで継続

費用は、医療保険の3割が原則ですが、自立支援医療制度を使えば原則1割になります。
所得によっては、月の自己負担に上限が設けられる仕組みもあります。
詳しくは主治医や、お住まいの市区町村の福祉窓口にご確認ください。

※ 精神科特別訪問看護指示書が出ている期間は、月1回・最大14日間まで毎日訪問することもできます。波が大きく出ているときに、集中的に支えるための仕組みです。

府中よりそい訪問看護ステーションの特徴

府中よりそい訪問看護ステーションは、精神科の訪問看護に特化したステーションです。

  • 看護師全員が、精神科訪問看護の経験を持っています
  • 主治医(精神科医・心療内科医)と連携してケアします
  • 認知症専門医とも連携しているため、双極性障害+ご高齢のケースにも対応できます
  • 府中市・調布市・国分寺市など、多摩地域を中心に伺っています
  • ご家族からの相談も、訪問の中で一緒にお受けしています

「気分の波があるけれど、訪問看護を使えるのかな」
「家族として、何ができるのか分からない」
そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

双極性障害の訪問看護で、私たちが毎回大切にしているのは次の3つです。

  1. 躁状態の「サイン」を、本人と一緒に見つける
  2. 服薬を、生活のリズムに溶け込ませる
  3. 波の中の自分を「責めない関係」をつくる

双極性障害は、波があるからこそ、「波のあいだ」をどう過ごすかがとても大事になります。
私たちは「治す」のではなく、「波と一緒に暮らしていけるようになる」ことを目指して、毎週ご自宅に伺っています。

ご本人にとっても、ご家族にとっても、訪問看護がひとつの「逃げ場」「相談先」になれたらと願っています。

よくあるご質問

Q1. 主治医に「訪問看護を使いたい」と言いづらいです。

「最近の波がしんどいので、暮らしの中で支えてほしい」という伝え方で十分です。
それでも言いづらい場合は、ご家族からお電話いただいて、こちらからお話しの仕方を一緒に考えることもできます。

Q2. 訪問看護で、お薬を増やしたり減らしたりできますか?

お薬の調整は主治医の先生のお仕事で、看護師にはできません。
ただし、「副作用がつらい」「飲み続けるのが不安」など、主治医に伝えづらい気持ちを整理して、診察の時間にうまく伝えられるようにお手伝いすることはできます。

Q3. 躁状態のときに、訪問看護師に何ができますか?

躁状態の波そのものを、看護師の力で止めることはできません。
できるのは、ご本人と一緒に「サインに気づく」「主治医に早めに連絡する」「ご家族と情報を共有する」といった、波が大きくなる前の動きをサポートすることです。
24時間対応の契約をいただいている方は、緊急時に夜間・休日もご家族からのお電話を受けることができます(24時間対応体制加算)。

Q4. 双極性障害の家族として、訪問看護師に相談だけしてもいいですか?

もちろんです。
ご本人と一緒に暮らすご家族は、波のたびに大きなエネルギーを使います。
訪問の30分のなかには、ご家族からのご相談を伺う時間も含まれていますし、ご家族だけからのお電話相談もお受けしています。

あわせて読みたい

📞 ご相談・お問い合わせ:042-508-3434(府中よりそい訪問看護ステーション)
ご本人・ご家族どちらからのお電話も歓迎しています。
「最近、気分の波がしんどくて。訪問看護を使えますか?」のひと言で十分です。

\ 最新情報をチェック /


PAGE TOP