
「本人に、訪問看護をどう勧めたらいいか分からない」——精神科訪問看護のご相談で、ご家族から特に多くお寄せいただくお悩みです。「勝手に決めたら本人が怒るかもしれない」「でも、このまま家族だけで支えるのも限界に近い」。そんな間で、言葉にしづらい気持ちを抱えているご家族は少なくありません。
この記事は、精神科訪問看護という選択肢について、ご家族からご本人にどう伝えたらよいか、最初の一歩をどう踏み出したらよいか、そのヒントをお届けする記事です。府中市で精神科・認知症ケアに力を入れている府中よりそい訪問看護ステーションから、ご相談の現場で日々感じていることをお伝えします。
ご家族が「限界まで頑張ってしまう」前に
精神科の訪問看護にご相談いただくとき、ご家族から次のようなお話をよくうかがいます。
- 「朝起きられない日が増えて、学校や仕事に行けなくなってしまった」
- 「薬を飲んだり飲まなかったり、通院も途切れがちになってきた」
- 「本人が部屋から出てこない日が続いて、どう声をかけたらいいか分からない」
- 「家族だけで見ていると、どうしても感情がぶつかってしまう」
- 「本人が拒否するから、何もしてあげられていない気がする」
これらはどれも、ご家族の「もっと何とかしてあげたい」という気持ちの裏返しです。ただ、ご家族がおひとりで長く抱え続けると、ご家族自身の心身も少しずつ疲れていきます。「限界まで頑張ってから相談する」のではなく、「迷っている段階で相談できる相手」として、訪問看護を知っておいていただけたらと思います。
精神科訪問看護は、ご家族にとってどんな存在か
精神科訪問看護というと、「ご本人のためのサービス」というイメージが強いかもしれません。もちろんその通りなのですが、実際の現場では、ご家族にとっての役割も大きいと感じています。
家族以外の「第三者」が定期的に関わる意味
ご家族が一番近い存在だからこそ、かえって話せなくなることがあります。心配のあまり強く言いすぎてしまったり、逆に気をつかって本音が出せなくなったり。訪問看護師はご家族ではない「第三者」として、ご本人とお話しします。
ご本人のなかには、ご家族には言いにくい気持ちも、看護師になら話せる方がいらっしゃいます。反対に、看護師から見て気がかりな様子を、ご家族にお伝えして一緒に考えることもできます。ご家族と本人の間に少し距離のある「受け皿」が増えることが、結果としてお互いの関係をやわらげることがあります。
主治医との橋渡し
通院が月1回の短い時間だけだと、ご本人も診察室では「いつも通りです」と答えてしまいがちです。訪問看護師は、ご自宅で感じた日々の変化や気になる様子を、必要に応じて主治医の先生にお伝えし、情報を共有する役割を担っています。
お薬の調整や治療方針の判断は主治医の先生のお仕事ですが、その判断材料として、ふだんの暮らしの情報が届くことは大切です。ご家族がすべてを先生に伝える負担を、訪問看護が少し分担します。
ご家族の「話し相手」にもなれます
訪問の終わりに、ご家族と少し言葉を交わす時間をとることもあります。「最近、眠れていますか」「おひとりで抱え込んでいませんか」——そんな短いやりとりから、ご家族の疲れが見えてきたら、ケアマネジャーさんや地域の相談窓口へのおつなぎもさせていただきます。
ご家族向けの具体的なヒントは、Vol.16 精神科訪問看護で家族ができること|介護疲れを減らす5つのヒントでも詳しくお伝えしています。
「本人がイヤがるのでは?」というご不安への一つの答え
ご家族からのご相談で、もっとも多い不安がこれです。「訪問看護を入れたくても、本人が反対したら意味がない」「強引に進めたら、かえって関係が悪くなるかもしれない」。当然のご心配だと思います。
伝え方の一例
正解があるわけではありませんが、実際にご家族が使われている伝え方の一例をご紹介します。
- 「お母さんが心配だから、話を聞きに来てくれる人に、一回だけ会ってみてほしい」
→ 家族自身の気持ちを主語にして伝える - 「自分(家族)のために、相談できる人を増やしたいんだ。その人と一緒に、あなたとも話せたらうれしい」
→ 家族のためでもあることを素直に伝える - 「薬のこと、通院のこと、ひとりで考え続けるのは大変そうに見える。手伝ってくれる人がいるよ」
→ 具体的な困りごとに寄せて伝える - 「1回試してみて、合わなかったらやめていいから」
→ やめる自由があることを明確に伝える
「〜すべき」「〜しないとダメ」という言い方より、「〜してくれたらうれしい」「私のために、少しだけ」という言い方のほうが、受け取りやすい方が多い印象です。
初回は「お顔合わせだけ」から始められます
ご本人が訪問看護に気が進まないときは、初回を短時間のお顔合わせだけにすることもできます。看護師が何かを「する」のではなく、まずは「どんな人なのかを知っていただく」ところから。バイタルも測らず、ただお茶を飲みながら少し話すだけ——そういう入り方も、現場ではよくあります。
「思っていたより話しやすい人だった」という感想をいただくことが多いです。ご本人のペースに合わせて、少しずつ関係をつくっていきます。
「家族が決めていい」場面もあります
ご本人が判断しづらい状態にあるとき、ご家族が代わりに判断する場面もあります。主治医の先生と相談しながら、「今は家族が選ぶ時期」と割り切ることも、支える上で必要なことがあります。その場合も、訪問看護を入れるときにご家族に罪悪感が残らないよう、私たちは丁寧にかかわり方を考えていきます。
ご利用までの流れと費用の目安
どこに相談すれば始まるか
精神科訪問看護を始めるには、主治医の先生から「訪問看護指示書」を出していただく必要があります。流れの一例は次のとおりです。
- 主治医の先生に、訪問看護を検討していることを相談する
- 主治医から訪問看護ステーションに指示書が出される
- ステーションからご家族・ご本人にご連絡し、初回訪問日を調整
- 初回訪問で、ご本人・ご家族と顔合わせ・ご希望の確認
- 以降、定期的な訪問(週1〜2回、1回30分程度が目安)
詳しい流れは、Vol.14 精神科訪問看護の利用の流れでもご紹介しています。ご家族だけで先にステーションにお問い合わせいただくことも可能です。まずは情報収集として、お気軽にお電話ください。
費用の目安
精神科訪問看護は、原則として医療保険の対象になります。多くの方は、自立支援医療(精神通院医療)という制度を利用されており、その場合は自己負担が1割、さらに所得に応じた月額の上限が設定されます。
自立支援医療をご利用の場合、訪問看護1回あたりの自己負担はおおむね800〜1,300円程度が目安です(訪問時間や加算の有無によって前後します)。月の上限に達すると、以降その月の自己負担は発生しません。制度の詳しい内容や手続きは、主治医の先生やお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
費用の話は、ご家族だけで抱え込まず、主治医の先生・訪問看護ステーション・市区町村の窓口に分けて相談していくと、必要な情報が少しずつ揃っていきます。
府中よりそいに相談するときの、一歩目
府中よりそい訪問看護ステーションは、府中市を中心に、精神科・認知症ケアに力を入れている訪問看護ステーションです。認知症専門医である青栁先生とも連携しながら、ご本人・ご家族の暮らしに寄りそうケアを目指しています。
ご家族からのご相談も歓迎しています。ご本人のご了解が取れる前の段階でのお問い合わせも、もちろん構いません。「話を聞いてみたい」「うちの場合はどう始められるだろう」——そんな気持ちで、まずはお電話いただければと思います。
府中よりそい訪問看護ステーション
電話:042-508-3434
受付時間:平日 9:00〜18:00
HPのお問い合わせフォームからもご相談いただけます。折り返しお電話で詳しくおうかがいしますので、お名前とご連絡先、ご家族のどなたのことかを簡単にお書き添えいただけると助かります。
よくあるご質問
Q. 本人に内緒で相談だけしてもいいですか?
はい、情報収集の段階のご相談は、ご家族だけで構いません。ご利用を正式に始めるには、最終的にはご本人の意向の確認や主治医からの指示書が必要になりますが、「どんな流れなのか知っておきたい」「うちの場合に合うか相談したい」といったお問い合わせは、ご家族だけでどうぞ。
Q. 本人が通院を中断しているのですが、それでも使えますか?
訪問看護を始めるには主治医の先生の指示書が必要なので、まず通院・受診につながる必要があります。通院が続いていない場合は、どの医療機関につながるのが良いかを含めて、地域の相談窓口や市区町村の保健センターとも連携しながら整えていくことが多いです。この状況でもお気軽にご相談ください。
Q. 訪問看護とカウンセリングは、どう違うのですか?
訪問看護は、看護師などがご自宅を訪問し、暮らしの中での体調や生活リズム、お薬の状況を一緒に確認していく医療サービスです。主治医の指示のもとで動き、医療保険の対象になります。一方、カウンセリングは心理の専門職がこころの相談に応じるもので、内容・時間・費用の仕組みが異なります。どちらが合うかは状況によりますので、主治医の先生にご相談ください。
Q. ご家族だけが来てほしい日があってもいいですか?
訪問看護は原則としてご本人を対象としたサービスのため、ご家族だけへの訪問はできません。ただし、訪問の終わりにご家族と少しお話しする時間をとることはできますし、ご家族の疲れが強いときは、ケアマネジャーさんや地域包括支援センター、精神保健福祉の相談窓口へのおつなぎも行っています。
まとめ——「家族だけで」を、少しほどいていく
ご本人を支えるご家族は、どうしても「自分が頑張らなきゃ」という気持ちになりやすいものです。ただ、長く続けるためには、支える人の側にも支えが必要です。訪問看護は、ご本人のためのサービスであると同時に、ご家族がひとりで抱えている荷物を少しほどくための、一つの選択肢でもあります。
「まだ決められないけれど、話だけ聞いてみたい」——そんな段階でのご相談を、府中よりそい訪問看護ステーションでは大切にしています。府中市で精神科の訪問看護をお探しのご家族は、どうぞお気軽にご連絡ください。
府中よりそい訪問看護ステーション
電話:042-508-3434
受付時間:平日 9:00〜18:00
