
「幻聴がひどくて、本人がドアを開けてくれない」「お薬をやめてしまって、また調子が崩れてしまった」「家族として、どう声をかけたらいいかわからない」――府中市の精神科訪問看護をしていると、統合失調症のあるご家族から、こうしたご相談をもっとも多くいただきます。
統合失調症は、ご本人の支援だけで完結する疾患ではありません。同じ家で暮らしておられるご家族が、長い時間、ご本人と一緒に幻聴・服薬・暮らしのリズムと向き合い続けます。「家族として疲れた」「自分のせいで悪化したのではないか」「これから先、どうなるのか」――そう感じておられる時間も、私たち訪問看護がご一緒にお手伝いできる時間です。
この記事は、統合失調症のあるご家族の方に向けて、府中よりそい訪問看護ステーションの看護師が、訪問でとくに大切にしている3つのこと、ご家族からよくいただくご相談、訪問の中身と費用についてお伝えするものです。ご本人ご自身が訪問看護を検討されている場合は、【Vol.22】統合失調症の訪問看護でやっていること(ご本人向け)もあわせてご覧ください。
統合失調症の訪問看護では、何をしてくれるの?
訪問看護師がご自宅へうかがって、生活の中で困っていることに、看護の視点で寄りそいます。府中よりそい訪問看護ステーションでは、訪問1回あたり30〜90分のなかで、次のようなことに取り組んでいます。
- バイタル測定と体調の確認(血圧・脈・睡眠・食欲・水分)
- 幻聴・妄想・思考のまとまりにくさなど、陽性症状の様子の観察
- 意欲の低下・閉じこもり・身だしなみの変化など、陰性症状への気づき
- 服薬の継続確認と、副作用が出ていないかのチェック
- 生活リズム(睡眠・食事・お風呂・お金の使い方)の振り返り
- 主治医に伝えるべき変化の整理と、診察への橋渡し
- ご家族の困りごと・接し方のご相談
統合失調症は、急性期・回復期・安定期と状態が変わっていく疾患です。同じ方でも、時期によって訪問でお手伝いする中身は大きく変わります。「いま、どこに困っているか」を毎回うかがって、その時のご本人のペースに合わせて関わるのが、訪問看護の役割です。
訪問看護師が大切にしている3つのこと
統合失調症の訪問看護で、私たちが特に大切にしているのは次の3つです。
① 「幻聴・妄想」を否定せず、せかさない
「悪口が聞こえる」「監視されている気がする」「電波で考えを抜き取られる」――統合失調症の陽性症状は、ご本人にとっては実際に体験している現実です。「そんなのあるわけない」と否定すると、信頼関係が崩れ、訪問そのものを拒まれてしまうことがあります。
訪問看護では、否定もせず、無理に肯定もしないところに立ちます。「そう聞こえているのですね」「そう感じているとつらいですね」と、まずご本人の体験そのものを受けとめます。そのうえで、「私には聞こえていません」と看護師の事実は事実として伝えます。「あなたが感じている世界」と「他の人が感じている世界」のあいだに、優しい線を引いていく作業です。
もうひとつ大切なのは、せかさないこと。考えがまとまりにくい時期は、質問に答えるのに時間がかかります。「ゆっくりで大丈夫です」と、沈黙の時間も一緒に過ごします。沈黙を埋めずにそばにいられる――それが訪問看護の力だと思っています。
② 服薬を「暮らしのリズム」にとけこませる
統合失調症の治療では、抗精神病薬の継続がとても大切だと言われています。けれど、「副作用がつらい」「治った気がするからもう飲まなくていいと思った」「飲み忘れているうちに、いつのまにか中断していた」――こうした理由で服薬が途切れることは、よくあります。
訪問看護では、「飲んでいないこと」を責めません。まず「どうして飲みにくくなったのか」を一緒に整理します。眠気が強い、手がふるえる、体重が増えてつらい、お金の心配がある――それぞれの理由には、それぞれの工夫があります。お薬カレンダーや一包化、服薬時間の見直し、剤形の変更(口腔内崩壊錠・液剤・持効性注射剤など)の主治医への相談など、生活に合った形を一緒に探します。
「飲み忘れない仕組み」を朝のコーヒー、夜の歯みがきのように、暮らしのリズムにとけこませる。これが続けやすさにつながります。「薬を飲んでいる自分」ではなく「自分の生活を守る道具として薬を使っている」と感じてもらえるよう、対話を重ねていきます。
③ 家族の「どうしたら」に正面から答える
統合失調症は、ご本人と同じくらい、ご家族にも長い時間の伴走を求める疾患です。訪問看護師はご家族から、こうしたご相談をよくいただきます。
- 「悪口を言われていると訴えられたとき、どう答えればいいか」
- 「お風呂に入っていない、ご飯を食べていない――どこまで言うべきか」
- 「兄弟姉妹に、どう説明すればいいか」
- 「自分が倒れたら、この子はどうなるのか」
訪問看護では、こうしたお気持ちに「ご家族の判断にお任せします」と返さず、できるかぎり具体的な選択肢をお伝えします。「悪口の話には、否定せず受けとめて、別の話題に切り替える」「身だしなみの声かけは、朝1回だけ・短く・選択肢として」――家族関係を壊さずに、ご本人を支える小さなコツを、訪問のたびに少しずつ整理していきます。
ご本人の訪問とは別に、ご家族だけのお時間をいただくこともあります。「家族として疲れた」「自分の気持ちを聞いてほしい」――そういう時間も、訪問看護でお受けしています。
30分の訪問で、実際にしていること
1回30〜60分の訪問で、看護師がしていることの一例をご紹介します。訪問の流れは、ご本人の状態と希望にあわせて毎回変わります。
- はじめの5分:玄関でのご挨拶、バイタル測定、表情・話し方の様子の確認
- 次の10分:1週間の出来事ヒアリング、幻聴・妄想・気分の波の振り返り
- 真ん中の10分:服薬カレンダーの確認、副作用の有無、生活リズムの振り返り
- 後半の10分:今週やってみたい小さな目標(散歩・お風呂・買い物など)の相談
- 最後の5分:次回までに観察してほしいポイント、ご家族への伝言の確認
訪問のほとんどは、医療処置ではなく対話と観察が中心です。「見守るだけで意味があるの?」とご家族から聞かれることもありますが、統合失調症では、変化に早く気づける誰かが定期的に来ること自体が、再発のサインに早く気づくきっかけになります。
主治医・ご家族との連携体制
統合失調症の方の訪問看護では、主治医(精神科の先生)との連携がとても重要です。府中よりそい訪問看護ステーションでは、次のような形で連携しています。
- 月1回の訪問看護報告書を、主治医にお届け
- 幻聴・妄想・服薬の様子・睡眠・食事の変化を、診察時に活かしていただく
- ご本人が診察で伝えにくいことを、報告書を通じて橋渡し
- 受診同行が必要な場合は、訪問とは別枠でご相談
- 当ステーションで連携している認知症専門医・青栁先生が、加齢期の身体疾患・認知機能の変化が重なるケースで指示書を書ける体制
長く統合失調症と付き合っている方は、主治医・ご家族・福祉サービス(地域活動支援センター・グループホーム・相談支援事業所など)との関係が複雑になっていきます。訪問看護は、その「複数の支援者をつなぐ翻訳者」のような役割も担います。
介護保険・医療保険、どちらで使える?流れと費用
統合失調症の訪問看護は、多くの場合医療保険を使います。65歳以上で要介護認定を受けている方は、状態によって介護保険が優先される場合もあります。
- 医療保険ルート:主治医(精神科)に「精神科訪問看護指示書」を書いていただきます。週3回までが目安です。状態によっては週4回以上の特例も使えます。
- 自立支援医療(精神通院):医療保険の自己負担を1割にできる制度。所得に応じて月の自己負担上限額があります。お住まいの市区町村で申請します。
- 費用の目安:自立支援医療を使った場合、1回あたりの自己負担はおよそ800〜1,000円前後です(疾患・地域・指示内容によって異なります)。
主治医がいない・どこに通えばいいかわからないという方は、まず当ステーションへご相談ください。府中よりそい訪問看護ステーションは、認知症専門医・青栁先生と連携しているクリニックをご紹介できる場合があります。受診ができない方には、ご家族とのご相談から一緒に進めます。
府中よりそい訪問看護ステーションの特徴
府中市にある当ステーションは、精神科訪問看護に特化したチームで運営しています。統合失調症の方の訪問では、次のような特徴があります。
- 精神科訪問看護の経験を重ねたスタッフが、急性期から安定期まで対応
- 認知症専門医・青栁先生と連携した臨床体制で、薬・診断・身体疾患の重なりに対応
- 主治医を持っていない方からのご相談も、医療機関のご紹介を含めて対応
- ご家族からのご相談を別枠でお受けできる体制
- 府中市・国立市・調布市・三鷹市・武蔵野市・小金井市など多摩地域に対応
- 初回ご相談は無料、訪問が始まる前にご本人と看護師の相性を確認できます
まとめ|統合失調症の訪問看護で大切にしていること
府中市の精神科訪問看護で、統合失調症の方への訪問で大切にしているのは、次の3つです。
- ① 「幻聴・妄想」を否定せず、せかさない
- ② 服薬を「暮らしのリズム」にとけこませる
- ③ 家族の「どうしたら」に正面から答える
統合失調症は、ご本人もご家族も、長い時間をかけて症状とつきあっていく疾患です。「ひとりで抱えなくていい」「焦らなくていい」「変化に気づける誰かが、定期的にそばにいる」――そうお伝えできる時間を、訪問看護はお届けしています。
よくあるご質問
Q1. 幻聴がひどくて、本人が訪問看護を拒否しています。どうすればいいですか?
まず、ご家族からのご相談を別枠でお受けできます。最初の数回はご本人と看護師が直接お会いせず、玄関先で名前を伝えるだけ・お手紙だけ・ご家族とのお話だけ――というところから始めることもよくあります。「来てくれていいよ」と言ってもらえるまでの時間は、半年・1年かかることもあります。あせらず、つながり方を一緒に考えていきます。
Q2. 服薬をやめてしまうことが多いのですが、訪問看護で支えられますか?
はい、服薬の継続は訪問看護がもっとも力を入れる場面のひとつです。お薬カレンダーや一包化、服薬時間の見直しなど、生活に合った仕組みを一緒に作ります。それでも飲みにくい場合は、剤形の変更(口腔内崩壊錠・液剤・持効性注射剤など)を主治医にご相談する選択肢もあります。「飲めなかった」を責めない関係の中で、続けやすい形を探していきます。
Q3. 家族として、どう声をかけたらいいかわからない時、相談できますか?
はい、ご家族からのご相談を専門に受ける時間を設けています。幻聴の訴えへの応じ方、身だしなみへの声かけのタイミング、兄弟姉妹への説明、ご家族自身の気持ちの整理――一回の訪問で全部解決しなくても、少しずつ整理していけます。「家族として疲れた」というご相談も、遠慮なくお話しください。
Q4. 急性期で入院から退院した直後ですが、すぐ訪問看護を入れられますか?
はい、退院前から準備をしておくと、退院後すぐに訪問を開始できます。入院中の主治医や病棟看護師、ソーシャルワーカーと連絡をとり、退院後の生活で気をつけたいポイントを引き継ぎます。退院直後は、ご本人もご家族も不安が大きい時期です。週2〜3回の頻度で訪問させていただくことも多く、生活が安定してきたら頻度を見直していきます。
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