
「うつ病と診断されて、薬を飲んでいるけれど、家で何をしていればいいのかわからない」
「眠れなくて、朝起きられない。家族に迷惑をかけている気がする」
「病院には行っているけれど、毎日の暮らしがしんどい」
府中市で精神科の訪問看護をしている私たちのもとには、こうしたご相談がよく届きます。
うつ病の治療は、薬と通院だけでは足りないことがあります。
毎日の暮らしそのものが、治療の一部になるからです。
この記事では、うつ病の訪問看護で看護師が毎回大切にしている3つのことと、実際の訪問で何をしているのかを、現場の視点でお伝えします。
「訪問看護って、うちみたいな人も使えるの?」と迷っているご本人・ご家族に、読んでいただけたら嬉しいです。
うつ病の訪問看護って、実際に何をしてくれるの?
うつ病の訪問看護は、看護師が自宅に伺って、生活と気持ちの両面を支えるケアです。
医師の診察は15分、薬の相談は薬剤師――でも、「毎日どう過ごせばいいか」を一緒に考えてくれる人は、なかなかいません。
訪問看護はその役割を担います。
具体的には、30分程度のご自宅での訪問の中で、
- 今日の体調・気分の確認
- 眠れているか、食べられているか、の確認
- 薬の飲み忘れがないかの確認
- 最近困っていることの傾聴
- 家族との関係や、復職・通院のことの相談
- 小さな目標を一緒に決める(今日はカーテンを開けてみる、など)
などを、ご本人のペースに合わせて行います。
「話すのがつらい日は、黙って隣にいるだけ」でも、訪問看護は成立します。
“何もしない”ことを、一緒に許せる存在が、うつ病の回復には大切だと、私たちは考えています。
うつ病の訪問看護が、毎回大切にしている3つのこと
Vol.18の認知症シリーズでもお伝えしましたが、訪問看護は「毎回ぜんぶを見る」のではなく、大切なポイントを決めて、そこを継続して追うケアです。
うつ病の場合、看護師が毎回必ず確認しているのは、この3つです。
1. 生活リズム(睡眠・食事・活動)
うつ病の回復で、薬と同じくらい大切なのが生活リズムです。
- 何時に寝て、何時に起きたか
- ご飯は1日何回食べられたか
- 今日は家から一歩でも出られたか
これらは、ご本人にとっては「当たり前のこと」に感じられるかもしれません。
でも、うつ病の最中にいる人にとっては、どれか一つができるだけでも、大きな一歩です。
看護師は、この小さな変化を一緒に見つけ、一緒に喜びます。
「昨日よりちょっと寝られた」「スーパーまで歩けた」――そうした小さな事実を、一緒に積み上げていきます。
2. 気分の波
うつ病は、日によって、時間帯によって、気分の波があります。
朝がつらい方もいれば、夕方になると不安が増す方もいます。
「何もしたくない日」と「少し動けそうな日」の波を、ご本人自身が把握することは、回復の大事なステップです。
看護師は、訪問のたびに「今日はどんな気分ですか」「先週と比べてどうですか」と丁寧に聞いていきます。
そして、気分の波を一緒にグラフのように見える化していくことがあります。
自分の波がわかると、「今日はつらくてもいい日」と自分に許可を出せるようになります。
それが、次の回復への足がかりになります。
また、「死にたい気持ち(希死念慮)」が出てきていないかも、毎回そっと確認します。
つらい気持ちは、一人で抱え込まず、遠慮なく私たちに話してください。
一人で抱え込まないための、大切な安全ネットです。
3. 社会とのつながり
うつ病のときは、人と会うのがしんどくなります。
家族にも、友人にも、職場の人にも、連絡を取るのが億劫になる――これは症状の一部です。
でも、完全に孤立してしまうと、回復は遅くなります。
看護師は、ご本人が無理なく保てる「社会とのつながり」を、一緒に探します。
- 家族と1日1回、顔を合わせる
- 週に1回、近所のスーパーに行く
- 月に1回、主治医のもとへ通院する
- 訪問看護の時間を、人と話す練習の場にする
小さなつながりを切らさないことが、復職やその先の暮らしにつながっていきます。
毎回の訪問で、実際にやっていること
うつ病の訪問看護では、30分程度の訪問の中で、以下のようなことを組み合わせて行います。
バイタル測定と体調確認
血圧・脈拍・体温などを測ります。
うつ病では、抗うつ薬の副作用でめまいや立ちくらみが出ることもあるため、身体の状態もあわせて確認します。
傾聴
「話したいこと」があれば、ゆっくり聞きます。
話したくなければ、無理には聞きません。
「話す/話さない」も、ご本人が選べる時間にしています。
服薬確認
- 今週、飲み忘れはなかったか
- 副作用は出ていないか
- 薬を飲むのがつらく感じていないか
飲み忘れが続いているとき、看護師が一方的に「飲んでください」と言うことはしません。
なぜ飲めないのかを一緒に考え、必要があれば主治医に相談するお手伝いをします。
小さな目標を一緒に立てる
「次の訪問までに、何か一つだけ、できそうなことを決めませんか」
そんなふうに、小さな目標を一緒に立てることがあります。
- カーテンを開ける
- 朝ごはんを食べる
- 散歩を5分する
「できなくても、それでいい」という前提で、ご本人が決めた目標を一緒に追いかけます。
ご家族との短い会話
訪問の最後に、ご家族にも少しだけお話を伺うことがあります。
「ご本人の様子で、気になることはありますか?」――この一言で、ご家族の不安も整理されていくことがあります。
ただし、本人のペースが一番。無理はさせません
うつ病の訪問看護で私たちが何より大切にしているのは、ご本人のペースです。
「訪問看護が来ることが負担」になってしまっては、本末転倒です。
- 「今日はインターホンを押さずに、ポストにメモだけ入れて帰ってほしい」
- 「30分の予定だけど、今日は10分で終わりにしてほしい」
- 「今日は話したくないから、黙って血圧だけ測ってほしい」
こうしたご要望に、私たちは柔軟にお応えします。
“訪問看護が来る日は、無理をしなくていい日”――そう思ってもらえる関係性が、一番大切だと考えています。
うつ病の訪問看護、利用の流れと費用
利用の流れ
うつ病の訪問看護は、医療保険を使って利用できます。
ご本人・ご家族側でご用意いただくものは、特にありません。主治医からの「訪問看護指示書」があれば、利用を開始できます。
- 主治医に「訪問看護を使いたい」と相談する
- 訪問看護ステーションに問い合わせる(ご本人・ご家族どちらからでも可)
- 訪問看護ステーションがご自宅に伺い、初回面談
- 主治医から指示書が届き次第、訪問開始
ご相談から初回訪問まで、最短で1〜2週間程度です。
費用
うつ病で通院している方の多くは、自立支援医療制度(精神通院医療)が使えます。
この制度を使うと、訪問看護の自己負担は1割になります。
自立支援医療を使った場合の、1回あたりの自己負担の目安は、約800〜1,300円です。
週1回の訪問であれば、月額約3,000〜5,000円程度が目安になります。
※金額は症状や訪問内容により変動します。正確な金額は個別にお問い合わせください。
詳しい費用や制度については、Vol.11「精神科訪問看護とは?対象・サービス・流れ」やVol.14「精神科訪問看護の利用の流れ」もあわせてご覧ください。
府中よりそい訪問看護ステーションでの、うつ病ケアの特徴
私たち府中よりそい訪問看護ステーションは、精神科に特化した訪問看護ステーションです。
うつ病ケアでの私たちの特徴は、以下の3つです。
1. 精神科経験のある看護師・作業療法士が担当
訪問スタッフは全員、精神科での臨床経験があるスタッフです。
精神科病棟、精神科クリニック、精神科訪問看護――いずれかの経験を持ち、うつ病の方への関わり方を熟知しています。
「病気を治そう」ではなく、「暮らしを一緒に立て直そう」という姿勢でお伺いします。
2. 医療顧問・青栁先生(認知症専門医)との連携
府中よりそいの医療顧問は、認知症専門医の青栁先生です。
うつ病は、高齢期の発症や、認知症との鑑別が必要なケースもあります。
青栁先生と密に連携し、臨床的に難しいケースも、医師の判断を仰ぎながら対応しています。
3. ご家族への並走
うつ病は、ご本人だけでなく、ご家族も消耗します。
「どう声をかけたらいいかわからない」「自分が支えきれるか不安」――そんなご家族の気持ちにも、私たちは並走します。
訪問のたびに、ご家族に一言でも声をかけ、ご家族が抱え込まずにすむ関係性を大切にしています。
まとめ
うつ病の訪問看護は、薬と通院では届かない、毎日の暮らしを支えるケアです。
看護師が毎回大切にしているのは、この3つ:
- 生活リズム(睡眠・食事・活動)を、一緒に見つめる
- 気分の波を、一緒に見える化する
- 社会とのつながりを、無理なく保つ
そして何より、ご本人のペースを一番に大切にしています。
「こんな状態でも使えるの?」と迷っている方へ。
どんな状態でも、訪問看護は使えます。
府中市・多摩エリアで、うつ病の訪問看護をお探しの方は、府中よりそい訪問看護ステーションにご相談ください。
本人・ご家族、どちらからのご相談も歓迎しています。
電話: 042-508-3434、またはお問い合わせフォームから、初回のご相談をお申し込みください。
よくある質問(Q&A)
Q1. うつ病で、まだ診断されたばかりです。訪問看護は使えますか?
A. はい、使えます。
診断直後から、「これからの暮らしをどう立て直すか」を一緒に考えるのが、訪問看護の役割です。
主治医にご相談いただければ、指示書を書いてもらえます。
Q2. 家族が「うつかも」と心配しています。本人が病院に行ってくれません。先に相談できますか?
A. ご家族からのご相談も歓迎しています。
ただし、訪問看護のご利用には、主治医の指示書が必要です。
まずはご本人が医療機関にかかれるよう、ご家族への関わり方を一緒に考えさせてください。
詳しくはVol.19「精神科訪問看護を、ご家族からすすめるときに」もご覧ください。
Q3. 話すのが苦手です。訪問のときに黙っていてもいいですか?
A. もちろんです。
「話さないこと」も、一つの選択です。
看護師は、ご本人が話したいときに話せる雰囲気を作りつつ、無理に話を引き出すことはしません。
Q4. 復職を考えていますが、訪問看護でサポートしてもらえますか?
A. はい、可能です。
生活リズムを整えること、無理のない社会復帰のペースを一緒に考えること、主治医や産業医と連携すること――復職までの伴走も、私たちの得意分野です。
