
1. 「気にしすぎ」では、ありません
「また発作が起きたらどうしよう」と思うと、電車に乗れない。
外出の予定が近づくだけで、胸がざわざわして眠れない。
家族から見ると元気そうなのに、玄関の前で足が止まってしまう。
不安障害やパニック障害は、まわりから見えにくい病気です。「気にしすぎだよ」「考えすぎじゃない?」という言葉が、本人をいちばん追い詰めてしまうことがあります。
不安障害は、本人の性格や気の持ちようの問題ではなく、治療の対象となる病気です。そして、適切な治療と環境があれば、少しずつ行動の範囲を取り戻していける病気でもあるといわれています。
この記事は、ご自宅で過ごす不安障害・パニック障害の方を「家でどう支えるか」をテーマに、ご本人とご家族に向けて精神科訪問看護の立場からまとめた疾患シリーズの第3回です(第1回はうつ病、第2回は双極性障害を取り上げました)。
2. 不安障害とは|「不安」が生活を狭めてしまう病気
不安は本来、危険から身を守るために誰にでも備わっている反応です。ただ、その不安が必要以上に強く、長く続き、生活に支障が出ている状態が「不安障害(不安症)」と呼ばれます。
代表的なものをいくつかご紹介します。
- パニック障害(パニック症):突然、動悸・息苦しさ・めまい・「このまま死んでしまうのでは」という強い恐怖などの発作(パニック発作)が起こります。発作そのものは時間がたてばおさまるといわれていますが、「また起きたらどうしよう」という不安(予期不安)が強く残るのが特徴です
- 広場恐怖(広場恐怖症):電車・人混み・行列など「すぐに逃げられない場所」「助けを求めにくい場所」を避けるようになります。パニック障害と一緒に起こることが少なくありません
- 社交不安症:人前で話す・注目される場面に強い恐怖を感じ、人との関わりを避けるようになります
- 全般性不安症:特定の場面に限らず、健康・家族・お金など、さまざまなことへの心配が止められず、緊張や不眠が続きます
種類は違っても共通しているのは、不安そのものよりも「不安を避けるための行動」が、少しずつ生活を狭めていくということです。
3. 家で起きやすいこと|「予期不安」と「回避」の悪循環
ご自宅で療養されている方とご家族から、よくうかがうのはこんな場面です。
ご本人に起きやすいこと
- 「また発作が起きたら」と考えると、外出の予定を直前でキャンセルしてしまう
- 行ける場所が少しずつ減っていく(電車→バス→近所のスーパー、と範囲が狭まる)
- 発作が怖くて、ひとりで留守番ができない・ひとりで眠れない
- 「こんなこともできないなんて」と自分を責めてしまう
ご家族に起きやすいこと
- 外出にいつも付き添いを求められ、自分の予定が立てられない
- 「大丈夫だよね?」という確認に何度も答えているうちに、疲れてしまう
- 良かれと思って外出に誘うべきか、そっとしておくべきか、わからなくなる
ここで知っておいていただきたいのは、「不安だから避ける→避けると一時的に楽になる→ますます避けたくなる」という悪循環は、病気の症状の一部だということです。本人の甘えでも、家族の接し方の失敗でもありません。
4. ご本人へ|不安をゼロにしようと、しなくて大丈夫です
不安障害とのつき合いで大切なのは、「不安を完全になくすこと」を目標にしないことだといわれています。
- 発作は、ピークを越えればおさまっていきます。パニック発作は数分でピークに達し、時間がたてばおさまっていくといわれています。「発作で死ぬことはない」と知っておくだけでも、恐怖の感じ方が変わることがあります
- 不安があっても、できたことに目を向ける。「不安だったけど、ポストまで行けた」——その記録が積み重なると、ご自身の回復が見えやすくなります
- 調子の良い日に、無理をしすぎない。「今日はいけそう」という日に一気に挑戦して反動が来ることがあります。小さな一歩を、何度も繰り返すほうが近道といわれています
- カフェインや睡眠不足は、不安を強めることがあります。生活リズムを整えることも、立派な治療の一部です
5. ご家族へ|「安心係」を、全部背負わなくて大丈夫です
ご家族にお伝えしたいのは、「もっとこうすべき」ではなく、しなくていいことです。
- すべての外出に付き添わなくて、大丈夫です。付き添いを断ることは、見捨てることではありません。「ここまでは一緒に行けるよ」と、できる範囲を正直に伝えていいのです
- 「絶対大丈夫」と保証し続けなくて、大丈夫です。確認への答えで不安が消えるのは一時的だといわれています。答え続けて疲れてしまったら、「心配なんだね」と気持ちを受け止めるだけでも十分です
- 外に連れ出そうと、がんばらなくて大丈夫です。回避を急に変えさせようとすると、お互いがつらくなります。挑戦のペースは、本人と主治医・支援者が一緒に決めていけます
- ご家族自身の予定を、あきらめなくて大丈夫です。支える人が休めていることは、ご本人の安心にもつながります
そばにいて、いつも通りに過ごす。それだけで、ご家族は十分に大きな支えになっています。
6. お薬と通院は「自己判断でやめない」が合言葉
不安障害の治療では、SSRIなどの抗うつ薬や、抗不安薬が使われることがあります。ここでつまずきやすいポイントが2つあります。
- SSRIは、効果を感じるまでに数週間かかることがあるといわれています。「飲んでもすぐ楽にならない」と感じても、自己判断で中断せず、主治医に相談してください
- 抗不安薬(頓服を含む)は、自己判断で増やしたり減らしたりしないことが大切です。種類によっては急にやめると調子を崩すことがあるといわれており、量の調整は必ず主治医と一緒に行ってください
「薬に頼りたくない」というお気持ちをうかがうことも多くあります。その気持ちごと、主治医や訪問看護師に話していただいて大丈夫です。
7. 訪問看護でできること
精神科訪問看護は、主治医の指示書にもとづいて、看護師や作業療法士がご自宅にうかがう医療保険のサービスです。不安障害・パニック障害の方には、たとえばこんな関わりをしています。
- 体調と不安の波を一緒に振り返り、ご本人のペースで「できたこと」を確認する
- 発作が起きたときの過ごし方を、落ち着いているときに一緒に整理しておく
- お薬の飲み心地や困りごとを聞き取り、主治医に伝わるようお手伝いする
- 外出や生活範囲の広げ方について、主治医の方針のもとで小さな一歩を一緒に考える
- ご家族のお話をうかがい、抱え込みすぎていないかを一緒に確認する
「誰かが定期的に来てくれる」こと自体が、ご本人にもご家族にも、安心の土台になります。
訪問看護でやっている具体的な内容は、不安障害・パニック障害の訪問看護でやっていることでもご紹介しています。
8. おわりに|ひとりで・家族だけで、抱えなくて大丈夫です
不安障害・パニック障害は、まわりから見えにくいぶん、ご本人もご家族も孤立しやすい病気です。でも、回復への道筋がある病気でもあります。
府中よりそい訪問看護ステーションは、精神科に特化した訪問看護ステーションとして、府中市とその周辺地域で、不安障害・パニック障害の方のご自宅での療養を支えています。
ご利用までの流れ
- お電話またはお問い合わせフォームでご相談(主治医がいらっしゃる方は、その段階でOKです。受診先がまだ決まっていない方のご相談にも応じています)
- 主治医に訪問看護指示書のご依頼(ご依頼はわたしたちがお手伝いします)
- ご契約・訪問開始
ご本人からでも、ご家族からでも、ご連絡いただけます。
お電話:042-508-3434(受付 9:00-18:00)
お問い合わせフォーム:こちらから



