
精神科病院のPSW(精神保健福祉士)・退院後生活環境相談員の方へ。医療保護入院の方の退院調整で、訪問看護をいつ・だれに・何を用意して頼めばよいかを、精神保健福祉法の施行規則、厚生労働省の通知、訪問看護療養費の告示・通知の原文から整理しました。引用は原文のままです。
結論を先に|訪問看護へ声をかける時期と、用意するもの
声をかける時期の目安は、退院の日が見えてきた時点です。退院日の指導を退院支援指導加算の対象にするには、退院時に訪問看護指示書の交付を受けている必要があります。退院前の共同指導は、入院中に行います。どちらも段取りが要るため、退院の日が見えてきたら早めに動くと進みます。なお、退院促進通知は、退院後の生活環境に関わる者の紹介や連絡調整を入院早期から行うよう求めています。訪問看護が、退院後の生活環境に関わる者に当たるかは、通知に例示がありません(退院促進通知 第2の4(2)エ)。
訪問看護に頼むときに用意するものは、次の3つです。
- 精神科訪問看護指示書:精神科の医師が交付します
- 共有してほしい情報:診断名、服薬、不調のサイン、連絡先など
- 退院の見込みの日と、退院前カンファレンスの日程
医療保護入院の退院支援のいまの決まり|訪問看護に関わる所だけ
制度の全体は、条文つきでまとめた家族向けの入退院の記事をご覧ください。ここでは、訪問看護に関わる2点だけ確かめます。
- 退院後生活環境相談員は、入院後7日以内に選任されます(精神保健福祉法施行規則 第15条の3)。退院促進通知は、相談員を、退院に向けた取組や入院に関することについて「最初に相談することができる窓口」としています(第2の4)。
- 退院支援委員会は、入院期間が経過する前に、入院を継続する必要があるかどうかを審議するために開かれます(施行規則 第15条の11 第1項)。退院促進通知は、審議の対象を入院期間の更新が必要となる方としています(第4の2)。
訪問看護はどこに入れるか|入院中から退院後までの流れ
時期ごとに、病院・主治医の側と、訪問看護が関われる場面を並べます。
| 時期 | 病院・主治医の側 | 訪問看護が関われる場面 |
|---|---|---|
| 入院期間満了の1か月前から当日まで | 更新が必要な方の退院支援委員会を開きます(施行規則 第15条の11、退院促進通知 第4の2) | 本人が希望し、病院が書面で知らせた場合に加わる道があります(当たるかは言い切れません) |
| 退院前 | 入院先の主治医や職員が、訪問看護の看護師等と共同して、在宅での療養上必要な指導を行います | 共同指導に加わり、内容を文書で提供します(退院時共同指導加算) |
| 退院日 | 退院時にも、精神科の医師が精神科訪問看護指示書を交付できます(医科通知 I012-2(3)) | 退院日に在宅で療養上必要な指導を行います(退院支援指導加算。対象は決まっています) |
| 退院後 | 精神科訪問看護指示書の有効期間は6か月以内です(医科通知 I012-2(1)) | 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)は、週3日が限度。退院日から3か月以内は週5日が限度です |
委員会に加わる道すじ 施行規則 第15条の12 第3項は、委員会に外部の人が加わる順番を、次のように定めています。
- 本人が、その人を委員会の構成員とすることを希望する
- 病院の管理者が、あらかじめ、その旨を書面でその人に知らせる
- 知らせを受けた人が、構成員となることを希望する
3のとき、その人は構成員に加わり、委員会に出席するか、書面で意見を述べることができます。条文には、訪問看護ステーションから申し出る手順は書かれていません。
訪問看護ステーションが委員会に加われる者に当たるかどうかは、言い切れません。参加を考えるときは、本人の希望を確かめたうえで、病院の管理者にご相談ください。対象は、条文で「地域援助事業者その他の当該医療保護入院者の退院後の生活環境に関わる者」と書かれています。訪問看護ステーションの名前は、条文にも通知にも例として挙がっていません。通知が例に挙げるのは、地域援助事業者のほか、入院前に本人が通院していた医療機関や、退院後に診療を受ける予定の医療機関等です(退院促進通知 第4の3)。出席は、本人の了解が得られる場合には、オンライン会議等でも可能とされています(同)。
退院支援委員会は、施行規則が定めた会議です。退院前カンファレンスという言葉は、告示第74号にも、訪問看護療養費の留意事項通知(保発0305第19号。以下、留意事項通知)にも出てきません。診療報酬では、退院時共同指導として要件が決まっています。
頼むときに用意するもの|精神科訪問看護指示書
精神科訪問看護を始めるには、精神科訪問看護指示書が要ります。決まりは次のとおりです。
- 書くのは精神科の医師:留意事項通知は、主治医を「精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師」に限っています(第3の2(1))。
- 本人または家族等の同意:医科の留意事項通知(保医発0305第6号。以下、医科通知)は、医師が「当該患者又はその家族等の同意を得て」指示書を作ると書いています(I012-2(1))。
- 宛先:本人または家族等が選んだ訪問看護ステーションあてに交付します(医科通知 I012-2(1))。医師に依頼する前に、どのステーションにするかを本人と確かめておくと進みます。
- 有効期間:「6月以内に限る。」とされています。1か月の指示のときは、有効期間を書く必要はありません(同)。
- 退院時の交付:医科通知は、指示を、当該患者に対して主として診療を行う保険医療機関が行うことを原則とし、「退院時に1回算定できる」としています(I012-2(3))。
指示書の依頼の流れは、紹介の実務ガイドにまとめています。
退院前カンファレンス・退院日・退院直後に訪問看護で算定できるもの
訪問看護の側の点数と要件を並べます。金額は、令和8年6月1日から適用の告示第74号のものです。加算の全体像は、加算の解説にあります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 退院時共同指導加算 | 8,000円 |
| 退院支援指導加算 | 6,000円 |
| 外泊中の訪問(精神科訪問看護基本療養費(Ⅳ)) | 8,500円 |
表の金額は、告示が定める費用の額です。
1. 退院時共同指導加算(告示第74号 区分番号02 注4、留意事項通知 第5の4(1))
このあとに出てくる「疾病等の利用者」は、基準告示(訪問看護ステーションの基準等の告示)第2の1が、週3日を超えて訪問看護を行う必要がある利用者であって、特掲診療料の施設基準等の別表第七に掲げる疾病等の者、または別表第八に掲げる者としているものです。
- 看護師等(准看護師を除く)が、入院中の方の主治医または職員と共同して、本人または看護に当たっている者に、在宅での療養上必要な指導を行い、その内容を文書で提供したときに算定できます。退院後の最初の訪問のときに、退院につき1回です(疾病等の利用者は、複数日に指導を行った場合に限り2回)。
- 他の訪問看護ステーションがすでに算定している場合は、算定できません。ただし疾病等の利用者は、合わせて2回までです(注6、留意事項通知 第5の4(3))。
- ビデオ通話でも算定できます。画面上で利用者の個人情報を共有するときは、利用者の同意が必要です(留意事項通知 第5の4(6)(7))。
2. 退院支援指導加算(告示第74号 区分番号02 注7、留意事項通知 第5の5(1))
- 看護師等(准看護師を除く)が、退院日に在宅での療養上必要な指導を行った場合に、退院日の翌日以降の最初の訪問のときに1回算定できます。
- 対象は、基準告示 第2の8で決まっています。退院日に療養上の退院支援指導が必要な利用者であって、次のいずれかに当たる方です。
- 「特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者」
- 「特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる者」
- 「退院日の訪問看護が必要であると認められた者」
- 精神科の方が対象になるかどうかは、この3つのどれかに当たるかで決まります。3つめは疾病を限っていません。ただし、だれが認めるかは、告示に書かれていません。
- 退院時に訪問看護指示書の交付を受けていることが条件です(留意事項通知 第5の5(3))。この「訪問看護指示書」が精神科訪問看護指示書を含むかどうかは、通知に書かれていません。
- 算定できるのは、1人の利用者につき1つのステーションだけです。入院先の看護師等が行う退院日の訪問指導とは、併せて算定できます(第5の5(4))。
- 長時間の8,400円は、基準告示 第2の3(1)の対象の方に、90分を超える指導(複数回は合計)を行った場合に限られます(第5の5(1)(2))。
3. 外泊中の訪問(精神科訪問看護基本療養費(Ⅳ))(告示第74号 区分番号01-2 注3、留意事項通知 第3の6)
- 入院中の方が、在宅療養に備えて一時的に外泊(1泊2日以上)をする際の訪問です。入院中1回に限り算定できます。疾病等の利用者で、外泊が必要と認められた方は、入院中2回まで算定できます(第3の6(1))。
- 対象は、基準告示 第2の2で決まっています。別表第七・第八に当たる方のほか、「その他在宅療養に備えた一時的な外泊に当たり、訪問看護が必要であると認められた者」です。
- 入院中の主治医から交付を受けた精神科訪問看護指示書が要り、届出をした訪問看護ステーションの保健師等が行います。同じ日に訪問看護管理療養費は算定できません。
4. 退院後の訪問回数(告示第74号 区分番号01-2 注1・注2、留意事項通知 第3の2(2))
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)は、週3日が限度です。退院日から3か月以内は、週5日が限度です。留意事項通知には、次のとおり書かれています。
週3日(当該利用者の退院日から起算して3月以内(ただし退院日は含まない。)の期間において行われる場合は週5日)を限度とする。また、当該利用者が退院後3月となる週においては、当該週のうち退院後3月の期間中に算定した日を除き週3日を限度として算定する。
ここに書いたのは要件の要点です。算定の可否は、原文で確かめてください。
自立支援医療と費用の入口
本人や家族から費用を聞かれたときの入口は、紹介の実務ガイドの料金の説明の章にまとめています。自立支援医療(精神通院医療)も含みます。訪問エリア内は交通費無料(自己負担なし)です。
自立支援医療(精神通院医療)のしくみと申請の流れは、自立支援医療のしくみの解説で説明しています。自立支援医療を使う場合の月の自己負担のめやすは、自己負担額の計算ツールで概算できます(実際の額は異なる場合があります)。
つなぐときに共有してほしい情報
様式は問いません。本人の意向への配慮と個人情報の保護は、退院促進通知でも求められています(第2の1(3))。共有する範囲は、本人の同意を確かめてから決めてください。
- 診断名と、病院・外来の主治医の連絡先
- 服薬の内容と飲み方、飲み忘れや中断のときの様子
- 不調のサインと、そのときの対処(クライシスプランがあれば、その写し)
- 緊急時の連絡先(本人が同意した範囲で)
- 本人が希望する退院後の暮らし(相談員が聴いた内容)
- すでに関わっている人(家族等、地域援助事業者、市町村など)
- 退院後の外来の医療機関と、最初の受診日
よくあるつまずき
指示書の出どころが、外来の主治医に替わるとき 精神科訪問看護指示書を書けるのは、精神科を標榜する保険医療機関で精神科を担当する医師に限られます(留意事項通知 第3の2(1))。退院後の外来の医師がこれに当たるかを、退院前に確かめてください。入院先と外来が別のときは、どちらの医師がいつからの分を書くかも、退院前に決めておきます。
退院日が急に決まったとき 次の3つが間に合わないことがあります。
- 精神科訪問看護指示書の交付(退院日に訪問する場合は、退院時に交付を受けていることが条件です)
- 退院前の共同指導の日程
- 退院日の訪問の時間帯と、退院後の最初の外来日
最新の空き状況は、お電話でご確認ください。
本人が乗り気でないとき 精神科訪問看護指示書は、本人または家族等の同意を得て交付されます。退院促進通知も、相談員に、本人の意向を尊重した退院促進を求めています(第2の4(2)ア)。まず本人の意向を確かめるところから始めてください。
よくあるご質問
訪問看護へは、いつ声をかければよいですか?
目安は、退院の日が見えてきた時点です。退院日の指導を退院支援指導加算の対象にするには退院時に訪問看護指示書の交付を受けている必要があり(留意事項通知 第5の5(3))、退院前の共同指導は入院中に行うためです(告示第74号 区分番号02 注4)。通知は、退院後の生活環境に関わる者の紹介や連絡調整を入院早期から行うよう求めています。訪問看護が、退院後の生活環境に関わる者に当たるかは、通知に例示がありません(退院促進通知 第2の4(2)エ)。ご相談は、お問い合わせページまたは電話(042-508-3434)で受け付けています。初回のご相談は無料です。
精神科訪問看護指示書は、入院先の主治医と退院後の外来の主治医のどちらが書きますか?
書けるのは、精神科を標榜する保険医療機関で精神科を担当する医師です(留意事項通知 第3の2(1))。医科通知は、指示を、主として診療を行う保険医療機関が行うことを原則とし、退院時に1回算定できるとしています(I012-2(3))。入院先と外来が別のときにどちらが書くかは、通知から決まりません。退院前に決めておいてください。
退院日の訪問指導は、訪問看護の加算の対象になりますか?
退院日に在宅で療養上必要な指導を行う訪問は、退院支援指導加算の対象になりえます(告示第74号 区分番号02 注7)。対象は基準告示 第2の8で決まり、退院時に訪問看護指示書の交付を受けていることが条件です(留意事項通知 第5の5(3))。ご相談は、お問い合わせページまたは電話(042-508-3434)で受け付けています。最新の空き状況は、お電話でご確認ください。
退院直後は、週に何回まで訪問に入れますか?
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)は、週3日が限度です。退院日から起算して3か月以内(退院日は含みません)は、週5日が限度です(告示第74号 区分番号01-2 注1・注2、留意事項通知 第3の2(2))。
本人が乗り気でないときは、どうすればよいですか?
まず本人の意向を確かめるところから始めてください。精神科訪問看護指示書は、本人または家族等の同意を得て交付されます(医科通知 I012-2(1))。
お問い合わせ
この記事は、令和8年10月時点の原文にもとづいています。制度の読み方に迷うときは、告示・通知の原文と、管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
府中よりそい訪問看護ステーションは、東京都府中市を中心に精神科訪問看護を行っています。ご相談は、お問い合わせページまたは電話(042-508-3434)で受け付けています。初回のご相談は無料です。退院後の支援の流れ、体制、訪問エリア、空き状況は、病院・PSWの皆様へのご案内にまとめています。
出典(すべて公的機関)
- 厚生労働省「措置入院者及び医療保護入院者の退院促進に関する措置について」(障発1127第7号 令和5年11月27日。令和8年3月26日一部改正)=退院促進通知
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則(昭和25年厚生省令第31号)=施行規則
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第74号)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保発0305第19号)=留意事項通知
- 訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等(平成18年厚生労働省告示第103号。令和8年厚生労働省告示第75号による改正後)=基準告示
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号。0529訂正後)別添1 I012-2=医科通知


