統合失調症の幻聴、家族はどうする?|声かけと受診の目安【Vol.95】


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「声が聞こえる」「悪口を言われている」と、ご本人が話す。誰もいないのに、誰かと話しているように見える。そんなとき、どう返せばよいか迷う方は少なくありません。

この記事では、統合失調症のある方の幻聴について、次の3つを整理します。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)や東京都など、公的な情報をもとにしています。

  • 出典つきの声かけの言い換え表
  • 受診・連絡の目安
  • 東京・多摩の連絡先(ひまわり・#7119・多摩府中保健所)

陰性症状はVol.92、統合失調症の全体像はVol.50にまとめました。この記事は、幻聴の場面に絞っています。病名を決めるのは医師です。

結論を先に|否定せず、つらさに応える

先に結論を3つお伝えします。

  1. ご本人には、声が本当に聞こえています。NCNPの冊子は、「幻聴や妄想は、ご本人にとっては真実の出来事で、とても怖い思いをしています。」と書いています。
  2. 否定せず、つらい気持ちを受け止めます。同じ冊子は、「否定してしまうと関係性が崩れてしまうことが多いです。」としています。
  3. 行動に出てしまいそうなときや、眠れない日が続くときは、早めに主治医などへ連絡します。連絡先は、次の節にまとめました。

まず確認|すぐ連絡したほうがよいとき、東京・多摩の連絡先

NCNPの冊子は、注意が必要な場面を次のように書いています。

  • 「幻聴や妄想で注意すべき点は、幻聴や妄想によって行動化してしまう場合です。」
  • 「そのような場合は、早急に治療が必要なので、すぐに支援者に相談しましょう。」
  • 「その他にも、自殺の危険性がある、誰かを傷つけそうなどの場合は入院が必要であると思われます。」

連絡先は、差し迫った危険があるとき、平日の昼、夜間・休日、迷うときに分けて並べます。

  • 差し迫った危険があるとき(自分や人を傷つけそうなとき)、急を要するとき:順番を待たず、119番。
  • 平日の昼間:主治医、かかりつけの医療機関。冊子は「昼間の場合はかかりつけのクリニックや病院、保健所に紹介をお願いする」としています。府中市周辺では、東京都多摩府中保健所(042-362-2334)が相談の窓口です。受付時間は、保健所のページでご確認ください。保健所は、「保健師がこころの健康や精神保健に関することについて、ご本人、ご家族、関係者の方からのご相談をお受けしています。」と案内しています。
  • 夜間・休日に受診先を探すとき:精神科二次救急受付窓口「ひまわり」(03-5272-0303)。受付時間は、東京都福祉局のページの表記で「平日土:17時~翌9時 休日:24時間」です(NCNPの冊子では「平日・土」と書かれています)。ページの更新日は2022年10月18日です。最新の受付時間は、東京都のページでご確認ください。
  • 救急車を呼ぶか迷うとき:#7119(東京消防庁救急相談センター・24時間)。

東京都のページには、「当番病院は毎日変わりますので、各病院では、精神科救急の案内や入院の受付は行っていません。」とあります。夜間・休日は、病院へ直接かける前に、「ひまわり」へ連絡してください。

連絡先を順番で持っておく方法は、Vol.72の「連絡先は「順番」で持っておく」の章に書きました。

幻聴とは何か|家族が戸惑う4つの場面

NCNPの「こころの情報サイト」は、統合失調症の症状を二つに分けています。「統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。」

陽性症状の典型が、幻覚と妄想です。「幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられます。」幻覚とは、「実際にはないものをあるように感じる知覚の異常」のことです。

「こうした幻覚や妄想は、本人にはまるで現実であるように感じられるので、病気が原因にあるとはなかなか気づくことができません。」

ご家族が戸惑いやすい場面を、一般的な例として4つ挙げます。

  1. 独り言が増える、誰かと話しているように見える。NCNPのサイトは、周囲から見えるサインの一つに「ぶつぶつと独り言を言っている」を挙げています。
  2. 「悪口が聞こえる」と訴える。同じサイトは、「実際はないのに悪口を言われたなどの被害を訴える」ことを、周囲から見えるサインとして書いています。
  3. 命令する声が聞こえると言う。声に従って動いてしまうおそれがあるときは、前の節の連絡先に相談してください。
  4. テレビや近所の音を怖がる、身近な人を疑う(一般的な例です)。

気づいたときの動き方について、NCNPのサイトは次のように書いています。「早く治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、周囲が様子に気づいたときは早めに専門機関に相談してみましょう。」

受け止め方の原則|冊子の4つと、私たちの補足

NCNPの冊子の考え方を4つにまとめ、私たちの補足を1つ添えます。

  1. 否定しない。「ご本人が幻聴や妄想を訴えたときには否定せず、つらい気持ちを受け止めましょう。」
  2. 先に受け止めて、質問は後にする。冊子は「すぐに質問したりせず、相手の話をまずは受け止めましょう」としています。
  3. 感情的に責めない。冊子は「感情的な批判はやめましょう」としています。
  4. 情報は一つずつ伝える。「情報は一つずつ、具体的に伝えましょう」とあります。
  5. (私たちの補足)声の中身を争わず、聞こえていることのつらさに応える。これは冊子の文ではなく、当ステーションの考え方です。声の内容が本当かどうかを、家族が決めようとしなくて構いません。「怖い思いをしているんだね」(冊子の例)のように、気持ちのほうに言葉を向けます。

訪問看護師が、どんな立ち位置で関わるかは、Vol.29に書きました。

声かけの言い換え表|出典つきの例で、言いがちな返しを言い換える

つい出てしまう返しと、言い換えの例を並べます。1・2行目と、3行目の右側は、NCNPの冊子にある例です。ほかは同じ考え方から作った例です。

言いがちな返し言い換えの例
×「そんな声聞こえるわけないじゃない」○「死ねって声が聞こえてきたらそれは怖いよね」(聞こえた内容を受け止める言い方)
×「盗聴器なんかあるわけないじゃない!」○「怖い思いをしているんだね」/「そんなこと言われたらつらいよね」
×本人が「幻聴がつらいんだ」と話した直後に、「いつから? 何て言ってるの?」と質問する「幻聴がつらいんだね」と、同じ言葉でまず返す
×「また始まったの?」「今日は声がつらそうだね」
×「薬を飲まないからでしょ」「薬のことでつらいことがあれば、先生に話してみよう」

2行目の×と○は、冊子の別の頁の例を並べました。

薬のことを、責めずに話題にするコツは、Vol.78にあります。

受診・連絡の目安|相談するきっかけになること

次のことは、「当てはまるから再発」と決めるためのものではありません。主治医や訪問看護に相談するきっかけの目安です。判断は、主治医が行います。

  • 眠れない日が続く。NCNPの冊子は、再発のサインの例に「眠れなくなる、昼夜逆転の生活になる」を挙げています。
  • 眠れないうえに、イライラや人を疑う気持ちが強まる。NCNPの「こころとくらし」は、不眠が数日から数週間続くなかで、イライラ感や、周囲の人を疑う気持ちが高まる場合を挙げています。こうした気持ちが行動に現れるようになると、「緊急に医療機関を受診する、また入院に至ることがあります」と説明しています。
  • 食事、身だしなみ、日常のことが難しくなる。冊子は「食事を取らなくなる。身だしなみが整わなくなる。日常的なことができなくなる。」を、再発のサインの例にしています。
  • 命令する声が聞こえると言う。NCNPのサイトは、このようなサインに気づいたら、「相談窓口などに相談してみて下さい。」としています。
  • 薬を飲まなくなり、日常生活が難しくなっている。冊子は、「全く服薬しなくなり、幻聴や妄想に左右され、日常生活がままならなくなった場合は入院した方がよいでしょう。」としています。
  • 自分や人を傷つけそうな様子がある。この場合は、前の「まず確認」の連絡先へ、すぐ連絡してください。

再発のサインをご本人と書き出す方法や、調子を崩したときに備えて決めておくことは、Vol.72にまとめました。

薬と治療との関係

NCNPのサイトは、薬について次のように書いています。

  • 「自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、再発を誘発して重症化の危険を高めます。」
  • 「『副作用がつらい』『薬をやめたい、減らしたい』などの悩みがあれば、医師に相談しましょう。」

冊子にも、「絶対に、自己判断で薬の服用をやめず、主治医と相談しながら調整していきましょう。」とあります。

薬を飲んでいないと気づいたときは、責めずに、事実を主治医に伝えてください。飲まなくなった理由の聞き方や、主治医への伝え方は、Vol.78に詳しく書きました。

訪問看護にできること

訪問看護は、主治医の指示にもとづいて始まります。ご本人のお宅にうかがって、体調や暮らしの様子を聞き、主治医とつなぐ役割があります。当ステーションは、主治医や薬局と、ICT(情報共有のしくみ)で診療に関わる情報を共有しています。

ご家族からは、次のような相談をお受けします。

  • 幻聴の訴えに、どう返したらよいか
  • ご本人が会うことをためらうときの、はじめ方(まずご家族とのお話から始める形も相談できます)
  • 主治医に、どんな様子を伝えればよいか

ご本人がまだ受診していない段階でも、ご家族だけで相談できます。初回のご相談は無料で、交通費の自己負担もありません。

訪問看護ステーションは、事業所ごとに得意な分野や体制が違います。ほかの事業所もご覧になって、ご本人に合うところを選んでください。

ご家族自身を守る|ひとりで抱えないために

幻聴の訴えに毎日向き合うご家族は、疲れて当然です。疲れてしまうのは、関わり方が足りないからではありません。

ご家族の相談先として、東京都多摩府中保健所(042-362-2334)があります。ご家族が限界を感じたときの選択肢は、Vol.53にまとめました。

この記事で書けるのは、公的な情報にもとづく一般的な目安です。声の内容や状況は人によって違い、記事だけでは判断できません。気になるときは、主治医にご相談ください。

府中よりそい訪問看護ステーションへのご相談は、電話(042-508-3434)またはお問い合わせページで受け付けています。

よくあるご質問

「声が聞こえる」と言われたとき、どう返せばよいですか?

否定せず、聞こえていることのつらさを受け止めます。NCNPの冊子の例は、「怖い思いをしているんだね」です。声の内容が本当かどうかの話に入らず、気持ちのほうに言葉を向ける、というのが私たちの考えです。うまく返せなかったと感じたときは、次の機会に言い換えることができます。

独り言が増えました。診断を受けていませんが、病院に相談してよいですか?

相談してかまいません。NCNPのサイトは、周囲が様子に気づいたときは早めに専門機関に相談するよう書いています。平日は、かかりつけの医療機関や東京都多摩府中保健所(042-362-2334)へ。病名を決めるのは医師です。

幻聴を訴えて、夜も眠れていないようです。どこに連絡すればよいですか?

平日の昼間は、主治医へ。夜間・休日に受診先を探すときは、精神科二次救急受付窓口「ひまわり」(03-5272-0303)です。受付時間は東京都のページでご確認ください。救急車を呼ぶか迷うときは#7119、急を要するときは119番です。

薬をやめたあとに、幻聴を訴えるようになりました。どうすればよいですか?

責めずに、早めに主治医へ伝えてください。NCNPのサイトは、自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、再発を誘発して重症化の危険を高めるとしています。やめた理由も、あわせて伝えると主治医が判断しやすくなります。

本人が受診や訪問看護を嫌がるときは、家族だけで相談できますか?

ご本人が受診していなくても、ご家族だけで相談できます。初回のご相談は無料です。電話(042-508-3434)またはお問い合わせページで受け付けています。はじめ方は、ご家族とのお話から、状況に合わせて一緒に考えます。

あわせて読みたい

出典

  • 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所「こころの情報サイト」統合失調症(2026年10月14日閲覧):https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=tQtLd1xVUp1wHJMQ
  • NCNP 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部「訪問支援で使える統合失調症情報提供ガイド(家族心理教育編)」(2019年9月発行)。PDFの頁=26(幻聴への対応)・40から42(声かけ)・17(薬)・27(再発のサイン)・60(入院):https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiiki/documents/kazokushinrikyoikuhen.pdf
  • NCNP 精神保健研究所「こころとくらし」再発の注意サインへの対処:https://cocokura.ncnp.go.jp/recurrence/technique-sign/
  • 東京都福祉局 精神保健医療課「精神科二次救急指定医療機関一覧」(更新日 2022年10月18日):https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/about/soshiki/syougai/seishiniryo/oshirase/seishinkaniji
  • 東京都多摩府中保健所「精神保健福祉相談(こころの健康相談)」(更新日 2022年3月8日):https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamafuchu/hoken/kokoro/soudan
  • 東京消防庁「東京消防庁救急相談センター」:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu_adv/soudan-center.html

統合失調症について、公的機関の情報をもとにした短い説明と、困りごと別の記事を「統合失調症の解説ページ」にまとめています。

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