
訪問看護の基本的な点数体系が大きく改定されました
2026年度の診療報酬改定では、訪問看護サービスの土台となる「訪問看護基本療養費」が大幅に見直されることになりました。この改定は、在宅医療の質を高め、よりきめ細かで患者中心のサービス提供を実現するために設計されています。特に注目すべきは、訪問看護管理療養費の見直しにより、月の初日と2日目以降で異なる評価が行われるようになったということです。
訪問看護管理療養費は、訪問看護ステーションの運営基盤を支える重要な加算であり、患者の管理・指導に必要な時間と労力を評価するものです。今回の改定では、この評価がより詳細化され、施設の機能や体制に応じた段階的な報酬設定が導入されました。
基本療養費改定の主要ポイント
訪問看護管理療養費が月の初日と2日目以降で区分され、より詳細な評価が実施されるようになりました。機能強化型などの区分も新たに設定されています。
訪問看護管理療養費の新しい点数構造
改定によって、訪問看護管理療養費は月の初日にのみ算定される「月の初日加算」と、2日目以降に月1回算定される「月の2日目以降加算」に区分されました。これにより、患者の初期段階での詳細なケアマネジメントと、継続段階でのサービス調整が区別されるようになったのです。
月の初日の訪問看護管理療養費は、機能強化型かどうかで大きく異なります。機能強化型1は13,760円、機能強化型2は10,460円、機能強化型3は9,030円、新たに設定された機能強化型4は9,030円となっています。機能強化型の認定を受けていない事業所については、7,710円という設定になります。
これらの差異は、事業所が提供できる サービスの質と専門性の水準を反映しており、より高度な機能を持つ事業所がそれに見合った評価を受けることができる仕組みになっています。患者さんにとっても、どの機能レベルの事業所からサービスを受けているかを理解することで、サービスの内容と質についての認識が深まります。
| 事業所の機能区分 | 月初日加算額 | 対応内容 |
|---|---|---|
| 機能強化型1 | 13,760円 | 最高水準の管理療養 |
| 機能強化型2 | 10,460円 | 高度な管理療養 |
| 機能強化型3 | 9,030円 | 基準以上の管理療養 |
| 機能強化型4(新設) | 9,030円 | 新設機能レベル |
| その他の事業所 | 7,710円 | 基本的な管理療養 |
2日目以降の管理療養費と統合化
2026年度の改定では、従来の「訪問看護管理療養費1」と「訪問看護管理療養費2」が統合されました。この統合により、施設基準の届出が不要になり、手続きがシンプル化されています。代わりに、単一建物に居住する利用者の人数と訪問日数に基づいた、より細分化された評価が導入されました。
具体的には、同じ建物に住む利用者が20人未満の場合は3,010円が算定され、20人以上50人未満の場合は月の訪問日数に応じた段階的な報酬が設定されます。20~50人の場合、月の15日目までは2,510円、16~24日目は2,310円、25日目以降は2,210円という段階的な構造が採用されています。
50人以上の大規模建物での利用者に対しては、さらに異なる点数設定がなされます。月の15日目までは2,410円、16~24日目は2,210円、25日目以降は2,010円となっており、利用者数と訪問頻度に応じた効率的な管理が評価される仕組みになっています。
利用者数分類
加算の段階
一体化
特別地域訪問看護加算と難治性疾患への対応
へき地や離島などの特別な地域で訪問看護を提供する場合の加算要件も見直されました。従来の移動時間1時間以上という基準に加えて、往復の移動時間と実際の訪問実施時間の合計が2時間30分以上という新しい要件が追加されました。これにより、移動距離だけでなく、実際の労力を更に適切に評価する仕組みが構築されています。
また、難治性皮膚疾患を持つ利用者への訪問看護も新しく対応対象に加わりました。従来は別の疾患分類に含まれていたものが、専門的な皮膚ケアの重要性を認識して、週4日以上算定可能な対象に追加されたのです。難治性の皮膚疾患は症状管理が複雑であり、より高頻度の訪問が必要になることが多いため、この改定は臨床現場のニーズを反映した重要な変更です。
乳幼児に対する加算についても見直しが行われました。訪問看護での乳幼児加算は従来の1,300円から1,400円に引き上げられ、小児患者への対応に必要な専門知識と手技に対する評価がより適切になりました。
専門職向け:請求・運営体制の実装方針
- 請求システムの大幅改修:訪問看護管理療養費が月の初日と2日目以降に分化したため、既存の請求ソフトウェアの修正が必須。建物単位での利用者数カウントと訪問日数の自動計算機能が必要になり、人為的ミスを防ぐためのチェック機能も組み込むべき
- 機能強化型の維持管理:複数の機能強化型区分(1~4)が存在するため、各事業所の現在の機能レベルを正確に把握し、要件を満たしているかの継続的な確認が重要。要件変更時の対応計画も準備しておくこと
- 同一建物の範囲定義:「同一敷地内の建物も同一建物とする」という新規定により、これまでと異なる利用者グルーピングが発生する可能性がある。対象建物の正確な把握と、システムへの反映が必須
- 訪問日数の月単位管理:20~50人、50人以上の場合で15日、16~24日、25日以降で異なる報酬が発生するため、月の訪問日数を正確に追跡する仕組みが必要。特に月をまたぐ案件や調整が複雑な場合の処理方法を事前に設計する
- 特別地域要件の確認:移動時間が「1時間以上」か「往復+実施時間2時間30分以上」かのいずれかを満たすという新基準の確認システムを構築し、対象患者の正確な把握を実施
- 難治性疾患・乳幼児への対応強化:新たに算定対象が拡大された難治性皮膚疾患や乳幼児については、診断名の正確な入力と要件チェックを自動化し、見落としや過誤請求を防ぐ
基本療養費改定の経営的インパクト分析
- 月の初日加算が月1回に限定されたため、従来の管理療養費算定パターンからの収益構造の変化を分析し、既存患者群での請求額シミュレーションを実施して、実際の経営への影響度を把握すること
- 単一建物居住利用者の人数区分により、同じ建物での複数患者対応が効率的と評価されるケースもあれば、逆に訪問頻度が低下すると点数が下がるケースもある。既存患者の分布状況を詳細に分析し、新体制下での収益予測を策定する
- 機能強化型の認定維持が重要になるため、現在の認定レベルを確認し、上位レベルへの昇格が可能か、その場合の要件充足までの課題は何かを整理する
- 難治性疾患や乳幼児など新たに対応範囲が拡大された分野については、新規患者の獲得機会として位置付け、スタッフの研修と診療所・病院との連携構築を進める
- 訪問看護管理療養費1・2の統合により、施設基準の届出手続きが簡素化されたメリットを活かし、事務作業の効率化を推進して業務負担を軽減する
実装に向けた準備
この大幅な改定への対応には、単なるシステム変更にとどまらず、運営全体の見直しが必要です。特に、従来の請求体系から新しい体系への移行期間に、請求遅延やエラーが発生しないよう十分な準備が必要です。
また、利用者からの問い合わせに対応するために、新しい点数体系とその根拠を説明できるスタッフの養成も重要です。透明性のある経営姿勢を示すことで、患者さんの信頼を得られます。
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次号もお楽しみに
参考資料
- 厚生労働省「09_質の高い訪問看護の推進」pp.2,7-8,11-12
- 厚生労働省「訪問看護ステーション向け」pp.13-25
