府中市の精神科訪問看護|認知症・うつ病・発達障害対応

同一建物居住者への訪問看護 ― 評価の細分化を徹底解説


同一建物での訪問看護提供に対する評価が大きく変わりました

2026年度の診療報酬改定では、サービス付き高齢者向け住宅やグループホーム、有料老人ホームなど、同一建物に複数の利用者が居住している環境での訪問看護提供に対する評価が、きめ細かく見直されました。この改定の背景には、在宅医療の推進に伴い、こうした集合住宅での訪問看護のニーズが急速に高まっているという現実があります。

訪問看護基本療養費(II)等の改定により、単に同一建物の利用者数に応じた評価が行われるだけでなく、月当たりの訪問日数によってさらに段階的な評価がなされるようになりました。これは、効率性と質のバランスを取りながら、訪問看護の持続可能な提供を実現するための重要な改定です。

同一建物評価改定の核心

利用者数(2人、3~9人、10~19人、20~49人、50人以上)と月当たりの訪問日数の組み合わせで、きめ細かな評価を実施。同一敷地内の建物も「同一建物」として扱われるようになりました。

訪問看護基本療養費(II)の新しい人数区分

改定により、同一建物に居住する利用者の人数が5つの区分に分類されるようになりました。2人、3~9人、10~19人、20~49人、50人以上という5段階の区分に基づいて、異なる点数が適用されます。

まず「2人」という区分は、小規模な住まい環境での訪問看護を想定しています。この場合、看護師等が週3日目までの訪問では5,550円が算定され、週4日目以降は6,550円という高い点数が適用されます。この設定は、利用者数が少ないために移動効率が低い場合でも、質の高い看護サービスの提供をサポートするための配慮が示されています。

次に「3~9人」の利用者がいる中規模住宅では、週3日目までは2,780円、週4日目以降は3,280円という設定になります。「10~19人」では月20日目までが2,760円、月21日目以降が2,660円となり、利用者数が増えるに従って1回当たりの訪問看護費が低下する傾向が見られます。これは、複数の利用者への訪問を同じ移動の中で効率的に行えることを反映した点数設定です。

「20~49人」の場合は月20日目までが2,710円、月21日目以降が2,610円、そして「50人以上」では月20日目までが2,610円、月21日目以降が2,510円という最も低い点数が適用されます。ただし、この「低い」というのは相対的な意味であり、絶対的には十分な評価が行われていることに注意が必要です。

同一建物の利用者数 区分A 区分B
2人
※週3日目まで/週4日目以降
5,550円 6,550円
3~9人
※週3日目まで/週4日目以降
2,780円 3,280円
10~19人
※月20日目まで/月21日目以降
2,760円 2,660円
20~49人
※月20日目まで/月21日目以降
2,710円 2,610円
50人以上
※月20日目まで/月21日目以降
2,610円 2,510円

訪問時間の標準化と包括型訪問看護療養費の新設

改定により、「適切な時間の指定訪問看護」として、30分以上を標準とする新しい基準が設定されました。これまでよりも短い時間での訪問が抑制される方向性が示され、質の高いケアの提供時間を確保する姿勢が明確になったのです。特に重要な点は、20分を下回る訪問は原則として算定できなくなったということです。これにより、利用者への負担を減らすだけでなく、訪問看護師の業務の意味と充実感を確保する取り組みとなっています。

さらに注目すべき改定は、「包括型訪問看護療養費」という新しい加算制度の導入です。これは、高齢者住まい等で24時間体制で計画的または随時の頻回訪問を行う場合に、1日当たりの包括評価として算定されるものです。

包括型の評価は、訪問看護時間の長さに応じて3段階に区分されています。30分以上60分未満の場合、単一建物に20人未満の利用者がいれば7,010円、20~50人なら6,310円、50人以上なら5,960円となります。60分以上90分未満では、それぞれ11,010円、9,910円、9,360円という設定です。そして90分以上の場合は、14,010円、13,730円、13,450円という最も高い評価が行われます。

この包括型評価の導入は、短時間の訪問を繰り返すのではなく、効率的で質の高い長時間訪問を奨励する政策意図が反映されており、在宅医療の質的向上を目指す改定の方向性を示しています。

加算制度の人数段階化と複数訪問加算

難病等複数回訪問加算、夜間・早朝および深夜訪問看護加算、複数名訪問看護加算など、従来の各種加算についても、同一建物に居住する利用者の人数区分に基づいた見直しが行われました。これにより、複数の加算が組み合わせられる場合でも、建物単位での効率性が適切に評価される仕組みが構築されています。

特に複数名訪問看護加算は、複数の看護師が同時に訪問する必要がある利用者ケアに対する評価であり、利用者の重症度や複雑な医療ニーズに対応するために不可欠な制度です。この加算も人数段階で見直されることで、より正確で公平な評価が実現されるようになりました。

5段階
利用者数による
区分

30分
訪問時間の
最低基準

3層
包括評価の
時間区分

同一敷地内の建物に関する新規定

改定では「同一敷地内の建物も同一建物とする規定」が新たに設定されました。これにより、複数の建物が同じ敷地内に立地している場合、それらの建物に居住する利用者を合算して人数区分を判定することになります。

このルール変更は、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどの施設形態の多様化に対応したものと考えられます。同じ運営主体の下で複数棟が存在する場合が増えており、こうした現実に合わせた評価基準の見直しが求められていたのです。

専門職向け:同一建物評価の実装と管理

  • 建物・利用者の正確な分類:同一敷地内の複数建物も「同一建物」と判定される新規定により、請求システムでの建物分類が極めて重要になる。物理的な建物単位と評価対象としての「同一建物」の定義に齟齬がないよう、事前に保険者と確認し、システム設定で正確に反映させること
  • 月当たり訪問日数の追跡:利用者数に応じて週単位(2~9人)または月単位(10人以上)で点数が異なるため、訪問日数管理が極めて重要。特に複数利用者への訪問スケジュールが複雑な場合、自動計算機能により人為的エラーを最小化し、定期的に手作業で検証する二重チェック体制を確立する
  • 訪問時間管理の厳密化:30分以上を標準、20分未満は算定不可という新基準により、訪問記録システムで実際の訪問時間を正確に記録し、不適切な短時間訪問が発生していないかのモニタリングが必須
  • 包括型評価への移行判断:24時間体制での頻回訪問が可能な利用者環境では、包括型評価と従来型評価のどちらが経営的に有利かをシミュレーションし、対象患者の特性に応じた選択肢を検討することが重要
  • 複数加算の組み合わせ管理:難病等複数回加算、夜間・早朝加算、複数名訪問加算などが人数段階で見直されたため、複数加算が適用される場合の組み合わせ計算ロジックを確認し、請求漏れや過誤請求がないか検証する
  • 定期的な利用者数確認:同一建物の利用者数は時間とともに変動するため、月単位で利用者状況を更新し、人数区分が変わった場合の請求額変更が適切に反映されるよう管理体制を整備する

経営戦略への影響と対応方針

  • 同一建物での利用者数が増えるほど1回当たりの訪問看護費が低下する設定であるため、小規模施設での訪問と大規模施設での訪問の採算性を正確に分析し、受託候補先の評価基準を設定すること
  • 包括型評価の導入により、複数の短時間訪問よりも、少ない回数で長時間の訪問を行う方が高く評価される傾向がある。このため、訪問スケジュールの最適化とケアプランの見直しが経営改善の鍵となる
  • 同一敷地内複数建物の利用者を合算する新規定により、既存契約先で突然人数区分が変わり、点数が低下する可能性がある。契約先の施設形態を事前に正確に把握し、経営計画への影響を予測しておくこと
  • 20分未満の訪問が算定できなくなったため、従来短時間訪問で対応していた利用者について、より効率的なケアプラン作成や、複数利用者への同時訪問による工夫が必要になる可能性がある
  • 夜間・早朝、深夜訪問加算が人数段階で見直されたため、24時間対応が必要な利用者を多く抱える事業所では、加算体系の変化による収益への影響を詳細に分析して、スタッフ配置や報酬体系の見直しを検討する

改定への準備と対応

同一建物での評価細分化は、訪問看護の質的向上と経営効率の両立を目指した制度設計であり、適切に理解して運用することが重要です。特に複数の施設との契約がある場合や、小規模施設と大規模施設の両方を対象としている事業所では、人数区分の確認と月単位での訪問日数管理が必須となります。

また、新設された包括型評価の活用により、新しい事業展開の機会も生まれる可能性があります。24時間体制での支援が可能な環境を整備できれば、より高度で質の高い在宅医療サービスの提供者として、市場での立場を強化することができるでしょう。

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次号もお楽しみに

参考資料

  • 厚生労働省「09_質の高い訪問看護の推進」pp.12-16
  • 厚生労働省「訪問看護ステーション向け」pp.26-35

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