一人暮らしの精神疾患のある家族が心配なとき|距離感と気づき方【Vol.79】


一人暮らしの家族が心配なとき 距離感と気づき方

「そろそろ一人暮らしをしたい」とご本人が言い出したとき。あるいは、すでに一人で暮らしているご本人の様子が、電話越しに少し違って聞こえたとき。精神疾患のあるご本人の一人暮らしについて、ご家族から「大丈夫でしょうか」というご相談をいただくことがあります。

この記事では、一人暮らしをしているご本人について、ご家族がどのくらいの距離で関わればよいのか、何を手がかりに変化に気づけばよいのか、そして困ったときにどこへ相談できるのかを整理しました。府中市で使える窓口と、法律で定められている制度についても、条文と公的機関の案内をもとにまとめています。

「一人暮らしをさせて大丈夫?」と感じたとき、まず知ってほしいこと

精神疾患のある方が一人で暮らすことについて、「まだ早いのではないか」「何かあってからでは遅い」と感じるご家族は少なくありません。一方で、ご本人にとっては、自分の生活を自分で決めることが回復の一部になっている場合もあります。

ここで大切なのは、「一人暮らしができるかどうか」を一度きりの判断にしないことだと考えています。体調には波があり、支えられる量も時期によって変わります。今の状態で決めきってしまうより、「どこまでは一人でできて、どこからは誰かの手を借りるか」を分けて考えるほうが、現実に近い形になります。

また、ご家族が心配していること自体は、止める必要のあるものではありません。心配しているから見えているものがあり、それが早い段階の気づきにつながることもあります。問題になりやすいのは、心配の量ではなく、その心配をどう伝えるかのほうです。

心配で毎日連絡してしまう、は珍しいことではありません

一人暮らしが始まると、連絡の頻度をどうするかで迷うご家族が多くいらっしゃいます。毎日連絡するとご本人が煩わしがる。かといって間を空けると、今度はこちらが落ち着かない。この揺れは、多くのご家族が通る道です。

連絡の回数について、外から「週に何回が適切です」と決めることはできません。適切な距離は、ご本人の状態と、ご家族自身が安心していられる範囲の両方で決まるためです。ただ、次のような整理の仕方は、ご相談の中でよく手がかりになります。

  • 頻度そのものより、「決め方」をご本人と共有する。「心配だから毎日かける」ではなく、「週に1回はこちらから連絡する。それ以外は何かあったときに」と、あらかじめご本人と決めておく
  • 連絡の目的を、確認から共有へ寄せる。「ちゃんと薬を飲んだか」を毎回確かめる形になると、ご本人にとっては監視のように感じられることがあります
  • 返事がないときの扱いを、先に決めておく。「2日返事がなければ一度訪ねる」など、線を引いておくと、返事がないたびに不安が膨らむことを避けやすくなります

連絡の頻度を減らすことが目的ではありません。心配を抱えたまま毎日連絡し続ける状態は、ご家族の側が先に消耗します。ご家族自身の消耗については、ご家族のしんどさを軽くするための考え方でも触れています。

一人暮らしだからこそ、「気づきにくいサイン」を大事にする

同居していれば、食事の量や部屋の様子、朝起きてくる時間などから、なんとなく変化が伝わります。一人暮らしでは、その手がかりが減ります。だからこそ、少ない接点の中で何を見るかを決めておくと役に立ちます。

ご相談の中でよく手がかりになるのは、次のようなところです。

  • 生活のリズム。電話に出る時間帯が変わった、昼に連絡すると寝ていることが増えた
  • 眠りの様子。「あまり眠れていない」という言葉が続く。眠りの変化は、体調の変化より先に表に出ることがあります
  • 通院と服薬の続き方。次の受診日を覚えていない、薬の話題を避けるようになった
  • 食事と買い物。同じものばかりになった、買い物に出た話が出てこなくなった
  • お金の使い方。急な出費が増えた、逆に必要なものを買わなくなった
  • 人との接点。以前は話に出ていた友人や通所先の名前が、出てこなくなった

眠れない状態が続いているときの受け止め方は不眠が続くときのご家族の関わり方に、薬を飲まなくなったときの伝え方は薬を飲まないときの声かけと主治医への伝え方にまとめています。

これらは「見つけたらすぐ動く」ためのものではありません。1つあったから悪化している、というものでもありません。いくつかが同じ時期に重なったときに、少し気にかけておく。その程度の目安として持っておくと、日々の連絡が確認作業になりにくくなります。

訪問看護は、一人暮らしの方にどう関わるか

精神科の訪問看護は、看護師などがご自宅に伺い、体調や生活の様子を一緒に確認しながら、療養生活を支える仕組みです。一人暮らしの方の場合、次のような関わりが中心になります。

  • 体調と気分の変化を、定期的に一緒に確認する
  • 薬の飲み方について、ご本人の困りごとを聞きながら整理する
  • 睡眠や食事、生活リズムの立て直しを一緒に考える
  • 受診の予定や、主治医に伝えたいことの整理を手伝う
  • 必要に応じて、主治医へ状況を報告する

訪問看護の利用は、ご家族の希望だけで始められるものではありません。健康保険法第88条第1項は、訪問看護療養費の対象となる方を、疾病または負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある方と定めています。そのうえで、主治の医師がその治療の必要の程度について厚生労働省令で定める基準に適合していると認めた方に限る、としています。つまり、主治医が必要と判断することが出発点になります。

また同条第3項では、指定訪問看護を受けようとする人は、自己の選定する指定訪問看護事業者から受けるものとされています。どの事業所に来てもらうかは、ご本人が選べる仕組みになっているということです。一人暮らしの場合、この選ぶという部分にご本人の意向が反映されやすいほうが、その後が続きやすいと感じています。

ご本人がまだ受診していない段階でも、ご家族だけでご相談いただくことはできます。その場合の進め方はご家族だけで相談できるかについての記事で詳しく説明しています。費用の目安は自己負担額の計算ツールでご確認いただけます。

何かあったときの連絡体制を、先に決めておく

一人暮らしで最も不安が大きいのは、「何かあったときに気づけないのではないか」という点だと思います。この不安は、起きてから考えるより、落ち着いている時期に段取りを決めておくほうが軽くなります。

決めておくとよいのは、次のようなことです。

  • 調子が崩れ始めたとき、ご本人が最初に連絡する先はどこか
  • ご家族が連絡を取れなくなったとき、次にどこへ連絡するか
  • 受診の予定と、主治医・薬局の連絡先をどこに控えておくか
  • 鍵の扱い。緊急のときに誰がどう入るか

体調が崩れる前のサインと、そのときの対応をあらかじめご本人と一緒に書き出しておく方法もあります。入退院を繰り返している場合の考え方は入退院を繰り返すときの備え方にまとめました。

命に関わる状態や意識の異常があるときは119番へ連絡してください。救急車を呼ぶか迷うときは東京消防庁の救急相談センター(#7119)、夜間や休日にどの医療機関にかかればよいか分からないときは東京都医療機関案内サービス「ひまわり」(03-5272-0303)で相談できます。

一人暮らしを支える制度は、訪問看護だけではありません

ここはあまり知られていない部分ですが、精神障害のある方の一人暮らしを支える仕組みは、障害者総合支援法にも定められています。訪問看護とは別の制度で、目的も担い手も異なります。

自立生活援助

障害者総合支援法第5条第17項は、自立生活援助を次のように定めています。

この法律において「自立生活援助」とは、施設入所支援又は共同生活援助を受けていた障害者その他の主務省令で定める障害者が居宅における自立した日常生活を営む上での各般の問題につき、主務省令で定める期間にわたり、定期的な巡回訪問により、又は随時通報を受け、当該障害者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の主務省令で定める援助を行うことをいう。

定期的に訪問し、必要なときには連絡を受けて相談に応じる。一人暮らしを始めた直後の時期を支えることを想定した制度です。

ただし条文が示すとおり、対象は誰でもというわけではありません。施設や共同生活援助(グループホーム)を利用していた方など、省令で定められた方に限られます。実家から直接一人暮らしを始める場合に使えるかどうかは、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

地域定着支援

同じく第5条第22項は、地域定着支援を次のように定めています。

この法律において「地域定着支援」とは、居宅において単身その他の主務省令で定める状況において生活する障害者につき、当該障害者との常時の連絡体制を確保し、当該障害者に対し、障害の特性に起因して生じた緊急の事態その他の主務省令で定める場合に相談その他の便宜を供与することをいう。

条文が、居宅において単身で生活する方を名指ししたうえで、常時の連絡体制を確保することを内容に据えています。前の見出しで挙げた、何かあったときにどこへ連絡するかという不安に、制度の側から答えようとしている仕組みだと言えます。

これらを利用できるかどうかは、お住まいの自治体での支給決定によります。府中市の場合の窓口は障害者福祉課です。心当たりがあれば一度確認してみてください。

認知症の一人暮らしとは、何が違うか

「一人暮らしの家族が心配」というご相談には、大きく2つの流れがあります。1つは精神疾患のある方について、もう1つは高齢の方に認知症の疑いがある場合です。心配の見た目は似ていても、相談先も使える制度も異なります。

おおまかには、次のように分かれます。

  • 精神疾患のある方:主治医、精神科の訪問看護、障害福祉サービス、障害者福祉課、地域生活支援センターなどが関わります
  • 高齢で認知症が疑われる方:かかりつけ医、介護保険、地域包括支援センターなどが関わります

高齢の方が一人暮らしをしていて、ご家族が「あれ?」と感じる場面については、一人暮らしの親に認知症の疑いがあるときの記事で別に整理しています。ご自身の状況がどちらに近いか迷う場合も、後述の窓口で相談すれば、適した先につないでもらえます。

府中市で相談できる窓口

府中市とその周辺には、精神保健についてご家族が相談できる窓口があります。以下は各機関の案内に記載されている内容です。ご利用の際は、最新の受付時間を各機関にご確認ください。

府中市 健康推進課成人保健係(保健センター)

こころとからだの相談を受け付けています。電話042-368-6511(平日8時30分から17時)。市の案内では、正午から午後1時の時間帯は当番の職員が対応するとされています。

東京都多摩府中保健所 保健対策課 地域保健担当

電話042-362-2334(代表)。所在地は府中市宮西町1丁目26番地の1、東京都府中合同庁舎内です。同保健所の案内では、精神保健福祉相談について「保健師がこころの健康や精神保健に関することについて、ご本人、ご家族、関係者の方からのご相談をお受けしています」と説明されています。ご家族からの相談も受け付けの対象に含まれていることが明記されている窓口です。予約制で専門医による相談も行われています。

地域生活支援センター

市内には地域で暮らす障害のある方とご家族を対象にした支援センターがあります。

  • 地域生活支援センタープラザ(美好町1丁目7番地の2 第一市川マンション202・電話042-358-2288)。市の案内では「主に精神障害のある方やそのご家族に対し、次の事業を行います。」とされ、生活相談として服薬・金銭管理・人間関係・公的手続きや福祉サービス利用などの相談が挙げられています
  • 地域生活支援センターあけぼの(寿町3丁目9番地の11 山上ビル1階・電話042-358-1085)。市の案内では、地域で生活する障害のある方とご家族を対象として、サービス利用の支援や相談、講座の開催などを行うとされています
  • 地域生活支援センターふらっと(清水が丘3丁目23番地の17 1階・電話042-370-1781)。こちらも対象を特定の障害に限定せず、同様の支援を行っています

府中市 障害者福祉課

電話042-335-4162(ほか、係ごとに番号があります)。自立支援医療(精神通院)や障害福祉サービスの申請を扱う課です。前の見出しで触れた自立生活援助・地域定着支援についても、まずはこちらにご相談いただき、担当の係におつなぎいただく形になります。

ご家族自身の孤独感や罪悪感について

一人暮らしを見守る立場のご家族から、「突き放してしまったのではないか」という言葉を聞くことがあります。同居していないぶん、日々の様子が見えず、何かあったときに気づけなかったらどうしようという思いが残りやすいのだと思います。

ただ、距離を取ることと、関わりをやめることは同じではありません。週に1度の連絡でも、何かあったときの段取りを決めてあることでも、関わりは続いています。そして、ご家族が自分の生活を保てている状態のほうが、必要な場面で動ける力が残ります。

ご家族自身がしんどくなってきたときの選択肢はご家族が「もう限界」と感じたときの記事にまとめています。相談先は当ステーションに限りません。上に挙げた市の窓口や保健所、地域生活支援センターは、どこもご家族からの相談を受け付けています。話しやすいと感じたところから相談してみてください。

当ステーションでも、初回のご相談は無料でお受けしています。訪問にあたっての交通費はいただいていません。対応できる地域は対応エリアのご案内でご確認いただけます。ご相談はお問い合わせ、またはお電話(042-508-3434・平日9時から18時)で承ります。

よくあるご質問

一人暮らしをさせるのは、見捨てることになりませんか

一人で暮らすことと、支えがなくなることは別のことだと考えています。自立生活援助や地域定着支援のように、一人暮らしを前提として支える制度も法律に定められています。関わり方の形を変えることと、関わりをやめることは同じではありません。

どのくらいの頻度で連絡すればいいですか

適切な回数を外から決めることはできません。回数そのものより、あらかじめご本人と決めておくこと、返事がないときにどうするかを先に決めておくことのほうが、双方の負担が軽くなりやすいと感じています。

何かあったとき、家族はどう気づけばいいですか

連絡に出る時間帯、眠りの様子、通院と服薬の続き方、食事や買い物、人との接点などが手がかりになります。1つだけで判断せず、いくつかが同じ時期に重なったときに気にかけておく形が現実的です。あわせて、調子が崩れ始めたときの連絡先を先に決めておくことをおすすめします。

訪問看護は一人暮らしの家に定期的に来てくれますか

訪問看護の利用は、主治医が必要と判断することが出発点になります(健康保険法第88条第1項)。そのうえで、訪問の回数や曜日は、ご本人の状態と主治医の指示にもとづいて決まります。まずは主治医、または上に挙げた市の窓口にご相談ください。

認知症の一人暮らしの親も心配な場合はどうすればいいですか

高齢の方に認知症の疑いがある場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターが相談先になります。精神疾患の場合とは使える制度が異なるため、別の記事で整理しています。どちらか判断がつかない場合も、市の窓口で相談すれば適した先を案内してもらえます。

お問い合わせ

府中よりそい訪問看護ステーションでは、精神科の訪問看護を行っています。一人暮らしのご本人について気になることがあれば、ご本人がまだ受診していない段階でもご相談いただけます。

初回のご相談は無料です。訪問の交通費はいただいていません。お問い合わせフォーム、またはお電話(042-508-3434・平日9時から18時)で承ります。

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