うつ病の家族と介護休暇|制度の確かめ方と職場への伝え方【Vol.98】


うつ病の家族と、自分の仕事。休む前に、制度を確かめる・職場への伝え方を考える・相談先につなぐ、の3点

家族がうつ病かもしれない。あるいは、うつ病だと分かった。付き添いや気づかいと、ご自身の仕事とのあいだで、「このまま働き続けてよいのか」「休んだほうがよいのか」と迷う。「家族がうつ病で、自分の仕事をどうするか迷っている」というご相談をいただくことがあります。

この記事は、ご家族自身の仕事に絞って、休み方・働き方の制度、職場への伝え方、相談先を整理します。厚生労働省、こころの耳、東京都、府中市など、公的な情報をもとにしています。

ご本人が休職中で、ご家族の疲れや傷病手当金が気になる方は、Vol.74をご覧ください。制度の説明は国の資料の言い方に沿って書きます。当てはまるかどうかは、勤務先と労働局への確認が必要です。

結論を先に|休むか続けるかの前に、制度と相談先を確かめる

先に結論を3つお伝えします。

  1. ひとりで決めなくてかまいません。休むか続けるか、どちらが正しいとは言えません。ご家族の状況によって、合う選び方が違うためです。
  2. 休み方・働き方を変える制度があります。厚生労働省のリーフレットの題は、「介護で仕事を辞める前にご相談ください」です。
  3. 制度が当てはまるかは、勤務先と労働局に確かめてください。同じリーフレットの案内は次のとおりです。「仕事と介護の両立のための制度について、まずはお気軽にご相談ください。プライバシーを守って対応いたします。」うつ病のご家族の場合に当てはまるかも、確かめる先は同じです。

休む前に考えたいこと|ひとりで抱えない。続けることにも意味があります

当ステーションの考えを先にお伝えします。仕事は、収入のほかに、生活のリズムや気持ちの切り替えの場になっていることがあります。続けることにも意味があります。一方で、休むことにも意味があります。ご自身の体力を保つこと、ご家族のそばにいる時間をとることなどです。どちらが正しいとは言えません。

そのうえで、決める前に知っておきたいことを2つ挙げます。こころの耳(厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)の「ご家族にできること」のページからです。

  • ご家族が先に相談してみる方法があります。ご本人が相談をためらっているときや、あまり語らないときは、まずご家族が相談してみる方法がある、と案内されています。
  • 特別なことを考えすぎなくてよいとされています。「「治療にはご家族の協力が重要」などといわれますと、大きな責務を感じて、ついつい力が入りがちですが、あまり特別なことを考える必要はありません。」とあります。

ご家族が「もう限界」と感じたときの考え方は、Vol.53にまとめています。

休む制度|介護休暇と介護休業は、使いどころが違います

厚生労働省の資料では、仕事を休む制度として、主に「介護休暇」と「介護休業」があります。どちらも育児・介護休業法に基づく制度で、「要介護状態」の家族を介護・世話する労働者が対象です(次の節で説明)。下の表は国の資料の要点です。

制度国の資料の説明(要点)
介護休暇1年度に5労働日(対象家族が2人以上の場合は10労働日)を限度に、1日または時間単位で取得できます。「世話」の例として、通院の付き添いや、介護サービスを受けるための手続きを代わりに行うことが挙げられています。
介護休業対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得できます。
介護休業給付金雇用保険の被保険者が、一定の要件を満たして介護休業を取得した場合に支給されます。支給額は原則として、休業開始時賃金日額×支給日数×67%です。要件の細かい点は、ハローワークで確かめます。

国の資料は、2つの制度の位置づけを次のように書いています。

  • 介護休暇:厚生労働省のQ&Aは、「「介護休暇」は、介護保険の手続や要介護状態にある対象家族の通院の付添いなど、日常的な介護のニーズにスポット的に対応するために利用するものと位置付けられている。」と書いています。
  • 介護休業:令和8年8月作成の厚生労働省のリーフレットは、「休業期間は、自分が介護を行うのではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間になります。」と書いています。

介護休業は、ご家族につきっきりで世話をするための休みというより、体制を整えるための休みとして位置づけられています。介護休暇は、ほかにご家族がいることだけを理由には拒めないとされています。細かい条件は人によって違うため、勤務先に確かめてください。

うつ病で対象になるか|「要介護状態」の定義を確かめる

介護休業も介護休暇も、対象になるのは「要介護状態」にある対象家族のための休みです。対象家族には、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母などが含まれます。

「要介護状態」の定義は、「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」とされています。文言に「精神上の障害」が入っています。ただし、「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」であることも定義の一部です。

「常時介護を必要とする状態」かどうかは、国の判断基準で2つに分かれます。(1)は、国の表にある12項目の状態の組み合わせで見る方法です。(2)は、「介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。」です。

一方で、厚生労働省のリーフレットは、「介護保険制度の要介護状態区分が要介護2以上である場合のほか、介護保険制度の要介護認定を受けていない場合であっても2週間以上の期間にわたり介護が必要な状態のときには対象になります。」と書いています。判断基準にも、厳密に当てはめることにとらわれず、事業主(会社など)が柔軟に運用することが望まれる、とあります。

では、うつ病のご家族の場合はどうでしょうか。この定義の文言には、特定の病名は書かれていません。そのため、この文言だけでは、うつ病のご家族が当てはまるかどうかは分かりません。確かめる先は、勤務先の担当者と、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。電話番号は「相談先」の節にあります。

休まずに働き方を変える|短時間勤務などの措置と在宅勤務

休まずに、働く時間や場所を調整する方法もあります。厚生労働省のQ&Aは、「「介護のための所定労働時間の短縮等」の措置その他の仕事と介護の両立のための柔軟な働き方に関する制度及び措置は、日常的な介護のニーズに定期的に対応するために利用するものと位置付けられている。」と書いています。

国のリーフレットによると、事業主は、要介護状態の家族を介護する労働者のために、利用開始の日から3年以上の間に2回以上使える措置を用意しなければなりません。措置は、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤の制度、介護費用の助成措置のいずれかで、どれがあるかは会社によって違います。在宅勤務等は、事業主の「努力義務」とされています。使えるかどうかは、勤務先に確かめてください。

要介護状態に当たらない場合についても、厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」は、事業主が配慮する事項の一つとして、「要介護状態にない家族を介護する労働者であっても、その家族の介護のため就業が困難となる場合があること。」を挙げています。権利として使えるという意味ではありません。分からないときも、あきらめる前に勤務先へ相談してみてください。

職場への伝え方|病名をどこまで言うか

制度を使うとき、職場にどこまで伝えるかも迷いやすい点です。まず、国の資料に書かれている事実を並べます。

  • 申出に要る事項:介護休業の書面の申出には、申出の年月日、氏名、対象家族の氏名と続柄、「申出に係る対象家族が要介護状態にあること」、休業の期間などを書きます。
  • 診断書など:あらましは、「介護保険の要介護認定の結果通知書や医師の診断書、障害支援区分認定通知書、障害児通所給付費支給決定通知書等の提出を制度利用の条件とすることはできません。」と書いています。介護休業では、書類の提出を求められることはありますが、利用の条件にはできません。
  • 事業主の対応:令和7年4月1日から、介護に直面した旨を事業主に申し出ると、事業主は制度などを個別に知らせ、利用の意向を確認する必要があります。
  • 不利益な取扱いの禁止:厚生労働省のリーフレットは、「介護休業などの制度の申出や取得を理由とした解雇など不利益な取扱いを禁止しています」と書いています。

ここからは、当ステーションの考えです。病名は、ご本人の大切な情報でもあります。伝える範囲は、ご本人の気持ちを聞いたうえで、「家族の体調のことで通院の付き添いなどが必要」のように、必要な範囲にとどめる選び方もあります。病名を伝えるかどうかに、一つの決まった答えはありません。

伝え方の例を3つ挙げます。表のすべての行は「例」です。

場面伝え方の例
制度を相談したいとき家族の体調のことで、通院の付き添いなどが必要になりそうです。使える制度を教えてください。
病名を伝えるか迷うとき家族の気持ちを聞いてから、どこまでお伝えするか決めたいので、少し時間をください。
書類の提出を求められたときどの書類が必要か、その書類をどのように使うのかを教えてください。

上の言い回しは、すべて当ステーションが考えた例です。

相談先|勤務先・労働局・こころの耳・府中市と東京都

相談先を3つに分けます。受付時間は、それぞれの窓口の時間です。当ステーションの時間ではありません。

制度のこと

  • 勤務先の担当者:人事・総務など。勤務先にどんな制度があるかを確かめます。
  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):東京の番号は03-3512-1611です。東京労働局の受付時間は、8時30分から17時15分(土・日・祝日・年末年始を除く)です。ほかの都道府県の番号は、国のリーフレットの一覧にあります。

ご家族自身の心の相談

  • こころの耳電話相談:こころの耳のページによると、働く方とそのご家族からの相談を電話で受けています。こころの耳の相談窓口のページでは、匿名・無料とされています。電話は0120-565-455(フリーダイヤル)です。なお、番号を非通知にした電話は受け付けていないとされています。番号の前に186をつけるなど、番号を通知してかけるよう案内されています。この窓口の受付時間は、平日が17:00から22:00(受付は21:50まで)、土曜日・日曜日が10:00から16:00(受付は15:50まで)です。祝日・年末年始は除きます。
  • 東京都多摩府中保健所:精神保健福祉相談で、保健師がこころの健康の相談を、ご家族からも受けています。電話は042-362-2334です。専門医の相談は予約制で、先に地区担当保健師へ相談するとされています。
  • 東京都立多摩総合精神保健福祉センター:こころの電話相談は、多摩地域在住の方が対象で、ご家族も相談できます。電話は042-371-5560です。この窓口の受付日時は、月曜日から金曜日(年末年始・祝日を除く)の午前9時から午後5時までです。
  • お勤め先が従業員50人未満の場合:府中市の「こころの健康」のページに載っている北多摩地域産業保健センター(電話042-524-6135)が、産業医の保健指導や健康相談を原則無料で行っています。この窓口の受付時間は平日10時から16時で、働いている方が対象です。

ご本人が受診していないとき

ご本人が受診していない段階でも、ご家族が相談する方法があります。受診を勧める言い方について、こころの耳のページは、「その際に「うつ病」などという言葉を使わずに、「疲れが抜けない状態がずっと続いているのが心配」などとお気持ちを伝え、初めての受診には付き添って行けることが望ましいでしょう。」と書いています。ご家族だけで相談できるかの詳しい説明は、Vol.61にあります。

精神科訪問看護がご家族の負担を分け合える場面

府中よりそい訪問看護ステーションは、精神科訪問看護を行っています。ご本人がまだ受診していなくても、ご家族だけでご相談いただけます。初回のご相談は無料で、交通費の自己負担もありません。「家族がうつ病で、仕事との両立が難しい」というご相談をいただくことがあります。

精神科訪問看護は、主治医の指示のもとで、看護師がご本人のお宅を訪ねる仕組みです。ご本人の様子を一緒に見る人が増えることで、ご家族がひとりで抱えていた負担を分け合える場面があります。一方で、訪問看護は、ご家族に代わって介護をすべて引き受けるサービスではありません。

ご本人が来訪を負担に感じる時期もあるため、進め方はご本人の気持ちを聞きながらご相談ください。訪問看護の中身や費用は、Vol.30とVol.21にあります。ご相談は、お電話(042-508-3434・平日9時から18時)またはお問い合わせページで承ります。訪問できる地域は対応エリアでご確認いただけます。

ご家族自身の休息|休むことは、ご本人を置いていくことではありません

ご家族が休むことは、ご本人を置いていくことではありません。これは当ステーションの考えです。こころの耳のページは、「まずは力を抜き、病気の理解からはじめてみましょう。」と書いています。府中市の「こころの健康」のページには、「話を聴いてもらうだけでも、気持ちが楽になったり自分の中で解決策がみつかったりすることがあります。」とあります。

ご家族自身の疲れの目安として、国のチェック表もあります。こころの耳のページは、「また、ご家族の疲労度を簡単にチェックできる「働く人の疲労蓄積度セルフチェック2023(家族支援用)」も活用いただけます。」と紹介しています。

府中市や東京都の窓口の詳しい案内と、ご家族の共倒れを避ける考え方は、Vol.74にあります。ご本人から「死にたい」と言われて不安なときは、Vol.80をご覧ください。

よくあるご質問

家族の通院の付き添いなどで仕事を休むとき、どんな休みがありますか?

国の資料では、通院の付き添いなどには介護休暇(年5日。対象家族が2人以上なら年10日。時間単位でも可)、体制を整える休みには介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回まで)があります。どちらも要介護状態の家族が前提です。詳しくは勤務先に確かめてください。

うつ病の家族を介護するとき、介護休業や介護休暇の対象になりますか?

国の資料では、対象は要介護状態にある対象家族で、その定義に「精神上の障害」の文言も入っています。ただし、「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」であることも定義の一部です。定義の文言には特定の病名は書かれていないため、この文言だけでは、うつ病のご家族が当てはまるかどうかは分かりません。勤務先の担当者と、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確かめてください。

会社に病名を伝えなければいけませんか?

国の資料では、介護休業の申出に要る事項として、ご家族が要介護状態にあることなどが挙がっています。診断書などの提出を、介護休業では制度利用の条件にはできないとされています。病名を伝えるかどうかに、一つの決まった答えはありません。病名をどこまで伝えるかは、当ステーションの考えでは、ご本人の気持ちを聞いたうえで、必要な範囲にとどめる選び方もあります。

仕事を辞めたほうがよいか迷っています。どうすればよいですか?

辞めるほうがよいとも、続けるほうがよいとも言えません。国のリーフレットの題は「介護で仕事を辞める前にご相談ください」で、対象になる場合は、勤務先に制度がなくても法に基づいて使える制度がある(所定労働時間の短縮などの措置は除く)と説明しています。辞める前に、制度の確認と相談を先にしてみてください。

ご本人が受診していなくても、家族だけで相談できますか?

ご本人が受診していない段階でも、ご家族だけで相談できます。ご家族が先に相談する方法があることは、こころの耳のページでも案内されています。当ステーションでも、ご家族だけのご相談を承ります。初回のご相談は無料です。詳しくはVol.61にあります。

あわせて読みたい

出典

  • 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和7年12月作成)Ⅲ 介護休業制度(冊子61〜65頁。判断基準は63〜64頁)(2026年10月16日閲覧):https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355361.pdf
  • 同 Ⅴ 介護休暇制度(冊子76〜77頁)(2026年10月16日閲覧):https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355372.pdf
  • 同 Ⅸ 事業主が講ずべき措置(冊子104頁・118頁・127頁)(2026年10月16日閲覧):https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355376.pdf
  • 同 Ⅹ 不利益取扱いの禁止(冊子131頁)(2026年10月16日閲覧):https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355377.pdf
  • 厚生労働省リーフレット「介護で仕事を辞める前にご相談ください」(令和3年3月改訂)(2026年10月16日閲覧):https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000833741.pdf
  • 厚生労働省「令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A」(令和7年9月24日時点)Q4-14(2026年10月16日閲覧):https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001567572.pdf
  • 厚生労働省 ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」介護休業給付について(2026年10月16日閲覧):https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
  • 厚生労働省リーフレット「仕事と介護の両立を応援! 介護休業制度」(令和8年8月作成)(2026年10月16日閲覧):https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/r8_kaigo.pdf
  • こころの耳「ご家族にできること」(2026年10月16日閲覧):https://kokoro.mhlw.go.jp/families/
  • こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」(2026年10月16日閲覧):https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/
  • こころの耳「こころの耳の相談窓口」(2026年10月16日閲覧):https://kokoro.mhlw.go.jp/soudan/
  • 東京都多摩府中保健所「精神保健福祉相談(こころの健康相談)」(更新日 2022年3月8日)(2026年10月16日閲覧):https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamafuchu/hoken/kokoro/soudan
  • 東京都立多摩総合精神保健福祉センター「こころの問題についてのご相談」(更新日 2024年1月15日)(2026年10月16日閲覧):https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/tamasou/soudan/soudan_ippan
  • 府中市「こころの健康」(最終更新日 2026年9月1日)(2026年10月16日閲覧):https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kenko/kenko/kokoro/kokoronokenko.html

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