パニック障害で外出が怖いとき|買い物や用事に家族はどう付き添うか【Vol.77】


パニック障害・不安障害のある家族の外出に付き添うときの3つの視点(責めない・付き添う・抱えない)

「一人ではスーパーに行けない」「駅までなら大丈夫だけど、その先は無理」。パニック障害や不安障害のあるご家族と暮らしていると、買い物や用事のたびに、誰かが一緒に行くことが当たり前になっていきます。付き添っているご家族の側にも、少しずつ疲れがたまっていきます。

このページでは、外出を怖がるご本人に、支えるご家族がどう付き合っていけばよいのかを整理しました。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」と、厚生労働省がまとめた家族向けの解説を主な手がかりに、家庭でできることと、医療にお願いしたほうがよいことの線を引いています。なお、こころの情報サイトでは「パニック症」「不安症」という名称が使われていますが、このページでは広く使われている「パニック障害」「不安障害」の表記でそろえています。

「一緒なら行けるのに、一人だと無理」を、責めないでください

付き添えば買い物ができる。けれど一人では玄関から出られない。この差を見ていると、ご家族はどこかで「甘えているのではないか」「本当は行けるのではないか」という思いが浮かんできます。そう思ってしまうこと自体は、責められることではありません。外から見えるのは行動だけで、本人の中で起きていることは見えないためです。

この「一人だと行けない」という状態には、医学的な説明がついています。こころの情報サイトは、「広場恐怖症では、不安になったときにすぐに逃げ帰れないような、家の外の状況に対する不安があります。広場、公共交通機関、建物の中、1人で外出することなどが含まれます。そのような状況を回避したり、付き添いを必要としたりします」と説明しています。

注目していただきたいのは、最後の一文です。「付き添いを必要とする」という状態は、公的な解説の中に、症状の説明として書かれています。本人の性格の問題でも、ご家族の関わり方が甘いからでもありません。まずこの前提を置けると、ご家庭の中の空気が少し変わります。

厚生労働省が家族向けにまとめた解説にも、「パニック障害の発作は、つらさ・不安が理解されにくいものです」という一文があります。理解しにくいのが普通なのだ、というところから始めて構いません。

外出が怖くなるしくみ|予期不安と、避けることの悪循環

こころの情報サイトは、「パニック症では、急激な不安と、動悸などの身体症状を伴うパニック発作が突然生じることを繰り返します。そのために行動が制限されたり、また発作が起きるのでは無いかという予期不安が生じ、生活に大きな支障が生じます」と説明しています。

買い物の場面に置き換えると、こういうことが起きています。以前、スーパーのレジに並んでいるときに動悸がして苦しくなった。それ以来、あの店に近づくと「また同じことが起きるのではないか」という不安が先に立つ。だから行かない。行かなければ苦しい思いはしないので、避けることが続いていく。

ここで知っておきたいのが、不安そのものの時間経過です。こころの情報サイトには、次の記述があります。

実は不安は、最初の5分間くらいがもっとも強く、その後は段々と横ばいになったり、軽くなっていきます。ところが不安を避けることに全力を集中していると、こうした自然の回復を体験することができません。

避けることは、その場をしのぐ方法としては効果があります。ただ、避け続けているかぎり「時間が経てば落ち着いた」という体験が本人の中に残らない、という指摘です。ご家族が知っておく意味があるのはこの部分で、避けている本人を責めるためではなく、あとで触れる「代わりに行ってあげる」の考え方につながるところだからです。

疾患そのものの全体像や、診断名ごとの家庭での関わり方は、不安障害・パニック障害の人を、家でどう支える?にまとめています。このページでは、外出という場面に絞ってお話しします。

買い物や用事に付き添うとき、ご家族が気をつけたいこと

付き添いそのものは、悪いことではありません。一人では出られない時期に誰かが一緒に行くことで、生活が回っている家庭はたくさんあります。そのうえで、付き添い方には少し幅があります。

  • 行き先と滞在時間を、出る前に決めておく。「スーパーで牛乳とパンだけ買って帰る」のように具体的にしておくと、本人の中で見通しが立ちます。逆に「ついでにあそこも寄ろう」と予定を足すのは、しんどい日には負担になります。
  • 「つらくなったら途中で帰ってよい」と先に伝えておく。逃げ道が用意されていること自体が、不安を下げる働きをします。実際に引き返した日があっても、失敗とは考えないでください。
  • 混む時間帯を避ける。同じ店でも、時間帯を変えるだけで行けることがあります。
  • できた日を、大げさに褒めすぎない。褒められると「次も行かなければ」という圧力になることがあります。「行けたね」くらいの短い言葉で十分です。

これらは、ご家庭の事情や本人の状態によって合う合わないがあります。うまくいかない日が続くときは、次の診察でその様子を主治医に伝えてください。付き添いの方法を組み立て直すのは、本来は治療の一部です。

「代わりに行ってあげる」が、いつの間にか固定化するとき

付き添いを続けていると、次の段階として「自分が代わりに行ってしまったほうが早い」という日が出てきます。仕事のあとに一緒に買い物へ行くより、帰りに一人で済ませたほうが時間も体力も使わない。実際にそのとおりです。

ただ、これが何か月も続くと、二つのことが同時に進みます。ひとつは、本人が外に出る機会がなくなること。もうひとつは、ご家族の負担が固定されることです。先ほど引用した、不安は最初の5分間くらいがもっとも強く、その後は段々と横ばいになったり軽くなっていくという説明に照らすと、外に出ない状態が続くかぎり、その体験の機会も訪れません。なお、この不安の時間経過の話は、もともとご本人が外出を避ける場面について書かれたものを、付き添いという場面に当てはめて紹介したものです。ご家族の対応が間違っているという意味で挙げているわけではありません。

とはいえ、ここで「明日から一人で行かせましょう」と申し上げるつもりはありません。急に付き添いをやめることは、本人にとって支えが外れることでもあります。どこまで手を引くか、どの順番で減らしていくかは、本人の状態と治療の段階によって変わります。これは、ご家庭だけで決める話ではなく、主治医や治療に関わる人と一緒に考えるところです。

治療については、こころの情報サイトに「認知行動療法は、こうしたメカニズムに注目し、不安を悪化させる考えや行動を徐々に修正し、不安をコントロールできるという自信を取り戻すための治療です。薬物療法と同じか、それ以上の効果があることが知られています」という記述があります。「徐々に」という言葉が入っている点が、ご家庭での関わり方を考えるうえでも参考になります。

いま付き添いを全部引き受けているご家族に、まずお伝えしたいのはこちらです。減らすことより先に、抱え込みすぎていないかを見てください。その話は後半で触れます。

外出先で発作が起きたら|そばにいるご家族ができること

付き添っているご家族がいちばん不安なのは、外出先で発作が起きたときにどうすればよいか、という点だと思います。厚生労働省の家族向けの解説には、次の記述があります。

発作では死なない、とわかっていても、パニック障害の患者さんは発作がおこると強い不安にとらわれてしまいます。そばにいる人が「大丈夫」と優しく声をかけて背中をさするなどすることで不安を少しでも軽くするように手をさしのべてあげましょう。

やることは、多くありません。人の少ない場所へ移動して座れるようにする。そばにいる。落ち着くまで待つ。急かさない。これで足りることがほとんどです。呼吸については、こころの情報サイトが「呼吸法を行うことは、多くの場合は不安の軽減に有効です」としており、具体的な実技は同センターのサイトで動画が公開されています。ご本人が主治医や医療者から指導を受けて練習している場合は、その場で使えることがあります。

一方で、身体の症状として見たときに注意していただきたい点もあります。こころの情報サイトは「動悸や呼吸困難があるときには、まずは内科の診察を受けてください。時には甲状腺機能亢進症、不整脈、貧血によって不安が生じることもあります」と述べています。いつもと様子が違う、症状が長く続く、意識がはっきりしないといった場合に、「いつもの発作だから」と決めてしまわないでください。その判断は医療の領域です。

迷ったときの窓口は、次のように分かれています。

  • 命に関わる可能性があると感じたとき/119番(救急車)
  • 救急車を呼ぶべきか迷うとき/東京消防庁 救急相談センター #7119
  • 受診できる医療機関を探したいとき/東京都医療機関案内サービス「ひまわり」 03-5272-0303

発作をきっかけに救急外来の受診や入院を繰り返している場合は、生活全体の組み立てを見直す時期かもしれません。その場合の考え方は精神科の入退院を繰り返すときにまとめています。

行ける範囲は、本人のペースで少しずつ

外出できる範囲を広げていく取り組みは、治療の中で行われることがあります。ここでご家族に持っていていただきたいのは、「順番はご家庭で決めない」という一点です。どこから、どのくらいの負荷で試すかは、本人の状態を診ている主治医の判断が先にあります。

そのうえで、ご家庭の側で気をつけられることがあります。よかれと思って負荷を上げないことです。「先週は近所のコンビニに行けたから、今週は電車で出かけよう」という進め方は、本人にとって飛躍が大きいことがあります。行けた日と行けない日の差が大きいのがこの状態の特徴で、行けない日が来たときに「戻ってしまった」と受け取らないことのほうが、長い目で見ると大事です。

生活面では、こころの情報サイトがカフェインについても触れています。カフェインの取り過ぎで不安が悪化することは少なくないとして、場合によっては少しずつ減らしてみることを勧めています。外出前にコーヒーを何杯も飲んでいるようなときは、話題にしてみてもよいかもしれません。

付き添うご家族自身も、消耗していませんか

この記事でいちばんお伝えしたいのが、この項目です。厚生労働省の家族向けの解説は、「どこに行くにも一緒」の役割について、次のように書いています。

家族や周りの人が付き添いを一人でこなそうとすると、ご自身も疲れてしまいます。たとえ治療が始まっても、患者さんが一人で外出できるようになるまでは時間がかかることもあります。一人ですべてをこなそうとしないで、たまにはほかの家族や友人、カウンセラーなどの協力を得て、息抜きの時間を作り、ストレスをためないようにしてください。

「時間がかかることもあります」と書かれているとおり、これは短期戦ではありません。付き添いを一人で背負っている状態が半年、一年と続くと、支えている側の心身も少しずつ削られていきます。ご家族の余力がなくなることは、結果として本人を支える力が細くなることにもつながります。だからこそ、ご家族が休むことは、本人のためでもあります。

ご家族自身の消耗をどう軽くするかは、ご家族のしんどさを、軽くするにまとめています。すでに限界に近いと感じている場合は、家族が「もう限界」と思ったときもあわせてご覧ください。

訪問看護は、外出のことにどう関われるか

精神科訪問看護は、看護師などがご自宅に伺う形のサービスです。利用には、主治医が交付する訪問看護指示書が必要になります。

外出との関わりでいえば、家庭の中でできることの整理、体調や不安の様子の記録と主治医への報告、生活リズムや服薬についての相談といった形で関わります。何をどこまで行うかは、指示書の内容とご本人の状態によって決まります。外出の練習そのものについても、主治医の方針の範囲で相談しながら進めます。

実際にどのようなことをしているのかは、不安障害・パニック障害の訪問看護でやっていることにまとめています。費用の目安は自己負担額の計算ツールでご確認いただけます。

なお、訪問看護ステーションは事業所ごとに得意な分野や体制が違います。府中市内にもほかのステーションがありますので、比べたうえで選んでいただくのがよいと考えています。

府中市で相談できる窓口

主治医のほかにも、ご家族が相談できる公的な窓口があります。

  • 東京都多摩府中保健所(精神保健福祉相談)/電話 042-362-2334(代表)。「保健師がこころの健康や精神保健に関することについて、ご本人、ご家族、関係者の方からのご相談をお受けしています。」と案内されています。専門医による相談は予約制で、事前に地区担当保健師へ相談する流れです。
  • 府中市 健康推進課(保健センター)/電話 042-368-6511(平日8時30分から17時)。こころやからだの相談を受け付けています。

当ステーションの対応地域は対応エリアのページからご確認いただけます。

おわりに|買い物ひとつを、家庭だけで抱えなくて大丈夫です

一人で買い物に行けない状態は、外から見ると小さなことに見えます。けれど、そのために毎回誰かが時間を空け、予定を合わせ、断れない用事を後回しにしている家庭にとっては、生活そのものに関わる話です。

付き添いをどう減らしていくかは、治療の進み方と一緒に考えるところです。ご家庭でできるのは、無理のない範囲で付き合いながら、様子を主治医に伝えていくこと。そして、支えている側が潰れないように、手を借りる先を持っておくことです。

府中よりそい訪問看護ステーションでは、精神科訪問看護を行っています。初回のご相談は無料です。ご本人がまだ迷っている段階でも、ご家族だけでお話をうかがえます。お電話(042-508-3434)またはお問い合わせフォームからご連絡ください。

よくあるご質問

一人で外出できないのは、甘えや気の持ちようではないのですか

気持ちの持ち方の問題として説明されるものではありません。こころの情報サイトは広場恐怖症について、家の外の状況に対する不安から「そのような状況を回避したり、付き添いを必要としたりします」と説明しています。付き添いが必要な状態は、症状の説明として書かれているものです。どこまでが症状によるものかの判断は主治医の領域ですので、気になる点は診察の場でお伝えください。

無理にでも外へ連れ出したほうが、克服につながりますか

ご家庭の判断で負荷を上げることはお勧めしていません。外出できる範囲を広げる取り組みは治療の中で行われるもので、どの場面からどの程度試すかは、本人の状態を診ている主治医の判断が先にあります。ご家族が「先週行けたから今週はもっと遠くへ」と進めると、本人にとって飛躍が大きくなることがあります。うまくいかない日が続くときは、その様子を次の診察でお伝えください。

外出先で発作が起きたとき、ご家族はどうすればよいですか

厚生労働省の家族向けの解説では、そばにいる人が優しく声をかけて背中をさするなどして、不安を少しでも軽くするよう手をさしのべることが勧められています。人の少ない場所へ移動し、座って落ち着くまで待つことで足りることがほとんどです。ただし、いつもと様子が違う、症状が長く続く、意識がはっきりしないといった場合は判断を医療に委ねてください。命に関わると感じたときは119番、迷うときは東京消防庁の救急相談センター #7119、受診先を探したいときは東京都医療機関案内サービス「ひまわり」(03-5272-0303)が窓口です。

買い物をご家族が代わりに済ませ続けても大丈夫でしょうか

その時期に必要な形であれば、代わりに行うこと自体が悪いわけではありません。ただ、その状態が長く続くと、本人が外に出る機会がなくなり、ご家族の負担も固定されていきます。どこまで手を引くか、どの順番で減らすかは本人の状態と治療の段階によって変わりますので、ご家庭だけで決めず、主治医や治療に関わる人と一緒にご検討ください。

付き添っているご家族のほうが疲れてしまいました。どこに相談できますか

厚生労働省の家族向けの解説も、付き添いを一人でこなそうとすると疲れてしまうとして、ほかの家族や友人などの協力を得て息抜きの時間を作るよう勧めています。相談先としては、かかりつけの医療機関のほか、東京都多摩府中保健所の精神保健福祉相談(042-362-2334)が、ご本人・ご家族・関係者からの相談を受け付けていると案内されています。府中市健康推進課(042-368-6511/平日8時30分から17時)でも、こころやからだの相談を受け付けています。

出典:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」不安症(2026年8月14日閲覧)/厚生労働省 メンタルヘルス「パニック障害・不安障害」内「家族、友人として」(2026年8月14日時点で厚生労働省サイト上に掲載を確認)/東京都多摩府中保健所「精神保健福祉相談(こころの健康相談)」(2026年8月14日閲覧)/府中市「こころの健康」

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