
2026年度の診療報酬改定で物価対応料が新設されました
2024年度から続いている原油価格やウクライナ情勢の影響による物価高騰は、医療機関の経営を大きく圧迫し続けています。特に訪問看護ステーションでは、ガソリン代や医療物資の価格上昇により経営環境が厳しくなっていました。このような背景の中、2026年度の診療報酬改定では「訪問看護物価対応料」という新しい料金制度が導入されることになりました。
この新制度は、物価高騰に対応するための段階的な支援策として位置付けられており、2026年度(R8)と2027年度(R9)の2年間にわたって段階的に引き上げられることが特徴です。特に2027年度には2026年度の2倍の対応料となる予定であり、訪問看護ステーションの経営基盤を強化するための重要な施策となっています。
物価対応の基本方針
物価高騰に対応するため、段階的な料金改定を実施。2026年度から新設された訪問看護物価対応料により、ステーション経営の安定化を支援します。
新設「訪問看護物価対応料」の詳細
訪問看護物価対応料には「訪問看護物価対応料1」と「訪問看護物価対応料2」の2つの種類があります。これらは利用者の疾病分類によって区分されており、それぞれ異なる金額が設定されています。
「訪問看護物価対応料1」は、区分番号02の算定対象となる利用者を対象にしています。これらの利用者への訪問に対して、2026年度は月の初日に60円、2日目以降は1回の訪問につき20円が加算されます。そして2027年度には、これが月の初日120円、2日目以降40円に倍増される予定です。この段階的な引き上げにより、継続的な経営支援を実現しています。
一方、「訪問看護物価対応料2」は区分番号04の算定対象となる利用者への訪問に対するもので、2026年度は20円、2027年度は40円となります。これらの利用者層も物価高騰の影響を受けており、この加算により適切な訪問看護サービスの継続性が保証されることになります。
(物価対応料1)
(物価対応料1)
(全料金)
入院時の食費・光熱水費の見直し
物価対応は訪問看護だけではなく、入院施設のコストについても実施されています。入院患者の食事にかかる費用基準が見直され、1食当たり40円の値上げが行われました。これまで690円だった1食の基準額が、2026年度からは730円に改定されます。
また、入院施設における光熱水費についても、1日当たり60円の値上げが実施されました。これらの値上げは、実際に病院が負担している電気代やガス代、水道代などの上昇に合わせたものであり、質の高い入院医療提供を継続するために必要な措置となっています。
さらに、基本的な診療報酬についても微調整が加えられています。例えば、再診料については75点から76点への引き上げが行われるなど、複数の診療項目で物価高騰に対応する改定が実施されています。
| 項目 | 改定前 | 改定後 | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 入院食費(1食) | 690円 | 730円 | +40円 |
| 光熱水費(1日) | 基準額 | 基準額+60円 | +60円 |
| 再診料 | 75点 | 76点 | +1点 |
外来・在宅医療での物価対応
訪問診療を実施する際の物価対応として、「外来・在宅物価対応料」が新設されました。訪問診療の実施時には、2026年度は3点、2027年度は6点の物価対応料が算定されることになります。この改定により、医師による訪問診療の継続性が確保されることが期待されています。
訪問看護と訪問診療が連携して提供される場合も多く、両者の物価対応料が組み合わせて算定されることで、より総合的な在宅医療サービスの提供が促進されることになります。
専門職向け:経営・運営への実装ポイント
- 報酬計算体系の更新:訪問看護物価対応料1・2を請求システムに組み込む際、利用者の区分番号(02と04)で正確に識別し、月単位での加算方法(初日と2日目以降で異なる金額)を確実に実装すること
- 段階的改定への対応:2026年度の設定額で2027年度に2倍になることを見据え、管理ソフトウェアが自動で更新対応できる仕様になっているか確認し、人為的エラーを最小化するための運用体制を整備する
- 利用者への説明資料作成:保険者や利用者からの問い合わせに対応するため、新設された物価対応料の具体的内容と根拠を分かりやすく説明できる資料を準備し、透明性のある経営姿勢を示すこと
- 複数地域での管理:特定地域での加算や要件が異なる場合があるため、全国的な通知と地域別の細則を整理し、各拠点での報酬計算の統一性を確認する必要がある
- 外来・在宅物価対応料との関連:訪問診療を行う医療機関と連携する場合、訪問診療での物価対応料(3点→6点)との組み合わせを理解し、利用者負担の説明を正確に行うこと
- 経営見通しの再構築:新制度導入による収益改善を経営シミュレーションに反映させ、2027年度の2倍化に向けた人員配置や設備投資の計画を検討する際の基礎とする
事業所運営における留意事項
- 訪問看護物価対応料の新設により、利用者の疾病分類に基づいた正確な報酬計算がより重要になる。既存の請求システムが対応できるか事前検証が必須
- 区分番号02と04の利用者割合の把握により、新制度からの収益改善がどの程度期待できるかシミュレーション可能となり、経営計画の精度向上につながる
- 物価高騰の背景にあるガソリン代や医療物資費の上昇に対応するため、新設された加算額の妥当性を検証し、実際の経営改善に繋がるかモニタリングを継続する必要がある
- 2027年度に加算額が倍増されるという段階的改定の方針が示されているため、中期的な経営展開を視野に入れた事業計画策定が求められる
今後の展望と対応
今回の物価対応料の新設は、訪問看護ステーションが直面する経営課題に対応するための重要な施策です。ガソリン価格の変動や医療物資のコスト増加は今後も続く可能性があり、この段階的な対応料の設定が適切に機能しているかを継続的に監視していく必要があります。
訪問看護の質を維持しながら持続可能な経営を実現するためには、新設された物価対応料を正確に認識し、請求システムに確実に反映させることが重要です。同時に、実際の経営改善につながっているかを検証し、必要に応じてさらなる対応を求めていく姿勢も大切です。
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次号もお楽しみに
参考資料
- 厚生労働省「02_物価対応」pp.2-7
- 厚生労働省「訪問看護ステーション向け」pp.9-12
