ひきこもりに訪問看護は入れる?8050問題のご家族が知っておきたい条件とつなぎ方【Vol.62】


「もう何年も、子どもが部屋からほとんど出てきません。訪問看護というものがあると聞いたのですが、うちのような場合でも来てもらえるのでしょうか」。80代の親が50代の子を支える「8050問題」という言葉が知られるようになり、こうしたご相談をいただくことが増えています。

結論から言うと、ひきこもりの状態にある方にも、条件を満たせば訪問看護を利用できます(看護師に自宅へ来てもらえます)。この記事では、精神科訪問看護が入れる条件、ご本人が会ってくれないときにできること、そしてまだ受診していない段階でご家族が使える府中市の相談窓口を、制度の正直なところも含めて整理してお伝えします。

結論:条件を満たせば、訪問看護を利用できます

ひきこもりの状態にある方への訪問看護は、ご本人が医療機関を受診していて、主治医が「精神科訪問看護指示書」を交付しているという条件を満たせば始められます。むしろ「外来に通い続けるのがむずかしい」「外に出ること自体がつらい」という方こそ、医療の側から自宅に出向く訪問看護が力になれる場面だと私たちは考えています。

一方で、ご本人がまだ受診していない段階では、訪問看護サービスそのものは始められません。ただしその場合も、ご家族だけの相談は今日からでも始められます。この「入れる場合」と「まだ入れない場合」の分かれ目を、順番にご説明します。

ひきこもりと8050問題|まず知っておきたいこと

厚生労働省のガイドラインでは、ひきこもりとは、様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を避け、原則として6か月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態を指す、とされています。他者と交わらない形での外出をしている場合も含まれます。

大切なのは、ひきこもりは病名ではなく「状態」を指す言葉だということです。決してめずらしいことではなく、内閣府の令和4年度調査では、15歳から64歳のおよそ50人に1人が、広い意味でのひきこもりの状態にあるとされています。平成30年度の調査では、40歳から64歳の中高年だけで約61万人と推計されました。ひきこもりが長期化し、80代の親が50代の子の生活を支え、親の高齢化とともに行き詰まってしまう。これがいわゆる8050問題です。

そして、ひきこもり自体は病気ではありませんが、背景にうつ病や統合失調症などの精神疾患が隠れていることがある、という点は知っておいていただきたいところです。眠れない日が続いている、昼夜が完全に逆転している、独り言や物音への反応が気になる。こうしたサインがある場合、「本人の性格の問題」と抱え込まず、医療につながる道を探す価値があります。

訪問看護が入れる条件|「精神科訪問看護指示書」がカギ

精神科訪問看護は、主治医(精神科を標榜する医療機関の精神科の医師)が交付する「精神科訪問看護指示書」に基づいて行う医療サービスです。そのため、次のどちらに当てはまるかで、いまできることが変わります。

  • 受診している(していた)場合:主治医が在宅での看護が必要と判断すれば、指示書が交付され、訪問看護を始められます。通院が途切れて久しい場合も、再受診から同じ道をたどれます。指示書などの書類のやりとりは当ステーションがお手伝いします
  • まだ受診していない場合:指示書を出す主治医がいないため、訪問看護サービスは始められません。ただし、ご家族だけの相談はできます。受診先の選択肢や本人への切り出し方を一緒に考えるところから始めます

「本人が受診していない段階で、家族に何ができるか」は、家族だけの相談から始める方法(Vol.61)でくわしくお伝えしています。この記事とあわせてお読みください。

本人が会ってくれなくても|ご家族への支援という道

「訪問に来てもらっても、本人は部屋から出てこないと思います」。ひきこもりのご家族から、必ずと言っていいほどいただく心配です。

ここで知っておいていただきたいのが、制度上、精神科訪問看護の対象は「精神疾患を有する方またはそのご家族等」とされていることです。つまり、訪問看護が始まったあと、ご本人がその日会えなくても、まずご家族とお話しするところから訪問を組み立てることができます。ご家族から普段の様子をうかがい、関わり方を一緒に考え、ご本人には「今日も来た人がいる」ことが伝わっていく。そんな回り道のような始まり方が、実際にはよくあります。

正直にお伝えすると、「訪問すれば必ず会えるようになる」とはお約束できません。無理にドアを開けるようなことはしないようにしています。時間をかけて、ご本人のペースに合わせて関係をつくっていく。それが精神科訪問看護の基本姿勢です。

訪問看護がひきこもりのご本人にしていること

訪問看護師(作業療法士が伺うこともあります)が、ひきこもりの状態にある方のお宅でしていることの例です。

  • 関係づくり:最初はあいさつだけ、ドア越しの短い会話だけ、ということもあります。「会わなければいけない人」ではなく「安心して会える人」になるところから
  • 体調と生活の確認:睡眠、食事、体の不調。外来に行かない期間も、医療の目が定期的に入ることで変化に気づきやすくなります
  • 生活リズムの立て直し:昼夜逆転や生活の乱れを、責めずに、できるところから一緒に整えます
  • ご家族の相談相手:関わり方の悩み、将来への不安。ご家族が話せる相手がいることが、ご本人を取り巻く環境を変えるきっかけになります
  • 主治医との橋渡し:訪問で見えたご様子を主治医に報告し、治療とつなぎます

ご本人向けには、家から出られない日が続くとき(Vol.39)という記事もあります。もしご本人が読める状態なら、そっと共有していただくのもよいかもしれません。

まだ受診していないときの相談先|府中市の場合

ご本人が未受診の段階でも、ひきこもりについてご家族だけで相談できる公的な窓口があります。府中市の方が使える主な窓口です。

  • 東京都ひきこもりサポートネット(0120-529-528・月曜から土曜 午前10時から午後5時、年末年始・祝日を除く):東京都のひきこもり専門相談窓口。電話・メールのほか、ご家庭への訪問相談やピアサポーター(ひきこもり経験者やそのご家族)によるオンライン相談もあります。訪問相談の申込みは府中市の窓口(下記)経由です
  • 府中市 福祉総合相談窓口(地域福祉推進課・042-335-4219・市役所おもや1階):困りごとの種類を問わず受け止める市の総合窓口で、ひきこもりの相談もここで受けています。相談は無料で、秘密は守られます
  • 東京都多摩府中保健所(042-362-2334):専門医による精神保健相談のほか、「思春期の悩み・ひきこもり等の親グループ」というご家族どうしの集まりがあります。同じ立場の親と話せる場は、それだけで支えになります。日程は保健所にお問い合わせください

府中市の精神科医療・相談先の全体像は、府中市の精神科医療マップ(Vol.37)で5カテゴリに整理しています。どこから電話すればいいか迷ったら、まず1か所で大丈夫です。どの窓口も、内容に応じて次の場所へつないでくれます。

親が倒れる前に|8050問題は「親を支える」ことから

8050問題のご家庭でいちばん心配なのは、実は、長年支え続けてきた親御さん自身の心と体です。「自分がなんとかしなければ」と誰にも相談せずに抱え込み、親が先に倒れてしまうと、ご本人の生活も一気に立ち行かなくなります。

だからこそ、支援は「本人を変える」ことからではなく、「親が相談できる場所を持つ」ことから始まります。親御さんに話せる相手ができて、家の空気が少しゆるむ。その変化がご本人に伝わって、何かが動き始める。支援の現場では、そんな順番のほうがむしろ自然です。限界を感じているご家族には、家族が「もう限界」と思ったとき(Vol.53)もあわせてお読みいただければと思います。

まとめ:何年たっていても、相談に遅すぎることはありません

ひきこもりの状態にある方への訪問看護は、受診と主治医の指示書という条件を満たせば始められます。まだ受診していなくても、ご家族だけの相談から始める道があり、府中市には無料で使える公的な窓口が複数あります。

5年、10年とひきこもりが続いていると、「いまさら相談しても」という気持ちになるかもしれません。けれど、国の支援の考え方も、期間の長さで線を引かない方向に変わってきています。何年たっていても、相談に遅すぎることはありません。

府中よりそい訪問看護ステーション
電話:042-508-3434(受付 9:00から18:00)
お問い合わせフォーム(24時間受付)
府中市を中心に、近隣の多摩地域へお伺いしています(対応エリアの確認はこちら)。ご家族だけの初回のご相談は無料です。

よくあるご質問

本人が「誰にも会いたくない」と言っています。それでも訪問看護は使えますか?

受診していて主治医の指示書があれば始められます。最初はご家族とお話しするだけ、ドア越しのあいさつだけ、という形から少しずつ進めます。無理にお部屋に入ることはしないようにしています。

10年以上ひきこもっています。今さら相談しても意味がありますか?

あります。国の支援の考え方も、期間の長さで対象を区切らない方向に変わってきています。長期化しているご家庭ほど、まず親御さんが相談できる場所を持つことが大切です。

本人が病院に行ってくれません。訪問看護だけ先に始められますか?

訪問看護は主治医の指示書に基づく医療サービスのため、受診より先に始めることはできません。まずはご家族だけのご相談や、東京都ひきこもりサポートネットなどの公的窓口の利用をおすすめします。

親だけの相談に費用はかかりますか?

当ステーションへの初回のご相談は無料です。東京都ひきこもりサポートネット、府中市の福祉総合相談窓口、多摩府中保健所などの公的な窓口も無料で利用できます。

ひきこもりは病気ですか?

ひきこもりは病名ではなく状態を指す言葉です。ただし背景にうつ病や統合失調症などの精神疾患が隠れていることがあります。睡眠の乱れなど気になるサインがあれば、保健所や医療機関にご相談ください。

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