「最近、同じことを何度も聞くようになった」「約束を忘れる」——親の様子に「あれ?」と感じても、いざ「病院に行こう」と伝えると強く拒まれる。認知症が心配なご家族の多くが、この受診の壁にぶつかります。本人を傷つけず、関係をこじらせずに受診へつなげるには、順番とことばの選び方にコツがあります。府中市で精神科・認知症ケアに特化した訪問看護ステーションが、認知症専門医と連携してきた経験をもとにお伝えします。
1.「年のせい?」と思ったときの気づきのサイン
加齢によるもの忘れと、認知症が疑われる変化には、いくつかの違いがあるとされています。たとえば、次のような様子が続く場合は、一度専門家に相談する目安になります。
- 同じことを何度も聞く・話す(体験そのものを忘れている)
- 料理の味付けや手順が変わった、火の消し忘れが増えた
- 薬の飲み忘れ・飲み間違いが増えた
- 日付や曜日が分からなくなる、約束を忘れる
- 身だしなみや片付けに無頓着になった
- 外出や趣味を億劫がる、怒りっぽくなった
大切なのは「生活に支障が出ているか」という視点です。ただし、これらはあくまで気づきのきっかけであり、ご家族が認知症と決めつける必要はありません。判断は医療機関に委ね、ご家族は「いつもと違う」というサインに気づく役割を担えれば十分です。
2. なぜ親は受診を嫌がるのか
受診を拒む親の姿に、ご家族は焦りや苛立ちを感じてしまうかもしれません。けれど、いちばん不安を抱えているのは、実はご本人です。「できていたことができなくなる」「忘れていく自分」への恐怖は、想像以上に大きいものです。
「自分は大丈夫」と取り繕ったり、指摘を否定したりするのは、自分を守ろうとする自然な反応だと言われています。また「病院に行けば認知症と言われてしまうのではないか」という恐れや、長年築いてきたプライドも、足を止める理由になります。受診を嫌がるのは、わがままでも頑固でもなく、不安の裏返し。まずはそう受け止めることが、最初の一歩になります。
3. ❌言いがちな一言/⭕伝わる声かけ
同じ「受診を勧める」でも、ことばの選び方で本人の受け取り方は大きく変わります。
- ❌「ボケちゃったの?」→ ⭕(責めず、症状そのものに触れない)
- ❌「また忘れたの?」→ ⭕「最近よく眠れてる?体調どう?」
- ❌「認知症だから病院に行こう」→ ⭕「私も健康診断に行くから、一緒に診てもらわない?」
- ❌「しっかりして!」→ ⭕「念のため診てもらうと、お互い安心だよ」
ポイントは、「認知症」という言葉を前面に出さないこと、そして説得よりも共感を心がけることです。間違いを正そうとするほど本人は身構えてしまいます。否定せず、不安に寄り添うことばのほうが、結果的に受診への近道になることが少なくありません。
4. 受診のきっかけの作り方
正面から「認知症の検査」と切り出すのが難しいときは、入口を変えてみましょう。
- かかりつけ医に先に相談する:本人が信頼している医師からの一言は届きやすいものです。受診前に家族から状況を伝えておく方法もあります。
- 健康診断や持病の通院のついでに:「血圧のついでに、もの忘れも診てもらおう」と自然に促せます。
- 本人の不調を入口にする:「眠れない」「気分が晴れない」といった本人が自覚している困りごとから受診につなげる方法です。
そして何より、ご家族だけで抱え込まないこと。お住まいの地域包括支援センターでは、受診の進め方そのものを無料で相談できます。
5. それでも動かないとき|自宅という選択肢
どう声をかけても受診につながらない。そんなときも、打つ手はあります。
- 地域包括支援センター:高齢者の暮らしの総合相談窓口。家族だけの相談もできます。
- もの忘れ外来・認知症疾患医療センター:専門的な診断につながる窓口です。
- 自宅への訪問という手段:通院が難しい場合は、医師が自宅を訪れる訪問診療という選択肢があります。診断・治療が始まれば、訪問看護も組み合わせて、住み慣れた家で支えていくことができます。
「家に来てもらう」かたちなら、本人が知らない場所へ出向く不安が小さく、構えずに会えることがあります。なお、受診前の「どう受診につなげるか」という相談は、地域包括支援センターやかかりつけ医が窓口になります。そして診断がつき、主治医の指示が出た後は、訪問看護が在宅での見守りや服薬の支援、ご家族の相談に継続して関わることができます。
6. 診断がついた後の暮らし|家族が抱え込まないために
早めに受診し、状態が分かることには意味があります。原因がはっきりすれば、これからの暮らしに備えられますし、使える制度(介護保険など)の利用も検討できます。ご本人の意思を、まだ本人が伝えられるうちに確認しておけることも、大きな安心につながります。
同時に大切なのが、ご家族自身が抱え込まないことです。介護は長く続きます。デイサービスやショートステイ、訪問のサービスを上手に使い、ときには専門職に頼りながら、「その人らしい暮らし」と「家族の暮らし」の両方を守っていけたらと考えています。
7. 府中市で相談できる窓口と、精神科訪問看護にできること
府中市にお住まいで認知症のことが心配なときは、まず地域包括支援センターが相談の入口になります。そのうえで、在宅での見守りや支援が必要になったとき、私たち府中よりそい訪問看護ステーションがお力になれることがあります。
当ステーションは精神科・認知症ケアに特化し、認知症を専門とする医師と連携しながら、主治医の指示のもとで在宅での状態の見守り・服薬の支援・ご家族の相談対応に取り組んでいます。「受診をどう切り出すか」という段階からのご相談もお受けしています。通常の訪問にかかる交通費は原則いただいておりません。また、公費(自立支援医療など)の対象となる場合には、自己負担が軽くなることもあります。
8. まとめ
親が受診を嫌がるのは、本人が誰よりも不安だからです。急がず、本人の安心を最優先に、ことばと順番を工夫してみてください。そして、ご家族だけで抱え込まないこと。気づきのサインに気づけたこと自体が、すでに大切な一歩です。
「認知症かもしれない家族のことを相談したい」——府中市でそう感じている方は、府中よりそい訪問看護ステーションまでお電話ください(代表 042-508-3434)。受診の進め方の段階から、一緒に考えます。
家から出られない・動けない状態が続くときの背景については、【Vol.39】家から出られない日が続くとき|精神科訪問看護という選択肢もあわせてご覧ください。
府中よりそい訪問看護ステーション(株式会社Star trail)
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TEL:042-508-3434





