
「この前まであんなに元気だったのに、今度はまったく起きてこない」——双極性障害(躁うつ病)のあるご家族を支えていると、その振れ幅にとまどい、ときに振り回されて、こちらが疲れ切ってしまうことがあります。
でも、まず知っておいていただきたいことがあります。気分の波は、ご本人の意志や性格でコントロールできるものではありません。「気分屋」でも「わがまま」でもなく、脳の働きのバランスが関係する病気の症状です。
この記事は、当ステーションがお届けしている「疾患シリーズ」の第2弾です。前回のうつ病に続いて、今回は双極性障害を取り上げます。専門的な話はできるだけかみくだいて、ご本人とご家族が「家でどう過ごすか」に役立つかたちでお伝えします。
双極性障害とは——「躁」と「うつ」の波がある
双極性障害は、気分が高まる躁(そう)・軽躁(けいそう)の時期と、気分が落ち込むうつの時期を、波のように繰り返す病気です。同じ「気分の落ち込み」でも、うつ病が気分の落ち込みを主とするのに対して、双極性障害は上にも下にも振れるのが大きな違いといわれます。
大きく2つのタイプがあります。
- 双極Ⅰ型:はっきりとした躁状態があるタイプ。気分が高ぶりすぎて、社会生活に大きな支障が出たり、入院が必要になることもあります。
- 双極Ⅱ型:躁ほど激しくない「軽躁」とうつを繰り返すタイプ。一見「調子がいい時期」に見えるため、本人も周囲も気づきにくいことがあります。
波の周期や長さは人によってさまざまです。大切なのは、「治して終わり」ではなく、波と上手につき合いながら暮らしを続けていくという視点です。
家のなかで起きやすいこと
躁・軽躁のとき
- 眠らなくても平気に見える(睡眠時間が極端に短くなる)
- よくしゃべり、次々とアイデアが出て止まらない
- 買い物やお金の使い方が大胆になる
- ちょっとしたことで怒りっぽくなる(易刺激性)
- 「自分は何でもできる」と感じ、無理な計画を立てる
躁の時期は、本人にとっては「調子がいい」と感じられることが多く、自分では不調だと気づきにくいのが難しいところです。
うつのとき
- 起き上がれず、寝てばかりになる
- 何も手につかず、自分を強く責める
- 躁のときの言動を後悔して落ち込む
「予兆のサイン」に気づけると、波を小さくできる
睡眠が短くなってきた、口数が増えてきた、出費が増えた——こうした変化は波の入り口のサインであることがあります。早めに気づいて主治医に相談できると、波を小さく抑えられることがあります。
ご本人へ——波と「つき合う」コツ
波をゼロにすることは難しくても、小さくしていくことはできます。
- 睡眠リズムを整える。双極性障害では、睡眠の乱れが波の引き金になりやすいといわれます。寝る・起きる時間を一定に保つことが、大切な土台のひとつです。
- 「調子がいい」ときこそ、ひと呼吸。軽躁の高揚感は心地よいものですが、大きな決断や買い物は一度持ち帰る習慣をつけられると安心です。
- 自分の“サイン”を知っておく。「眠れなくなる」「人に連絡したくなる」など、自分の波の前ぶれをメモしておくと、早めに手を打てます。
うまくいかない日があっても、自分を責めなくて大丈夫です。波は病気のもので、あなたのせいではありません。
ご家族へ——抱え込まなくて、いいんです
支えるご家族にとって、躁とうつの両方に向き合うのは本当に大変なことです。だからこそ、お伝えしたいことがあります。
躁・軽躁のとき
- 真正面からぶつかって、説得しようとしなくて大丈夫です。高ぶっているときの言い合いは、おたがいを消耗させてしまいます。
- 大きな買い物や契約など、生活に関わる決断だけは、できる範囲でいったん保留にできるよう声をかけられると安心です。
うつのとき
- 無理に励まさなくて大丈夫です。「がんばって」より、そばにいることのほうが届きます。
- できないことを責めず、できていることに目を向けられたら十分です。
そして何より——ご家族が、すべてを受け止めなくていいんです。波に巻き込まれてご家族まで倒れてしまっては元も子もありません。疲れたら離れる、誰かに頼る。それは見捨てることではありません。
お薬と通院を続けることの意味
双極性障害では、気分の波をやわらげる気分安定薬などのお薬が、治療の柱になることが多くあります。
ここで大切なのが、波が落ち着いても、自己判断でお薬をやめないことです。「良くなった=治った」ではなく、お薬が波を抑えてくれている状態であることが少なくありません。自己判断での中断は、症状がぶり返すきっかけになりやすいといわれています。
とはいえ、毎日の服薬や定期的な通院を続けるのは、決して簡単なことではありません。飲み忘れや通院の負担で悩んでいる場合は、ひとりで抱えず、主治医や私たちのような訪問看護に相談していただけたらと思います。
訪問看護でできること
精神科訪問看護は、主治医の指示(精神科訪問看護指示書)にもとづいて、看護師や作業療法士がご自宅にうかがい、療養生活を支えるサービスです。双極性障害のある方には、たとえばこんなお手伝いができます。
- 気分の波の見守り:日々の様子の変化から、波の予兆をいっしょに早めにキャッチします
- 服薬のサポート:飲み忘れがないか、ご本人と一緒に確認し、続けやすい工夫を考えます
- 生活リズムの安定:睡眠や日中の過ごし方を、無理のない範囲で整えるお手伝いをします
- ご家族の相談先:「躁のときどうすれば」「疲れてしまった」——ご家族の悩みもお聞きします
私たちが診断や治療を行うわけではありませんが、主治医と連携しながら、おうちでの「波とのつき合い方」を、そばで一緒に考えていきます。
おわりに——波があっても、暮らしは続けられます
双極性障害は、波とつき合いながら、自分らしい生活を続けていける病気です。そして、その波を、ご本人やご家族だけで抱える必要はありません。
府中よりそい訪問看護ステーションは、東京都府中市で精神科訪問看護に特化したチームです。医療顧問の青栁先生とも連携しながら、ご本人とご家族の「家での暮らし」をお支えします。
ご利用までの流れ
主治医のいる方は、まずは当ステーションにご相談ください。指示書のご依頼をお手伝いしながら、訪問の開始まで一緒に進めていきます。受診先がまだ決まっていない場合のご相談にも応じます。
お問い合わせ
☎ 042-508-3434(受付 平日9:00-18:00)
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