
「早く、正確に。」
病棟や救急で働いてきた看護師なら、何万回と聞いてきた言葉かもしれません。
けれど、その「早く」「正確に」に、少しだけ疲れてしまった。
あるいは、もう少し違う時間の流れで、看護をしたいと思うようになった。
そんな方に、「急がない看護」という選択肢を、お伝えしたいと思います。
「早く」「正確に」が、看護のすべてじゃない
急性期の病棟では、バイタルが崩れれば数分単位の判断が必要ですし、救急では秒単位で動きます。その時間感覚のなかで鍛えられたスキルは、看護師という仕事のかけがえのない土台です。
ただ、長くその世界にいると、ふと、こう思うことがあります。
「この人のそばに、もう少しだけ、いてあげたかった。」
処置は終わった。申し送りも終わった。次の患者さんのナースコールが鳴っている。わかっている。でも――。
そう感じたことが、一度でもあるなら、精神科訪問看護の世界は、あなたに向いているかもしれません。
精神科訪問看護は、「待つ看護」である
精神科訪問看護の現場では、バイタル測定も、服薬管理も、もちろん行います。でも、それが中心ではありません。
中心にあるのは、「待つ」ことです。
たとえば、利用者さんが玄関のドアを開けてくれるまで、2分でも3分でも待ちます。うつ病で意欲が大きく落ちている方は、「今日はどうですか」と聞かれても、すぐには言葉が出ません。無理に引き出そうとせず、沈黙のなかで、相手の時間に合わせて、待ちます。
ひきこもり傾向のある方は、最初の数回、ドアを開けてくれないこともあります。それでも訪問を続け、「今日も来たよ」という気配だけをそっと残して帰る日もあります。
これは、病棟や救急で積み上げてきた「早く」「正確に」の対極にある看護です。
急がない。せかさない。引き出さない。
ただ、その人のそばにいる。
――それは、看護として「何もしていない」わけではありません。むしろ、目に見えないところで、いちばん濃密なケアをしている時間です。
30分の訪問で、私たちが本当にしていること
府中よりそい訪問看護ステーションの訪問は、1回30分程度です。
その30分で、血圧を測り、服薬状況を確認し、日々の生活の様子を伺う。ここまでなら、どんな訪問看護ステーションでも同じかもしれません。
私たちが大切にしているのは、そのうえで「今日、この人は何を話したかったのか」に耳を傾けることです。
利用者さんのなかには、1週間のうちで、私たちと話す時間が、家族以外で唯一の会話、という方もいます。
だから、たわいもない話をします。昨日見たテレビの話、近所の桜が咲いた話、食欲がなかった日のこと、眠れなかった夜のこと。
その会話のなかに、症状の変化のサインが、そっと混じっています。「食欲がない」の裏には抗精神病薬の副作用が隠れているかもしれない。「眠れない」のなかには躁転の兆しがあるかもしれない。だから私たちは、雑談ができる臨床家であろうとしています。
雑談に見えるやりとりのなかで、医療の目で見る。
それが、精神科訪問看護の「急がない看護」の正体です。
「急がない看護」が向いている人、向いていない人
正直に申し上げます。精神科訪問看護は、すべての看護師に向いているわけではありません。
向いていると思うのは、こんな方です
- 処置の「結果」よりも、その人の「人生」に関心がある方
- 「役に立つこと」よりも、「そばにいること」に価値を感じる方
- 沈黙が苦にならない方。無理に話題を探さなくていい方
- 治すことより、その人の日常をひとつひとつ整えることに、やりがいを感じられる方
- 一人ひとりの背景や価値観に、じっくり関心を持てる方
一方で、こんな方は、別のフィールドで活きるかもしれません
- 「看護の達成感=処置が成功したとき」と強く感じる方
- 明確な数値改善・退院といった「ゴール」がないと、モチベーションを保ちにくい方
条件やスキルより、ここでいちばん大切なのは「どんな時間の流れで、看護をしたいか」という、自分の働き方の軸です。
府中よりそい訪問看護ステーションで働くということ
府中よりそい訪問看護ステーションは、東京都府中市にある精神科特化の訪問看護ステーションです。利用者さんは100名を超え、統合失調症、うつ病、双極性障害、発達障害、認知症など、さまざまな方を担当しています。
医療顧問として、認知症専門医の青栁先生から助言をいただける体制があり、難しいケースでも相談しながら判断できます。
チームは10名規模の小さな組織です。だからこそ、一人ひとりの「どう看護したいか」を、お互いに話せる場所でありたいと思っています。
「急がない看護を、したい」――そう思うきっかけを、大切にしてきた方に、ぜひ一度、うちの扉を叩いてみていただきたいです。
次の一歩
すぐの転職を考えていなくても大丈夫です。
府中よりそい訪問看護ステーションの採用ページから、「まず話を聞いてみたい」とご連絡ください。見学・面談だけのご相談も受けています。
看護師としての「時間の流れ」を、一度、一緒に見直してみませんか。
よくある質問
Q. 精神科の経験は必要ですか?
A. 現在は、精神科での臨床経験(病棟・外来・訪問いずれも可)がある方を対象に募集しています。精神科「訪問看護」が初めてという方は大歓迎で、経験ある教育係が同行訪問で丁寧にサポートします。
Q. 1人で訪問するのが不安です。
A. 入職後しばらくは同行訪問からスタートします。単独訪問に移る時期も、本人の準備状況を見ながら相談して決めます。また、訪問中に迷ったときはいつでも電話で相談できる体制になっています。
Q. 認知症の方の訪問も担当しますか?
A. はい。精神疾患と認知症は重なる部分が多く、どちらも担当していただく可能性があります。認知症専門医の青栁先生と連携しているので、ケースに応じて助言をいただける体制です。
Q. 見学や面談だけでも可能ですか?
A. もちろんです。いきなりの応募ではなく、まず雰囲気を知りたい、話を聞きたいという段階からお越しいただいて大丈夫です。
