
「最近、何もする気が起きない」「朝、起き上がるのがつらい」——そんな日々が、何週間も続いていませんか。あるいは、ご家族の様子が以前と変わってしまい、どう声をかけたらいいか分からず戸惑っていませんか。
うつ病は、決して「気の持ちよう」や「甘え」ではありません。脳のはたらきやこころのエネルギーが一時的に低下している状態で、誰にでも起こりうる病気です。そして、適切な休養と治療によって、回復に向かっていける病気でもあります。
この記事は、府中よりそい訪問看護ステーションがお届けする「疾患シリーズ」の第1弾です。在宅で暮らしながら治療を続けるうつ病の方と、それを支えるご家族に向けて、精神科訪問看護の現場で大切にしていることをお伝えします。
うつ病ってどんな病気?
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下が長く続き、日常生活に支障が出る状態をいいます。一時的に落ち込むことは誰にでもありますが、その状態が2週間以上続き、休んでも回復しないときは、うつ病の可能性が考えられます。
主な症状には、次のようなものがあります。
- こころの症状:気分が沈む、何をしても楽しめない、興味がわかない、わけもなく涙が出る、自分を責めてしまう
- からだの症状:眠れない・眠りすぎる、食欲がない・増える、だるさ、頭痛、動悸
- 考えや行動の変化:集中できない、決められない、動きが遅くなる、家事や身支度が手につかない
うつ病には「波」があります。調子のよい時間帯や日もあれば、急に落ち込む日もあります。「昨日は少し動けたのに、今日はまた起き上がれない」——これは回復していないわけではなく、うつ病という病気の自然な経過です。波があることを知っておくだけで、ご本人もご家族も、少し楽になることがあります。
在宅生活で、起きやすいこと
うつ病の方が家で過ごすとき、こんなことが起こりやすくなります。ご本人にとっては「できない自分」を責めてしまう場面ですが、どれも病気の症状であって、あなたのせいではありません。
- 朝が一番つらい:うつ病は朝に症状が重く、夕方にかけて少し楽になることがよくあります。「朝、布団から出られない」のは、意志の弱さではありません
- 家事や入浴が止まる:料理・掃除・お風呂といった当たり前のことに、大きなエネルギーが必要になります
- 考えがまとまらない:頭が働かず、簡単なことも決められなくなります
- 自分を責めてしまう:「迷惑をかけている」「自分はダメだ」と、必要以上に自分を追い込んでしまいます
こうした状態のとき、大切なのは「治そうとがんばること」ではなく、まず休むことです。
ご本人へ:今は、休むことが回復の一歩
うつ病の回復に、いちばん必要なのは休養です。骨折した足で走れないのと同じように、エネルギーが切れているこころは、無理に動かそうとするほど回復が遠のいてしまうことがあります。
「何もできなかった」と感じる日でも、朝、目を覚ました。薬を飲んだ。少し水を飲んだ。——それは、ちゃんと「できている」ことです。回復は、できないことを数えるのではなく、小さな「できた」を積み重ねていく道のりです。
今は、がんばる時期ではなく、休んでいい時期です。焦らなくて大丈夫。あなたのペースで構いません。
ご家族へ:接し方のヒント
大切な人がうつ病になったとき、ご家族は「どうにかしてあげたい」という思いから、つい一生懸命になりすぎてしまうことがあります。でも、ここでお伝えしたいのは「あれもこれもしなければ」という新しい宿題ではありません。むしろ、肩の荷を少し下ろしていただくためのヒントです。
- 無理に励まし続けなくて大丈夫:「がんばって」は、すでに精一杯がんばっている本人を追い詰めてしまうことがあります。「つらかったね」と、そのまま受け止める言葉のほうが届きます
- 否定しなくていい:「そんなことないよ」と打ち消すより、「そう感じているんだね」と気持ちを認めるだけで十分です
- 原因を探さなくていい:「何があったの」「どうしてこうなったの」と原因を突き止めようとしなくても大丈夫。今は、原因よりも休養が回復につながります
- そばにいるだけでいい:特別なことをしようとしなくても、いつもどおりにそばにいてくれること自体が、大きな支えになります
そして何より——ご本人がこうなったのは、ご家族のせいではありません。支えるあなた自身も疲れてしまわないよう、ときには休んでください。あなたが倒れないことが、いちばんの支えになります。
服薬と通院の継続が、回復のカギ
うつ病の治療では、休養とあわせて、お薬や通院が大切な役割を果たすことがあります。抗うつ薬は効果を感じるまでに数週間かかることが多く、「効かないから」「少し良くなったから」と自己判断でお薬をやめてしまうのは、避けたいところです。症状がぶり返してしまうことがあるためです。
とはいえ、毎日の服薬や定期的な通院を、つらい状態のなかで続けるのは簡単なことではありません。飲み忘れや、通院に行けない日があるのも自然なことです。そんなときは、ご本人を責めるのではなく、ご本人と一緒に「どうすれば続けやすいか」を考えていけたら、と私たちは考えています。主治医の指示のもとで、服薬や通院の継続をそばで支えるのも、訪問看護の役割のひとつです。
精神科訪問看護で、できること
精神科訪問看護は、看護師などが定期的にご自宅へうかがい、在宅での療養生活を支えるサービスです。うつ病の方に対しては、たとえば次のような関わりをしています。
- 体調やこころの状態を、いっしょに確認する
- 服薬や通院が続けやすいよう、ご本人と一緒に工夫する
- 眠れない・食べられないといった生活リズムの乱れに寄り添う
- 不安な気持ちや、つらさを「聴く」
- 必要に応じて、主治医やご家族と連携し、状態の変化を共有する
精神科訪問看護をご利用いただくには、主治医が交付する「精神科訪問看護指示書」が必要です。そのため、まだ受診をされていない段階では、まず医療機関への受診が入口になります。すでに精神科・心療内科にかかっている方は、診断後の在宅生活を続けるための継続的な支えとして、訪問看護をご利用いただけます。「どこに相談したらいいか分からない」という段階のご相談も、できる範囲でお手伝いします。
おわりに:ひとりで、抱えこまないで
うつ病は、休養と治療によって回復に向かっていける病気です。そして、その道のりは、ご本人やご家族だけで歩まなくても大丈夫です。
府中よりそい訪問看護ステーションは、府中市を中心に、精神科訪問看護に特化したチームで在宅生活を支えています。「こんなことで相談していいのかな」と迷う段階でも構いません。まずはお話を聞かせてください。
ご利用までの大まかな流れは、①ご相談 → ②主治医への指示書のご依頼をお手伝い → ③初回訪問の調整 → ④訪問開始、です。お気持ちやご状況にあわせて、一つずつ進めていきます。
▼ ご相談・お問い合わせ
府中よりそい訪問看護ステーション
TEL:042-508-3434(平日9:00-18:00)
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