2025年8月16日
府中よりそい訪問看護ステーション
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
事業所における虐待の防止に関する基本的な考え方
1 高齢者虐待とは
1.1 高齢者虐待防止法
「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年法律第124号)は、平成18年(2006年)4月1日から施行されました。
この法律では、高齢者の権利利益の擁護に資することを目的に、高齢者虐待の防止とともに高齢者虐待の早期発見・早期対応の施策を、国及び地方公共団体の公的責務のもとで促進することとしています。
1.2 高齢者虐待の定義
高齢者虐待防止法では、「高齢者」を65歳以上の者と定義し、高齢者虐待を以下の5つの類型に分類しています。
【虐待の5つの類型】
1)身体的虐待
高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
2)介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)
高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護を著しく怠ること。
3)心理的虐待
著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
4)性的虐待
高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
5)経済的虐待
高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
虐待の具体例
【身体的虐待の具体例】
・平手打ちをする、つねる、殴る、蹴る、やけど・打撲をさせる
・刃物や器物で外傷を与える
・本人に向けて物を投げつけたり、刃物を振り回したりする
・医学的判断に基づかない痛みを伴うリハビリを強要する
・身体を拘束し、自分で動くことを制限する(ベッドに縛り付ける、つなぎ服を着せる等)
【介護・世話の放棄・放任の具体例】
・入浴しておらず異臭がする、髪や爪が伸び放題、衣服が汚れている
・水分や食事を十分に与えず、脱水症状や栄養失調の状態にある
・室内にごみを放置する、冷暖房を使わせないなど劣悪な住環境
・必要な医療・介護サービスを理由なく制限したり使わせない
【心理的虐待の具体例】
・老化現象を嘲笑したり、人前で話すなどにより恥をかかせる
・怒鳴る、ののしる、悪口を言う
・侮蔑を込めて、子どものように扱う
・本人の尊厳を無視してトイレに行けるのにおむつをあてる
・生活に必要な道具の使用を制限する
【性的虐待の具体例】
・排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する
・人前で排泄行為をさせる、オムツ交換をする
・性器を写真に撮る、スケッチをする
・わいせつな映像や写真を見せる
【経済的虐待の具体例】
・日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない
・本人の自宅等を本人に無断で売却する
・年金や預貯金を無断で使用する
・入院や受診、介護保険サービス費用を支払わない
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2 高齢者虐待等の防止に向けた基本的視点
2.1 基本的な視点
1)発生予防から虐待を受けた高齢者の生活の安定までの継続的な支援
高齢者虐待防止対策の目標は、高齢者を虐待という権利侵害から守り、尊厳を保持しながら安定した生活を送ることができるように支援することです。
2)高齢者自身の意思の尊重
高齢者自身の意思を尊重した対応(高齢者が安心して自由な意思表示ができるような支援)を行うことが重要です。
3)虐待を未然に防ぐための積極的なアプローチ
高齢者虐待の問題では、虐待を未然に防止することが最も重要な課題です。そのためには、家庭内における権利意識の啓発、認知症等に対する正しい理解や介護知識の周知などのほか、介護保険制度等の利用促進などによる養護者の負担軽減策などが有効です。
4)虐待の早期発見・早期対応
高齢者虐待への対応は、問題が深刻化する前に発見し高齢者や養護者・家族に対する支援を開始することが重要です。
5)高齢者本人とともに養護者を支援する
虐待の解消と高齢者が安心して生活を送るための環境整備に向けて、養護者への支援を適切に行うことが求められます。
6)関係機関の連携・協力によるチーム対応
発生予防から通報等による事実確認、高齢者の生活の安定に向けた支援にいたる各段階において、複数の関係者が連携を取りながら高齢者や養護者の生活を支援できる体制を構築し、チームとして虐待事例に対応することが必要です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
当ステーションにおける虐待防止対策
1)虐待防止のための対策を検討する委員会の定期開催
【虐待防止検討委員会の構成メンバー】
・管理者を含む幅広い職種の職員
・虐待防止の専門家を委員として積極的に活用
【虐待防止検討委員会の検討事項】
・虐待防止検討委員会その他事業所内の組織について
・虐待防止のための指針・マニュアルの整備について
・虐待防止のための職員研修の内容について
・職員が高齢者虐待を把握した場合に、市町村への通報が迅速かつ適切に行われるための方法について
・虐待などが発生した場合、その発生原因等の分析から得られる再発の確実な防止策について
・再発の防止策を講じた際にその結果の評価について
2)虐待防止のための指針の整備
事業所における虐待の防止に関する基本的な考え方、虐待防止委員会等の組織、職員研修、対応方法、相談・報告体制、成年後見制度の利用支援、苦情解決方法、指針の閲覧等について定めています。
3)職員に対する虐待防止のための研修の定期受講
・虐待防止に関する基礎的内容等の適切な知識の普及・啓発
・年1回以上の定期的な研修の実施
・新規採用時には必ず研修を実施
・研修の実施内容については記録を保管
4)虐待防止の取り組みを推進する専任担当者の配置
虐待防止の取り組みを推進する専任の担当者を配置し、虐待防止検討委員会の責任者と同じ職員が務めることが望ましいとされています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
高齢者虐待防止のための指針
府中よりそい訪問看護ステーション
第1条 事業所における高齢者虐待防止に関する基本的考え方
当ステーションは、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」を踏まえ、サービス提供にあたって身体的、精神的な虐待が起きることのないよう、この指針を定め、全ての職員は本指針に従ってサービスを提供する。
第2条 虐待の定義
本指針における虐待とは、下記をいうものであり、これらの発生の防止を図る。
⑴ 身体的虐待:暴力的行為等で利用者の身体に外傷や痛みを与える又はそのおそれのある行為を加えること。また、正当な理由なく身体を拘束すること。
⑵ 介護・世話の放棄・放任(ネグレクト):意図的であるか、結果的であるかを問わず、行うべきサービスの提供を放棄又は放任し、利用者の生活環境や身体・精神状態を悪化させること。
⑶ 心理的虐待:脅しや侮辱等の言葉や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって利用者に精神的、情緒的な苦痛を与えること。
⑷ 性的虐待:利用者にわいせつな行為をすること。又は利用者にわいせつな行為をさせること。
⑸ 経済的虐待:利用者の合意なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する金銭の使用を理由なく制限すること。
第3条 虐待防止委員会その他施設内の組織に関する事項
虐待等の発生の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討するとともに、虐待防止に関する措置を適切に実施することを目的として、虐待防止委員会を設置する。
⑴ 委員会の役割
ア.虐待防止のための指針等の整備
イ.虐待防止を目的とした年1回以上の職員研修の企画・推進
ウ.虐待の防止に関する担当者の選定(委員より選任する)
エ.虐待予防、早期発見に向けた取り組み
オ.虐待が発生した場合の対応
カ.虐待の原因分析と再発防止策の検討
⑵ 構成員
参加職種・人数に決まりはないが、管理部門や虐待防止担当者は必須。
⑶ 委員会の開催頻度と記録
ア.委員会は年1回開催する。
イ.虐待の発生又は発生が疑われる場合は、その都度開催する。
ウ.委員会の会議内容を記録する。
第4条 高齢者虐待防止のための職員研修に関する基本方針
ア.虐待防止を目的とした職員研修を、原則年1回以上及び職員採用時に実施する。
イ.研修を通じて、従業者の人権意識の向上や知識や技術の向上に努める。
ウ.研修の内容は、開催日時、出席者、研修項目を記録し、保管しておく。
第5条 運営規程に高齢者虐待防止の取り組みを位置付ける
ア.利用者等の人権の擁護・虐待の防止等のために、虐待防止委員会を設置し、年1回以上定期的開催する。
イ.虐待防止を目的として年1回以上の職員研修を行う。
ウ.虐待防止責任者を配置し、虐待予防、早期発見に向けた取り組みを進める。
エ.万が一発生した場合、原因分析と再発防止に努める
第6条 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
ア.虐待等が発生又は発生した疑いがある場合は、直ちに委員会を開催し、客観的な事実確認を行う。
イ.虐待の事実を把握した場合において、緊急性の高い事案の場合は、行政機関及び警察等の協力を仰ぎ、被虐待者の権利と生命の保全を最優先する。
ウ.虐待者が職員であることが判明した場合は、厳正に対処する。
エ.虐待が発生した原因と再発防止策を委員会において討議し、職員等に周知する。
第7条 虐待等が発生した場合の相談報告体制
ア.利用者又は家族等から虐待の通報を受けた場合は、本指針に従って対応する。相談窓口は、高齢者虐待防止担当者とする。
イ.事業所内における高齢者虐待は、外部から把握しにくいことが特徴であることを認識し、職員は日頃から虐待の早期発見に努めるとともに、高齢者虐待防止委員会及び担当者は職員に対し早期発見に努めるよう促す。
第8条 虐待等に係る苦情解決方法
ア.虐待等の苦情相談は、苦情受付担当者は受け付けた内容を管理者に報告する。
イ.苦情相談窓口で受け付けた内容は、個人情報の取扱いに留意し、相談者に不利益が生じないよう細心の注意を払って対処する。
ウ.対応の結果は相談者に報告する。
第9条 成年後見制度の利用支援
利用者及びその家族に対して、利用可能な権利擁護事業等の情報を提供し、必要に応じて、行政機関等の関係窓口、身元引受人等と連携のうえ、成年後見制度の利用を支援する。
第10条 当指針の閲覧
当指針は、利用者及び家族がいつでも事業所内にて閲覧ができるようにするとともに、ホームページ上に公表する。
第11条 その他
権利擁護及び高齢者虐待防止等のための内部研修のほか、外部研修にも積極的に参加し、利用者の権利擁護とサービスの質の向上を目指すよう努める。
本指針は、2025年8月16日より施行する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【お問い合わせ】
府中よりそい訪問看護ステーション
虐待防止に関するご相談・ご質問は、当ステーションまでお気軽にお問い合わせください。